日本語 | English | 简体中文 | 繁體中文

大坂城の継ぎ手:「美しき城」vol.9 萩原さちこ

2016.03.28

rd850_osaka-6
難解なパズルのような、職人の遊び心

ごく最近に生まれたものもあります。大手門高麗門南側の控え柱に隠された、“継ぎ手”がそのひとつです。継ぎ手とは、材木を長くするために接合部分を施した木材を繋ぐ技のこと。柱の根元を継いだ補修に用いられた継ぎ手は、まるでパズル、はたまた知恵の輪のようで、外から見るとどの方向からもはめ込むことができない不思議な形をしています。東西の両面は下の柱が凸型に出っ張る“蟻継ぎ”で、南北両面は山型の“殺ぎ継ぎ”。上からはめ込むことはできませんから、東側から西側に向かって、斜めにスライドさせます。

謎の継ぎ手が話題になった昭和54年当時、日本の建造物でこの継ぎ手がされているのはここだけでした。その後X線撮影により内部構造が解明され、大正12年に腐りかけた門柱の補修するため新しい木材に代えて継がれたこともわかりました。複雑で珍しい継ぎ手を施した理由はわかりませんが、施行した大工さんは鳴門海峡の潮流を利用した発電システムを考案したりと進取の気性に富んだ人物だったそうですから、匠の技と遊び心が生みだしたものなのかもしれません。最高峰の技術を柱に施すということは、地元の大工さんにとっても大坂城は特別な存在だったのでしょう。

現在の天守は昭和6年に建てられたもので、築80年を超えました。豊臣大坂城の天守は31年、徳川大坂城の天守は40年で焼失しましたから、現在の天守がもっとも長い歴史を誇ります。外観も忠実ではなく鉄筋コンクリート製のため“偽物”などといわれますが、大阪のシンボルとして市民に守られ親しまれてきたのですから、その存在はいまや“本物”。これもまた、大坂城の歴史といえるのでしょう。

 

 

◼︎お問い合わせ

大阪城天守閣
http://www.osakacastle.net/

 

取材・文・写真/萩原さちこ

【萩原さちこの〈美しき城〉】一覧記事はこちら
https://www.premium-j.jp/sachiko-hagiwara/

hagiwara_prof

《プロフィール》

萩原さちこ

城郭ライター、編集者

小学2年生のとき城に魅了される。日本人の知恵、文化、伝統、美意識、歴史のすべてが詰まった日本の宝に虜になり、城めぐりがライフワークに。執筆業を中心に、テレビやラジオなどのメディア出演、イベント出演、講演、講座のほか「城フェス」実行委員長もこなす。著書に『わくわく城めぐり』(山と渓谷社)、『戦国大名の城を読む』(SB新書)、『日本100名城めぐりの旅』(学研パブリッシング)、『お城へ行こう!』(岩波ジュニア新書)、『図説・戦う城の科学』(サイエンス・アイ新書)など。2016年9月9日に新刊『旅好き女子の城萌えバイブル』(主婦の友社)、10月8日に『城めぐり手帖「現存天守編」〜自分だけのトラベルノート』(技術評論社)発売。共著、連載多数。公益財団法人日本城郭協会学術委員会学術委員。公式サイトhttp://46meg.com/