オールドインペリアルバーの最奥にある壁。ライトによる1920年代のオリジナルで、当時は宴会場にあったものが、今はバーを飾っている。

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Premium Salon

Tokyo, 7 p.m.

2019.6.6

少年時代を追憶する帝国ホテル 東京の「オールドインペリアルバー」

オールドインペリアルバーの最奥にある壁。ライトによる1920年代のオリジナルで、当時は宴会場にあったものが、今はバーを飾っている。

愛知県の岡崎市で育った畔柳さん。小学校での遠足の定番コースといえば、愛知県犬山市の博物館明治村だった。小学生だった畔柳さんはここで、移築復元された大正12年(1923)当時のフランク・ロイド・ライトによる帝国ホテルの中央玄関部に出合い、圧倒される。まるで古代遺跡のよう…この偉容はいったい…?と感嘆した少年は十数年ののち大人になって、帝国ホテル 東京でその遺産に再会する。


大人の社会見学として訪ね、眺めた、フランク・ロイド・ライトの遺産

グラフィックデザイン関連のギャラリーも多い銀座。アートディレクターという仕事柄、畔柳さんはよくこの街を訪れる。洋服を見て回るのも好きだ。メゾンエルメス、バーニーズ銀座店、ドーバーストリートマーケットを一巡する。

 

そんな日の夕刻、食事前の一杯のために訪れるのが、帝国ホテル 東京の「オールドインペリアルバー」。同ホテルに3つあるバーのうち、最も広く格式あるオーセンティックバーだ。

 

「20代後半の頃、ライトの建築や壁を見たくて友人と訪れました。若者には敷居が高くて緊張しましたが、壁を見たいと素直に伝えると、どうぞ見て下さいと、奥の席に案内されて。思う存分眺めて感動しました」。社会見学として訪れた名高いバーが、今ではふらりと足を向ける行きつけの場所となった。


オールドインペリアルバーを代表するカクテル「マウントフジ」。白雪を抱く富士山に、昇る太陽を表している。 オールドインペリアルバーを代表するカクテル「マウントフジ」。白雪を抱く富士山に、昇る太陽を表している。

オールドインペリアルバーを代表するカクテル「マウントフジ」。白雪を抱く富士山に、昇る太陽を表している。


いつかはマティーニを、大人になるプレミアムを感じる空間で。

大谷石の壁、テラコッタの装飾、六角形のスツールなど、このバーには至るところにライトの意匠があり、帝国ホテル旧本館・通称ライト館の面影がよく残されている。「カウンターに映し出される丸いスポットライト、市松模様の灰皿からマッチに至るまで、床も壁も、何もかもカッコいい。ライトの息吹に包まれて飲める、この上ない空間です」。今はビールを飲むことが多いが、いつかはここでマティーニを、と思う。

 

子供の頃、故郷で眺めた建築の至宝に、大人になって銀座で再会する。ライトへの憧憬が地元と銀座で繋がって結実した、そんな感慨を抱きながらバーで過ごすひと時は、幸せに違いない。


帝国ホテル 東京を訪れた歴史上のセレブリティの写真が飾られたコーナー。 帝国ホテル 東京を訪れた歴史上のセレブリティの写真が飾られたコーナー。

帝国ホテル 東京を訪れた歴史上のセレブリティの写真が飾られたコーナー。

ライトの意匠をよく残し、クラシカルな雰囲気が横溢しているインテリア。どの部分を切り取っても絵になる。 ライトの意匠をよく残し、クラシカルな雰囲気が横溢しているインテリア。どの部分を切り取っても絵になる。

ライトの意匠をよく残し、クラシカルな雰囲気が横溢しているインテリア。どの部分を切り取っても絵になる。


格式あるバーも、気楽な居酒屋も、今は日常の風景に

もう一軒、畔柳さんの銀座での行きつけが、銀座一丁目にある大衆割烹「三州屋」だ。庶民的な飲み屋でランチも人気、夜は食事もお酒も楽しめる。「銀座でデザイン展を観た後、当時働いていた事務所の、今でも師匠と慕う人から、ここで食事でもと誘われて来たのが最初です。それ以来すっかり気に入って仕事仲間や友人とよく来るようになりました」。

 

気負わず親しく、いつでも行くことのできる店が銀座にあるのは喜ばしい。「ある時この店に、俳優の大杉漣さんが一人でふらりといらっしゃって、とても格好良かったのを憶えています。 いつかは自分もそんな風に銀座の風景に溶け込めたらいいですね」。

 

銀座には、大人になってこそ行ける場所がある。畔柳さんの銀座の地図も、人や物事との出逢いで、個性的に面白く、豊かに広がってゆくだろう。

畔柳仁昭 Masaaki Kuroyanagi

アートディレクター

1979年、愛知県岡崎市生まれ。高校時代から、アート、ファッションに興味をもち、友人と手作りの雑誌を編集制作していたことが現在のいしづえとなっていると語る。大学卒業後、デザインの仕事を始める。大手アパレルメーカーのグラフィックを手がけ、雑誌『暮しの手帖』の誌面デザインにも参加。2010年より、デザインスタジオPark Sutherland(サザランド)にて、ファッション、アート、ライフスタイル全般の分野でクリエイティブワークを手がける。

オールドインペリアルバー(帝国ホテル 東京)

20世紀を代表する世界的建築家、フランク・ロイド・ライトの設計による帝国ホテル旧本館・通称ライト館。その面影を色濃く残すバー。ウイスキーやカクテルでオーセンティックバーの魅力を味わいたい。シグネチャーカクテルの「マウントフジ」は大正時代、世界一周旅行をする米国の一行をもてなすために誕生した。価格1,630円(税込み・サ―ビス料別)。ランチ時には各種サンドイッチもあり、夜はおつまみや軽食、ステーキまでフードメニューも豊富だ。

東京都千代田区内幸町1-1-1 帝国ホテル 東京 本館中2階
11:30~24:00(L.O.)
https://www.imperialhotel.co.jp/j/tokyo/restaurant/old_imperialbar/

大衆割烹 三州屋 銀座店

おいしくリーズナブル、昭和の銀座の風情を残す大衆居酒屋として人気の店。昼はお刺身や焼魚、アジフライなどの定食、夜は海鮮を中心に豊富なつまみや食事のメニューがある。

東京都中央区銀座2-3-4
03-3564-2758
11:30~22:00(21:30 L.O)
日曜日定休

Text by Misuzu Yamagishi
Photography by Ahlum Kim

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