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~その歴史と世界に誇る最新のものづくり~

ものづくりの町 高岡市を訪ねて《第1回》

2018.03.23

金屋町 町並み                             (写真提供:富山県高岡市)

1611年、高岡に隠居していた加賀藩二代当主・前田利長が7人の鋳物師を呼び寄せ開いた、金屋町。千本格子の美しい家並み、銅片を埋め込んだ石畳が、往時を偲ばせる。

2015年の北陸新幹線開通で、首都圏と石川県、富山県は近しい距離感になりました。このエリアには多くの魅力的な町があります。今回は中でも富山駅と金沢駅に挟まれた、「ものづくりの町」として知られる、富山県高岡市を訪ねました。高岡の魅力を、3回にわたりご紹介します。

 

高岡市が伝統工芸の町になるまで

 

加賀藩主・前田利長が作った
ものづくりワンダーランド

今から約400年前の1609年、加賀藩二代藩主・前田利長が城を築き、生まれたのが、高岡という町です。北陸新幹線・新高岡駅へは、富山駅、金沢駅いずれからもひと駅で、約10分強で到着。高岡市の中心部へはこの新高岡駅から電車で3分、徒歩なら20分ほどで、旧い町並みが今なお残る、風情溢れる場所です。高岡城は開町からわずか6年で無くなってしまいましたが、城跡は公園として今も残り、城下町では、日本三大大仏のひとつとされる高岡大仏が町を見下ろしています。高岡で特に知られているのは、高岡銅器と高岡漆器。国の伝統的工芸品産地指定を受けており、銅器は国内シェア95%を誇ります。全高15メートルの青銅製の大仏さまは、ものづくり高岡の象徴的存在でもあります。

高岡大仏                            (写真提供:富山県高岡市)

従来は木造だった高岡大仏。過去2回、大火事で焼失してしまったことを受け、1933年に高岡銅器の技術を結集し、青銅製の大仏が作られた。

現在の高岡には、ふたつの重要伝統的建造物群保存地区があります。ひとつは住宅や土蔵が並ぶ山町筋、もうひとつはそこから少し離れた千保川の向こうの金屋町です。前田利長は当初から高岡を商工業の町として発展させようと考え、開町から2年後の1611年には、近隣の西部金屋村から7人の鋳物師を呼び寄せ、この金屋町に移住させます。これが、高岡銅器の始まりでした。高岡漆器も銅器同様、前田利長が武具や箪笥、膳など日常生活品を作らせたのが始まりだそう。すべては、利長というひとりのお殿様から生まれたのです。しかし前田利長は1614年に亡くなってしまいます。前述の通り、高岡城は1611年の一国一城令により、廃城に。このまま町は衰退していくかと思いきや、三代藩主・前田利常は、より一層商工業の発展を促す政策を採ります。一説によれば、城がないために武士が少なく、おかげで職人や商人が伸び伸びと活動できたのが発展の理由のひとつだとか。長い歴史の中では浮き沈みもあり、現在も高岡にとっては難しい時代ではありますが、若手を中心に新しいものづくりのスタイルを模索しているところです。

高岡の新観光スポットは
2017年開業の「能作」新社屋
 
さてこの高岡で、我々一般消費者に最も知名度が高いところといえばきっと、「能作」でしょう。同社は大正5年に創業し、2018年現在で102年の歴史を持つ鋳物メーカー。仏具を中心に長らく銅器製造の下請けを担っていましたが、現社長・能作克治さんが就任以来、錫(すず)を中心とした自社製品の企画・製造・直販を開始。現在ではパレスホテル東京や日本橋三越などに直営ショップを構え、商品は海外でも高い評価を得ています。

                                              (写真提供:株式会社 能作)

(左)曲がる錫の皿 『KAGO-ピオニー-L』
柔らかいという錫の特性を活かした、錫100%の器「曲がる」シリーズ。手で簡単に形を変えられる。能作のヒット商品のひとつ。
(右)テーブルウェアセット 『Kuzuhi-Tareシリーズ』
融点が低く、柔らかい錫は、熱伝導と抗菌性に優れているという特徴も併せ持つ。他地域の錫製品との差別化を図るため、能作は錫100%の食器を作り始めた。

能作の本社は高岡駅からクルマで20分。2017年に完成したばかりの新社屋で、工場のほか、ファクトリーショップとカフェを併設しています。

社屋概観                               (写真提供:株式会社 能作)

木型ディスプレイ                              (写真提供:株式会社 能作)

玄関を入ってすぐにある、鋳物づくりに使うホオノキ製の木型ディスプレイ。単なる飾りではなく現役で、時折、職人が必要な木型を取りに来る姿も見られる。

こちらの目玉は、工場見学。1日5回、1回あたり1名から約60名までを受け入れています。旧社屋時代から児童などの見学を積極的に受けつけていましたが、新社屋では「工場の、音・熱・匂いを肌で感じて欲しい」と職人のすぐそばまで近寄れる見学コースを設定。見学は少人数でも必ず、産業観光部長・能作千春さんら専任スタッフが案内する細やかさで、英語対応も可能です(見学時間は基本約30分)。旧社屋でも年に1万人が訪れたそうですが、今は県内外から月に約1万人が来場。その人気のほどがうかがえます。 

説明中の産業観光部長・能作千春さん                   ©Mime Kihara

大学時代を神戸で過ごし、卒業後も同地のアパレル企業に勤めた、産業観光部長・能作千春さん。神戸で能作の製品を目にしたり、話題にのぼる様子に心を動かされ、家業へ戻る決意をした。

 

                                                                  (写真提供:株式会社 能作)

(左上)工場の様子 ©Mime Kihara
工場内には真鍮製の文字サインがあちこちに。「銅」サインの下では真鍮の、「錫」サインの下では錫の造形を行っていることを示す。鋳造、つまり金属を流し込む工程は「炉」の下で週2回、行われる。
(右上)鋳物体験の様子
鋳物製作体験も可能で、錫製のぐい呑みや箸置き、ペーパーウェイトなどを作れる。所要時間は内容によって異なり30分から90分で、陶芸品や他金属製品と違い、当日すぐ完成品を持って帰ることが可能。
(左下)IMONO KITCHEN 
IMONO KITCHENでは、能作の食器を使ったランチセットやパンなどを提供。熱伝導のよさなど、使い勝手のよさが、実際に試せるのがいい。
(右下)
富山県観光情報コーナー ©Yasushi Nakamura
館内にある富山県観光情報コーナー。社員に富山県内のおすすめスポットを募り、3票以上入った飲食店、ホテル、観光地などをピックアップ。産業観光部の社員が各スポットにアポを取り、自ら取材・撮影をして制作したカードがずらり並ぶ。無料。

能作ではこのような常設コーナー以外に、他業種とのコラボイベントなどを定期的に実施。「今後は季節毎に前庭を使ってお茶会をするなど、お客さまが何度も足を運びたくなるイベントを企画中です」と能作千春さんは言います。買う・食べるなどが中心になりがちの観光旅行。しかし能作では自らの生業をつぶさに見せ、体験させてくれることで、ものづくりの面白さ、格好良さを伝えます。これは確かに十二分な観光資源でしょう。でも、それはここが特殊な会社だからでしょうか…?
いいえ、実は違います。高岡は、「見せる」ことで「魅せる」町でもあります。この続きは、第2回でお伝えしましょう。

《第2回に続く》

 

 
能作
富山県高岡市オフィスパーク8-1
http://www.nousaku.co.jp

・FACTORY TOUR(工場見学) 無料。※要事前予約 ※日曜・祝祭日・年末年始休、土曜不定休
・NOUSAKU LAB(鋳物製作体験) ペーパーウェイト1000円、箸置き2500円など
・IMONO KICHEN(カフェ) ランチセット1500円、チーズケーキ450円など

 

文・写真 木原美芽