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日本というテーマが、新しい“深み”を生む。冨永 愛さん 《後編》

2018.06.29
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10代から海外で活躍してきたからこそ、日本を強く意識し、その魅力を自分なりに探ってきたという、モデルの冨永愛さん。普段から身の回りに、日本のよいものを配しているそうです。

和食に古伊万里、おろし金。さらには日本画修業まで

が作ってくれた料理が和食だったこともあり、今も和食党。海外に行っても、おいしい日本料理レストランをついつい探しますね」。

昨年2017年秋まで約3年間、息子さんとの生活に重点をおくために休業していた冨永さん。おふたりの食事は和食が中心だそうで、その食卓を飾るのも日本の器です。

「古伊万里や古九谷などの焼き物を集めていて、江戸時代の湯呑み、茶碗、お皿などを、随分持っています。絵やフォルムのかわいらしさも魅力ですね。それになにより、古いものには、物語や“深み”があるじゃないですか。『これを作った職人さんは、どんなことを考えながら、この絵付けをしたんだろう?』なんて考えるのが、とても好きなんですよ」。

 

のフライパンや包丁など、アンティーク以外にも、日本製のキッチン用品には殊の外、信頼を置いているとのこと。

「鉄のフライパンは下ろしたてのケアが少々大変ですが、料理がおいしくできますから、やっぱり大好き。ごはんも釜炊きです。お焦げも食べられるし、使い始めると炊飯器には戻れなくなって、ついにウチから撤去しちゃいました(笑)。フランスに住んでいた時は、あちらの皮むき器の切れ味の悪さに辟易しましたねぇ。そうそう、おろし金は絶対に銅製で手打ちの日本製がおすすめですよ! 目をひとつひとつちゃんと起こしてあるもので……、あれ、どうして私、こんなに熱く語っているんだろう(笑)」。

イドインジャパン製品の長所のひとつは、“細かい部分への気配り”にあると冨永さんは言います。生き馬の目を抜くようなファッションの世界を経験しつつ、普通の暮らしを丁寧に整える日々の中で、自分の国が持つ長所や魅力が改めて、彼女の中に染み込んで来たのかもしれません。

「私が日本のものが好きだというと、みなさん、少々意外そうです。でも、本当に好きだし、話を始めたら止まりません。実は最近は、日本画を少し学んでいるんです。お茶やお花にも興味がありますが、始めるタイミングを見計らっていて。奥が深い世界ですから、やりたいことに全部手を付けると、どれも浅くなってしまいそうですから」。

“日本”というテーマを含め、自己をより掘り下げる

 冨永さんは今、“深み”という言葉を強く意識していると言います。広く浅くスピーディーにではなく、じっくりと時間をかけて深く物事を知ることが大切。内容はもちろん、その過程自体が自分に“深み”を与えてくれるから———。

 

愛用品について語る時は、より一層表情豊かに。富永さんのまた違った一面が見える

 

「15歳でモデルを始め、この職業には強いこだわりがあります。歳を重ねてきて、今、“深み”を持ちたいという気持ちがとても強くなっています。自分の人生を再起動して、これからもモデルとして、個人として、『私らしい姿』を探求していきたいですから」。

分を掘り下げるのと同時に、現在の日本の状況に対しても思いを馳せ、また考えを深めているといいます。

「最近は若いアーティストの方が伝統工芸技術などを使って、新しいアートや工芸品づくりに取り組むケースが増えましたよね。一部には、彼らの挑戦を『それは正統派ではない』と否定する空気が若干ありますが、それはとても残念。時代の流れの中で、変化する部分があるのは当たり前。私達はもっと自分たちが誇るべきものをうまく残しながら、進化していく方法を模索するべきですよ」。

言葉通り、じっくりと時間をかけて自分の考えを醸成したのであろう冨永さんのメッセージには、強さがあります。自らのチャレンジで道を切り開いてきた彼女ならではの、新しい人生のステージ。“日本”という普遍的なテーマをによって、冨永さん自身も、また彼女が起こす風によって周囲も、ゆっくりとさらなる“深み”を得ていくに違いありません。

 
《前編》はコチラから

 


冨永 愛(とみなが あい)

17歳でNYコレクションにデビューし、一躍話題となる。以後約10年間に渡り、世界の第一線でトップモデルとして活躍。その後、拠点を東京に移し、モデルの他、テレビ、ラジオ、イベントのパーソナリティなど様々な分野にも精力的に挑戦。日本人として唯一無二のキャリアを持つスーパーモデルとして、チャリティ・社会貢献活動や日本の伝統文化を国内外に伝える活動など、その活躍の場を広げている。
http://www.tominagaai.net/jp/

 

取材/島村美緒(プレミアムジャパン編集長)、文/木原美芽、写真/山村隆彦