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PREMIUM SHIGA プレミアム滋賀

《第2回》水の郷・近江八幡で眼福・口福のそぞろ歩き

2018.03.11


八幡山城跡のふもとに広がる八幡堀を、運河として利用することを考えたのは豊臣秀次。琵琶湖を往来する船が八幡の街に寄港することが、商人の町としての発展を担いました。現在は時代劇のロケ地としても有名で、近江八幡を代表するスポットに。

 

私たちが知らない、未だ見ぬ日本のプレミアムを求めて。
PREMIUM JAPANはローカルな街のグローバルな魅力を紐解く旅に出ます。

最初の目的地は琵琶湖の豊かな自然を抱き、由緒ある寺社や歴史情緒が残る風光明媚な滋賀県。鳥の囀る声も春めいてきた今日この頃。近江随一の風情豊かな水の郷、近江八幡を散策します。

 

PREMIUM SHIGA プレミアム滋賀《第2回》
水の郷・近江八幡で眼福・口福のそぞろ歩き


新町通には、かつての近江商人の旧宅が軒を連ね、その歴史を語る街並みを歩くと、まるで時代劇の舞台に迷い込んだような気分に。近江町人屋敷の大きな松の背景に見えるのが八幡山城跡を抱く八幡山(271m)。

臣秀次が築いた城下町近江八幡。織田信長亡き後、秀次はこの地に八幡山城を築城し、楽市楽座制を取り入れて、近江商人を輩出した商業都市の礎を築きました。隣接する安土に信長によって集められた多くの商人が八幡山城下に移住して、商業都市の賑わいを見せたといいます。江戸時代には幕府直轄の天領として治められるようになり、城下の商人たちは幕府の通行手形を手に日本全国を商いに回りました。これが近江商人の中核と言われる「八幡商人」の由来です。近江八幡市の中心エリアの中でもメインストリートの風格を持つ新町通には、かつての近江商人の旧宅が軒を連ね、その歴史を語る街並みを歩くと、まるで時代劇の舞台に迷い込んだような気分になります。


八幡堀に沿って続く桜並木の石畳は桜の季節だけでなく、一年を通じて市民やこの地を訪れる旅人のオアシスのような場所。近江八幡廻りには欠かせない、美味しいご当地グルメのお店を探しながらの散歩も愉しい。

 

八幡堀の散策の愉しい寄り道
近江銘菓でっち羊羹発祥の老舗へ

江八幡の風光明媚な景色を愛でる眼福に加えて、この地ならではの美味しいものを探す口福の寄り道も欠かせません。滋賀県に来てからあちらこちらで目にするお菓子がありました。その、でっち羊羹の発祥の老舗で、近江一美味しいと評判が高いのが八幡堀に程近い「和た与」です。「近江から大阪や関東の地方に住み込みで仕事に出ていた丁稚さんが、故郷への数日間の帰郷から商家に戻るときに、自分の給金の中から蒸し羊羹を買い、ご主人や番頭さんへのお土産にしたお菓子と言われています」。

でっち羊羹の由来を素敵な笑顔で教えてくださったのは、五代目夫人の小川貴子さん。その暖簾にもあるように「和た与」の創業は文久三年(1863年)。十勝産小豆のこし餡と小麦粉を練り合わせて天然の竹皮に手包み、蒸し籠でじっくり蒸しあげられたでっち羊羹は、近江の名物として欠かすことのできない銘菓。もっちりとした口当たりと上品で控えめな甘さ。竹の芳ばしい香りと小豆の持ち味のハーモニーを感じる、素朴ながらも一度食べたら忘れられないお菓子です。「和た与」を次々に訪れるのは観光客だけではなく、食べやすい一口サイズにハサミで切ってもらって、おやつ用に嬉々として持ち帰る地元客の姿からも、この街で愛され続けている老舗であることが伝わってきます。


砂糖問屋「綿伍」に奉公していた初代が暖簾分けを許されて、主家の一文字から命名した「綿与」という店を近江八幡に開いたのが「和た与」の始まり。近江にでっち羊羹は数あれど、地元の人からも「和た与が一番」と愛される老舗。

 amana白塀の風雅な街並みを見渡せる「逢茶 あまな」の2階席。「和た与」の銘菓でっち羊羹はもちろん、ういろ餅入りの和パフェなど、新感覚のメニューも楽しめる。

 

歴史ある街並みに溶け込む
ヴォーリズの建築と酒蔵のゲストハウス

人たちが築いた歴史に彩られた近江八幡の街に、異国情緒あふれる洋風建築が点在しています。これらの建築を手がけたのは、明治38年に英語教師として赴任して以来、生涯を通して近江八幡を深く愛し、この地に暮らしたアメリカ人、ウィリアム・メレル・ヴォーリズ。「建物の風格は、人間と同じくその外観よりもむしろその内容にある」との信条で、全国に約1600に及ぶ建築設計に携わったほか、メンソレータムを日本に輸入し、不治の病と当時恐れられていた結核治療を目的とした近江サナトリウム(現ヴォーリズ記念病院)や近江兄弟社学園の設立など、ヴォーリズは多岐にわたる社会貢献事業を展開しました。近江八幡に残されたヴォーリズ建築とゆかりの場所を巡るツアーも不定期で開催されています。

大正時代に建てられたヴォーリズ建築、旧八幡郵便局のお向かいに、次に近江八幡を訪れるときはここを拠点にしたい、と思えるゲストハウス「MACHIYA-INN(町家イン)」をみつけました。特徴のある建物は江戸末期の酒蔵跡をリノベーションしたもの。館内には滋賀の作家による現代アートが飾られています。近江八幡は国際芸術祭「BIWAKOビエンナーレ」が開催され、ボーダレス・アートミュージアム NO‐MAを擁する、芸術の街でもあるのです。MACHIYA-INNには伝統的な出格子を配した和室、厨子二階とよばれる町家独特の建築様式の納戸を改装した洋室、酒蔵の樽を浴槽に設えた浴室、リビングスペースやキッチンも備わっています。和と洋、歴史と文化の交差する近江八幡に長期滞在して、その魅力を味わい尽くすのに相応しいのは、街の魅力を体現した、こんな宿なのかもしれません。


近江八幡を深く愛したウィリアム・メレル・ヴォーリズ(1880~1964)。彼の建築は日本的な和の街並みになぜかしっくりと溶け込む。近江八幡では市内に点在するヴォーリズの建築を廻るガイドツアー(不定期)も開催している。写真は大正期のヴォーリズ建築のひとつ、旧八幡郵便局。現在はNPO法人ヴォーリズ建築保存再生運動「一粒の会」により保存・修復され無料公開されている。


旧八幡郵便局のお向かいにあるゲストハウス、MACHIYA-INN(町家イン)は江戸末期創業の老舗酒蔵をリノベーションした宿。和室2室、洋室1室。酒樽を使ったお風呂やリビングスペース、キッチンもある。

 

和た与
滋賀県近江八幡市玉木町2丁目3番地
http://watayo.com/

逢茶 あまな
滋賀県近江八幡市大杉町12 八幡堀 石畳の小路
http://watayo.com/tenpo/amana

旧八幡郵便局
滋賀県近江八幡市 仲屋町中8
開館時間 10:00 ~16:00 火曜休・不定休あり

MACHIYA-INN(町家イン)
滋賀県近江八幡市仲屋町中21
近江八幡まちや倶楽部内
https://www.omi-machiyainn.com/
江戸末期創業の酒蔵跡の町家を改装したゲストハウス

 

プレミアム滋賀は第3回に続きます。


写真・野口伽那子

文・藤野淑恵