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理想の音を自らの指で表現する。反田恭平 《前編》

2018.04.04
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2015年にアルバム『リスト』を発表、翌2016年に2000席が完売したサントリーホールでデビューリサイタルを果たすなど、文字通り、彗星のように現れた若き、ピアニストの反田恭平さん。現在23歳。その若さはもとより、情熱と抒情性に技巧を兼ね備えた圧倒的な演奏で聴衆を魅了し、ファンを拡大中の反田さんにお話をうかがいました。

 

現在はポーランド・ワルシャワにお住まいですが、それ以前はチャイコフスキー記念国立モスクワ音楽院に留学され、ロシア住まい。海外生活も長くなられましたね。
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歳の時にミハイル・ヴォスクレセンスキー師の推薦でロシアに留学したのが、約5年前。今はワルシャワでホテル住まいをしています。演奏会などがあるタイミングで帰国していますが、最近は時々街で「反田さんですか」と声を掛けていただくこともあり、素行には気をつけています(笑)。


モスクワ留学時代

 

2012年、高校3年生の時に伝統ある日本音楽コンクールで第1位入賞。2016年にはサントリーホールでデビューリサイタルを行うなど、そのご活躍はクラシックファンならずとも耳にするようになりました。
は子どもの頃から、自分の名前と自分自身を乖離して感じている部分があって、テレビや雑誌などで自分の名前を見ても、どこかで「誰だろう、あれ」と思っている。自分という存在を、俯瞰で眺めているような感じですね。あくまで、「反田恭平」という人の形をした身体を使って音楽をやっているというか…。そのせいか、プレッシャーは片鱗もないですね。

 

ライブ直後にその演奏をCD化して販売するなど、面白い試みをされています。
ラシックは難しいと思われがちで、人から評価されにくい分野です。例えばCDは通常、ミスのないテイクを選び採ってそれを販売します。「ライブじゃなくてCDでいいや」というお客さんもいると思いますが、なぜコンサートに足を運んで下さる方がいるのか。それはライブならではの緊張感だったり、「もしかしたら何かが起きるんじゃないか?」というハプニングへの期待があるんだと思うんです。お客さんは、そういう体験を求めていらっしゃる。

 

正確さだけが、すべてではないと。
ょっと落語の寄席に似ている部分がありますね。舞台の上にいながらお客さんと対面し、状況によってちょっとしたアクセントを入れる。アメを舐めながらパンフレットを眺めていたりするのが見えると、「お客さん、集中されてないんだな」と。そんな時は本来ならスムーズに手が動いて終えるところで激しくポーン!と鳴らしたり。こういうのはやはりライブでなければ味わえないタイプのハプニングです。ライブ直後のCD化販売も、リアルな記憶をもう一度家で体験して欲しいという思いから生まれた発想です。 

 

音を聞くだけでなく、感覚全般が重要なんですね。
ピアノを弾く上で、僕にとって五感は非常に大事です。「聞く」「見る」は演奏会に行けば経験できますが、「香り」や「味」は演奏からでは本当に難しい。むしろ非現実的とも言えます。でも我々は、バロックならバロックというスタイルを使ってピアノを弾き、バロックらしい「匂い」を醸し出さねばならない。でもそれが無理矢理でも、必死でもなく、すっとお客さんに伝わらなくてはいけない。

 


後編に続く》

 


反田恭平(そりた・きょうへい)

1994年生まれ。2012年、高校3年時に、伝統ある第81回日本音楽コンクール第1位入賞。併せて聴衆賞を受賞。2013年、ミハイル・ヴォスクレセンスキー氏の推薦によりロシアへ留学。2014年、チャイコフスキー記念国立モスクワ音楽院に首席で入学。2015年にイタリア「チッタ・ディ・カントゥ国際ピアノ協奏曲コンクール」古典派部門で優勝。同年末に「ロシア国際音楽祭」にてコンチェルト及びリサイタルにてマリインスキー劇場デビューを果たす。2016年、サントリーホールにてデビューリサイタルを行い、2000席を完売させる。同年8月の3夜連続コンサートではすべて異なるプログラムを演奏し、各日のコンサート前半部分をライブ録音し、その日のうちに持ち帰れるというCD付プログラムでも話題になった。2017年10月より、ショパン音楽大学に留学し、ピオトル・パレチニ氏に師事。また、2017年、第27回出光音楽賞を受賞。
http://soritakyohei.com/

 

インタビュー 編集長 島村美緒 文 木原美芽 
(取材協力:株式会社ヤマハミュージックジャパン、ヤマハ銀座コンサートサロン)