日本語 | English | 简体中文 | 繁體中文

年に一度の“新橋総揚げ”。一流の芸と料亭の食が楽しめる「東をどり」とは?《後編》

2018.05.19
第94回東をどり01(クレジット 公文健太郎)

©公文健太郎

 

の日限りは一見さん大歓迎」と掲げ、誰もが新橋芸者衆の唄や踊りと、料亭の美味を楽しめる、「東をどり」。前編では新橋芸者と「東をどり」の歴史を駆け足で辿りました。さて、現代の様子はどうなっているのでしょう。再び、金田中・主人の岡副真吾(おかぞえ・しんご)さん、新橋芸者の喜美弥(きみや)さんにご登場をいただきます。

DSC_6631

金田中・4代目主人の岡副真吾さん

 

「戦後以来、舞踏劇を中心としてきた『東をどり』をガラッと変えたのが、2007年のこと。きれいで、またわかりやすい踊りをメインに据え、公演時間は1時間にキュッと圧縮。また料亭が作る特別な弁当や一流の酒を用意しました。芸者衆の踊りは、この国に伝わるきれいな文化。日本料理に旨酒は料理店、そこに芸者衆が加わり、料亭となるのです。つまり『東をどり』の演舞場は、4日限りの大料亭になるわけです」。

時は岡副さんの父・昭吾さんが名プロデューサーとして「東をどり」を取り仕切っていた時代。長年守ってきたやり方を変えるには、少々の軋轢はあったと言います。しかし、料亭も置屋も芸者衆もみな、新橋が過去の遺物になってしまいやしないかと、今後に対して強い危機感を持っていたことから、「いま」のお客が求め、喜ぶものへと大きく舵を切ることとなりました。その改革の少し前に新橋に入ったのが、喜美弥さんです。京都で過ごした大学時代は日本文学に傾倒、泉鏡花や三島由紀夫を読みふけり、いつしか芸者の世界に憧れを持ったのだそうです。

DSC_6941

新橋芸者となって今年で18年目の喜美弥さん

 

ラリーマン家庭で育ちましたから、芸者のなり方なんて、もちろん知りません。就職活動中の大学3年生の時に雑誌で金田中さんの記事を読み、住所が掲載されていたので、『芸者になりたいのですが』と手紙を送ったのがこの世界に入るきっかけになりました。ですから、新卒採用、大卒芸者です」。

新橋花柳界の全盛期は昭和30年代。当時は芸者が400名ほどいましたが、喜美弥さんが入った2001年には90数名に減っていたそうです。同期は6名。現在は喜美弥さんおひとりがこの仕事を続けています。また芸者の総数も50名ほどになりました。

_DIS1619

芸者衆が名刺代わりする千社札。デザインは豊富で、人によっては英文字表記の千社札も持つ

 

「新橋のおねえさん方は、本当に芸事に厳しいですよ。『東をどり』は新橋芸者であれば新人でも全員参加ですが、引退された大きいおねえさん方もお稽古からお見えになって、ご指導をいただきます。毎回、ダメ出しがちゃんとありますし(笑)、本番もすべて観て下さいますので、とても緊張します」。

DSC_6783

指の先の先までおしろいをはたき、顔だけでなく手の表情も豊かな喜美弥さん

 

橋芸者の立方(たちかた。踊り手のこと)は西川流鯉風派、花柳流、尾上流のいずれかに属し、普段はその流派のお稽古を受けますが、「東をどり」の際は3派合同して行うため、いつもと違うお師匠さんに習うこともあるとか。

昔の新橋芸者は「ひとり、一芸」と言われ、立方と地方(じかた。演奏者のこと)はそれぞれ互いの仕事は侵さぬものとされてきたそうです。しかし芸者衆の人数が減ってきたこともあり、今はどちらもお稽古するように変わりつつあります。喜美弥さんは尾上流の立方ですが、今一番、頑張っているのは長唄三味線だそうです。

「京都の花柳界はメディアに出ることも多いので多少は知られていますが、新橋は知る人ぞ知る世界。着物を着てかつらを付けて料亭周辺を歩いていると、びっくりされることもよくありますよ。芸者が現代にも生きているとは、思っていらっしゃらない方も多いのでしょうね。このままでは、誰も知る人がいなくなってしまうような怖さがあります」。

 

DSC_6819
「姿勢がいいのは、毎日着物を着ているから」と喜美弥さん。引退されたおねえさん方に着物をいただくこともあり、「昔の着物は質が高く、本当に素晴らしい」と言う

 

そう、喜美弥さんは言い、「ですからね」と岡副さんが言葉を繋ぎます。

 「なさまに新橋を知っていただくためにも、『東をどり』という新橋花柳界の入り口を覗いていただかなきゃなりません。そのために今年も色々と趣向を凝らしているんですよ」。

4日限りの料亭に変身する新橋演舞場ですが、今年はそれをよりブラッシュアップするそう。今年のテーマは『真の料亭体験』。松花堂弁当の器を磁器に変えたり、弁当に参加する東京吉兆、新喜楽、金田中、米村、松山の5軒のうち、1日2〜3軒の料亭が対決する趣向です。お昼時には地下の食堂で、担当料亭の主人や女将による挨拶も予定されているとか。芸者衆にお茶を点ててもらえる「点茶席」や「ドン ペリニヨン ブース」など、例年人気の高いコーナーは今年も2階ロビーで継続されます。幕間には館内を行き交う芸者衆の姿も垣間見ることができるなど、非日常がたっぷりと味わえます。

味を競う陶箱 松花堂弁当 (イメージ) 点茶席 席主 新橋芸者衆 イメージ
(左)「味を競う陶箱 松花堂弁当」6,000円(写真はイメージ)   (右)「点茶席」。江戸千家の稽古を重ねてきた芸者衆がお手前を披露

 

本文化は、実は入り口探しが難しく、その分、奥行きが深いのが特徴。僕は『東をどり』が初めて来た方でも楽しめる、日本文化の入り口でなければ意味がないと思っているのです。日本の若い方はもちろんのこと、外国人観光客の方にも、ぜひ足をお運びいただきたいですね」。

岡副さんは、「東をどり」の役割をこのように強く語ります。

「現代にはね、どんな贔屓のお客さんだって、吉原総揚げにした江戸の豪商・紀伊国屋文左衛門はいないんですよ(笑)。『東をどり』は言うなれば、新橋総揚げみたいなもの。平成の紀文の気持ちを味わっていただけるんです」。

随分とこれはまた剛気な例えですが、それほどまでに「東をどり」は現代における異世界への扉だと言えましょう。

今年の「東をどり」は5月24日(木)からと、もうすぐ。インターネットやテレビの中では見ることのできない、今を生きる本当の日本文化を楽しみに、新橋演舞場にぜひお出かけ下さい。

 

 

《前編》はコチラから

 

◆2018年・第94回「東をどり」開催概要
会期:2018年5月24日(木)〜27日(日)

 ●5月24日(木)・25日(金)は二回公演
  昼の席 開場12:30 開演13:00 終演14:30
  夕の席 開場15:20 開演15:50 終演17:20

 ●5月26日(土)・27日(日)は三回公演
  壱の席 開場11:00 開演11:30 終演13:00
  弐の席 開場13:10 開演13:40 終演15:10
  参の席 開場15:20 開演15:50 終演17:20

会場:新橋演舞場
会場住所:東京都中央区銀座6-18-2
会場TEL:03-3541-2600(代)
お問い合わせ:東京新橋組合
お問い合わせTEL:03-3571-0012(月~金10:00~17:00)
http://www.azuma-odori.net/

チケット:
桟敷席 9,000円
一階席 7,500円
二階正面席・二階右席 6,000円
二階左席・三階席 2,500円
※学生割引:学生証提示で、当日券のみ半額

 

チケットの予約:
TEL:チケットホン松竹0570-000-489

インターネット:Web松竹
PC
http://www1.ticket-web-shochiku.com/pc/
スマートフォン
http://www1.ticket-web-shochiku.com/sp/
携帯
http://www.ticket-web-shochiku.com

窓口販売:新橋演舞場切符売り場・歌舞伎座・大阪松竹座・サンシャイン劇場
※サンシャイン劇場の窓口販売・引取り時間は14:00〜18:00

 

取材/島村美緒(プレミアムジャパン編集長)、文/木原美芽、写真/太田隆生