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「心の科学」を世界に伝える、僧衣をまとうアメリカ人医師、Dr. バリー・カーズィン《後編》

2018.10.24
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医者、科学者、そして仏教僧侶。希有な肩書きをもつ、カリフォルニア生まれのアメリカ人、Dr.バリー・カーズィン。ダライ・ラマ法王第14世の専門医でもある彼は、インドで慈善医療を行なう傍で、アメリカ、イギリス、スペイン、ドイツ、ロシア、モンゴル、日本などを巡り、僧侶と医師・科学 者両方の視点から、「心の科学」としての仏教についての講話、さらに瞑想リトリートなどを行っています。とくに「生と死」「メディテーション(瞑想)」「セル フケアと慈悲」「死に逝く人にどう寄り添うか」などをテーマとし、医療・介護関係者を含めた研修も病院・大学とともに行なっていましたが、最近は日本の企業などからの依頼も増えているとか。西洋と東洋、宗教と医療という全く違った考え方をつなぐDr. カーズィンに日本との関わりについて伺いました。

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統文化を忘れがちな日本人

本各地で瞑想リトリートを行なうバリーさん。日本との関わりはいつ頃から始まったのでしょう。

「2007年からです。日本のダライ・ラマ法王代表事務所から、日本で仏教を教えてくれないかと依頼を受けて来日しました。もう40回ほど日本に来ていますよ。東日本大震災の日も私は東京にいました。余震が続いていたため、インドへ戻って下さいと言われましたが、1ヵ月留まりました。それ以来、東北に出かけ、福祉関係者のケアを続けています」。

日本の田舎はとてもオープンだから居心地がよいというバリーさんは、相撲がお好きだそう。「倫理があり、エチケットがあり、アメリカのスポーツとはまったく違い、日本文化を凝縮しているように感じる」といいます。

「日本人のふるまいを見ていると、”これこそ仏教だ”と思えることがたくさんあるのですが、それを伝えると、”えっ、そうですか? “と、皆さん不思議そうな顔をしますね。それだけDNAに深く刻まれているとも言えますし、現代人は古き日本文化を忘れているとも言えます。西洋文化の影響を強く受けたからなのでしょうか。」

と比較せず、期待値を下げる試みを

トレス社会と呼ばれる日本へ何かよいアドバイスはないでしょうか、と最後に尋ねてみました。

「日本人は小さな頃から、家族を喜ばせようとします。学校では先生を、会社ではボスを喜ばせようとします。それはよいことで、調和を育むことでもありますが、個人を犠牲にする側面があるように思います。自分を大事にし、自分を主張し、自分がやりたいことをやる。そうしたことと、いかにバランスを取っていくかが大切です。人と比較せずに、自分を大切にし、自分のやりたいことをやっていくとよいと思います。

うひとつは”期待”です。特に日本人は自分にかける”期待”が高いので、挫折感を抱きやすく、鬱になったり、自殺に至ったりしがちです。”期待”をもつことは健全ですが、”期待”が高すぎると逆に出てしまいます。”期待”を少し下げるとよいでしょう。最初から大きな”期待”を設定せずに、できそうな”期待”を作り、実現したらまた次、というようにステップを踏んでいくようにしたらよいと思います。
また、日本人は間違いを犯すことを重く考えているところがありますね。間違ったらごめんなさい、と言えるくらいでよいのではないでしょうか? 日本人には、間違えたら先祖が苦しむと言わんばかりのシリアスさがありますから、深刻な想いを緩めてみてください。

後に、もうひとつ。自分の中の破壊的な感情、たとえば怒りや嫉妬心、驕りとどう向き合うかが人間として大切です。私たち僧侶は、ネガティブな感情を愛や慈悲に変容させるトレーニングを行なっています」。

 

 《前編》はコチラから

 

<プロフィール>

Dr.バリー・カーズィン Barry Kerzin M.D.
医師、科学者、チベット僧侶。 アメリカ、カリフォルニア出身。現在、インド・ダラムサラ在住。ワシントン大学医学部客員教授、香港大学名誉教授。世界トップクラスの科学者とダライ・ラマ法王を中心とする「マインド&ライフインスティチュート」の教員・研究員。 2007年に日本に一般社団法人ヒューマンバリュー総合研究所を設立。年に数回来日し、 仏教講話、マンドフルネス指導、瞑想リトリートを行なっている。
https://jp.humanvaluesinstitute.org/

 

取材/島村美緒(プレミアムジャパン編集長)、文/北澤杏里