「ジジーノ」のにぎやかな店の入り口で。昨今、木挽町界隈は個性的な飲食店が増え、自由で多様性に富む魅力的な街になっている。

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Tokyo, 7 p.m.

2019.10.10

炭火焼イタリアンの名店「ジジーノ」でワイン片手に大いに食し語らう夜

「ジジーノ」のにぎやかな店の入り口で。昨今、木挽町界隈は個性的な飲食店が増え、自由で多様性に富む魅力的な街になっている。

ファッショナブルなスペシャリティストア、バーニーズ ニューヨークが米国から上陸して2020年で30年。銀座をはじめ新宿、六本木、横浜、神戸、福岡と日本各地で店を構える。銀座本店はこの10月に15周年を迎えた。店の顔でもあるウィンドウディスプレイをオープン当初から29年間にわたって手がけるのが、クリエイティブディレクター兼取締役の谷口勝彦さん。多忙の中、遊びも趣味も極める人の「銀座の歩き方」は、独特のテイストにあふれていた。


生まれも育ちも下町だから
ユーモアと粋で
銀座を楽しませる

谷口さんは東京・荒川区で生まれ育った。落語で語られるような下町風情の色濃い地で、父親は玩具工場を経営。周りの大人はみな、まさに落語に登場するような、旦那と与太郎風の面白おかしい人ばかりだった。1960年代の下町の子どもにとって「銀座は別世界。上野や浅草で食事するのがめいっぱい都会的な時間だった」という。その銀座で今は、バーニーズの世界観を象徴するウィンドウを手がけ、道行く人を楽しませている。「駅から少し離れていることもあり、歩くのもゆっくり。じっくり眺めてくれる人が多いですね」。老舗の旦那衆、銀座のマダムなど、この街特有の人々がウィンドウ越しに広がる季節ごとの小宇宙を眺め、あれこれ感想を語り合う。そこに耳を傾けるのも楽しいという。

ワインと炭火焼きの店「ジジーノ」のカウンターで。ゴージャスな店は性に合わないから、銀座でもこじんまりした心地よい店に好んで通う。 ワインと炭火焼きの店「ジジーノ」のカウンターで。ゴージャスな店は性に合わないから、銀座でもこじんまりした心地よい店に好んで通う。

ワインと炭火焼きの店「ジジーノ」のカウンターで。ゴージャスな店は性に合わないから、銀座でもこじんまりした心地よい店に好んで通う。

まずは冷えた白のハウスワインで一息。 まずは冷えた白のハウスワインで一息。

まずは冷えた白のハウスワインで一息。

炭火で焼きあげた野菜の甘味と絶妙な味付けは忘れ難い美味しさ。 炭火で焼きあげた野菜の甘味と絶妙な味付けは忘れ難い美味しさ。

炭火で焼きあげた野菜の甘味と絶妙な味付けは忘れ難い美味しさ。


カンテラと鍵を渡され、
いざワイン庫へ。
気取らず楽しく食べて飲む

谷口さんが最近、銀座でよく足を向けるのが、歌舞伎座の裏一帯の旧町名で、木挽町と呼ばれるエリアだ。江戸時代には木挽き職人が多く住み、芝居小屋の多い街だった。今でも「木挽町通り」「木挽町仲通り」と、その名を残す界隈を歩くと、アイリッシュパブからフレンチビストロ、行列のできるコロッケ店、和菓子店が立ち並び、昨今は若い人が思い思いに好きな店を開く、自由でのどかな雰囲気が漂う。

 

また、イタリアンの店が多いのもこの街の特色だ。中でもユニーク極まる外観の店「ブラーチェ・エ・ヴィーノ・ジジーノ」こと通称「ジジーノ」が谷口さんのお勧め。その日の旬の魚介類や日本各地の肉、野菜の炭火焼きを中心に、果実と生ハムの前菜やトマトスパゲティなど定番もあり、100種以上のワインがそろう。「たっぷり飲んで食べて一人5~6千円。無駄に高くなくコスパがいい。カンテラ片手にワイン庫でワインを探すのも面白い」という。行きつけの銀座の理髪店の主人に勧められて以来、よく来るようになった。

手書きの説明を読み、好みのワインを探し出すのも楽しいひととき。 手書きの説明を読み、好みのワインを探し出すのも楽しいひととき。

手書きの説明を読み、好みのワインを探し出すのも楽しいひととき。

ワイン庫の中は思わず笑ってしまうようなポップが随所に。「こういうユーモアが大切なんです。高くてスノッブで美味しいのは当たり前。美味しいのにリーズナブル、そしてユーモアとスタイルがあることこそ本物。バーニーズとも通じるところがあって、気に入っています」。 ワイン庫の中は思わず笑ってしまうようなポップが随所に。「こういうユーモアが大切なんです。高くてスノッブで美味しいのは当たり前。美味しいのにリーズナブル、そしてユーモアとスタイルがあることこそ本物。バーニーズとも通じるところがあって、気に入っています」。

ワイン庫の中は思わず笑ってしまうようなポップが随所に。「こういうユーモアが大切なんです。高くてスノッブで美味しいのは当たり前。美味しいのにリーズナブル、そしてユーモアとスタイルがあることこそ本物。バーニーズとも通じるところがあって、気に入っています」。


粋な大人の遊び方
日舞を学んで知る
江戸の創造性

木挽町によく来るもうひとつの理由がある。2年前から日本舞踊を学び、きものを着る機会が増え、「むさしや足袋店」という店で足袋をそろえるためだ。日舞のお稽古は週に一度。兄弟子のファッションデザイナーと文筆家、男3人で入谷のお師匠さんのところに通う。仲間にも恵まれ、日舞には一気にはまって稽古もし、和装にも夢中だ。きものや雪駄を誂えたり、和装小物を探しに下町を訪ねたり。踊りから始まった人の輪の広がりや楽しみは尽きない。

 

「60歳近くになって新しいことを学ぶ。それが実に新鮮で楽しいのです。きれいな所作も学びました。なにより踊りを通して江戸の感性に触れ、当時の意匠や創作がいかに創造性に富み見事だったか、知るほどに興味は尽きません」。今は、来年のおさらい会で踊る、めでた尽くしの清元の演目を懸命に稽古する日々だ。“テイスト、ラグジュアリー、ユーモア”をコンセプトにするバーニーズ ニューヨーク。そこに東京下町育ちの粋で独特な谷口さんの感性が散りばめられ、日本で大きく育って、来年30周年を迎える。

「楽しい外観だよね」と気さくに話しかけてくれる。ほがらかな谷口さんの周囲は笑いが絶えない。 「楽しい外観だよね」と気さくに話しかけてくれる。ほがらかな谷口さんの周囲は笑いが絶えない。

「楽しい外観だよね」と気さくに話しかけてくれる。ほがらかな谷口さんの周囲は笑いが絶えない。

谷口勝彦 Taniguchi Katsuhiko
バーニーズ ジャパン クリエイティブディレクター、取締役。
1959年東京出身。荒川区で生まれ育ち、中学生時代に練馬区に越す。図画工作が得意で美術大学へ。アパレル会社を経て、1990年バーニーズ ジャパン入社。日本のバーニーズ ニューヨーク全店のウィンドウからフロアディスプレイ全般、店舗デザイン、広告ヴィジュアルなどのストアイメージに関わるすべてを統轄している。

ブラーチェ・エ・ヴィーノ・ジジーノ Brace e Vino Gigino
ブラーチェは炭火、ヴィーノはワイン。「良いものを少しずつ、適正価格で」をモットーにする隠れ家風イタリア料理店。カウンターとテーブルで全16席のため、予約が望ましい。
東京都中央区銀座3-11-6 鈴木ビル 2F
03‐6264‐1129
平日 17:00~24:30(L.O23:30)、土祝 16:00~23:00(L.O22:00)日曜定休
https://brace-e-vino-jijino.com/

 

銀座 むさしや足袋店
小さくも品格と風情ある店構えの足袋専門店。明治7年創業で、今も店内の工房で職人さんが足袋を製作。歌舞伎役者をはじめ、日舞や茶道をする人、きもの愛好家に愛用される。柄足袋、色足袋もそろう。既製品も寸法を細かく取りそろえ、ていねいな接客をしてくれる。
東京都中央区銀座2-13-12
03-3541-7718、03-3541-7446
月~土曜 8:00~17:00 日曜日定休
https://dry-goods-store-80.business.site/

Text by Misuzu Yamagishi
Photography by Ahlum Kim

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