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~ものづくりの現場が覗ける、産業観光の面白さ~

ものづくりの町 高岡市を訪ねて《第2回》

2018.04.05

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 漆器くにもと」の名刺入れ。美しい螺鈿が印象的。内側の銅板は「モメンタムファクトリー・Orii」が制作した。「漆器くにもと」の國本耕太郎さんが家業に戻った際に企画した製品の第一号。

 

伝統工芸体験が、町の魅力を立体的にする

 

見る、触れる、そして体験する
ものづくり現場探訪

 

の楽しみのひとつに、「体験する」ことが上げられます。日常生活では垣間見ることができない世界を覗くことも、旅ならではでしょう。高岡銅器、高岡漆器をはじめとするものづくりで知られる富山県高岡市では、その伝統工芸品の製作体験ができるところがいくつもあります。

高岡駅から徒歩で10分ほどのところにある「漆器くにもと」。新旧の高岡漆器を数多く取りそろえている店で、商品企画から製造、卸売り、小売までをカバーしています。またこちらでは、アクセサリーやお箸づくり、ネイルの螺鈿体験ワークショップを開催しています。

岡漆器には青貝塗、彫刻塗、勇助塗の3つの技法があります。このうち、青貝塗とは、一般的な言い方で螺鈿のこと。薄く削った貝を使って色々なものを飾り、漆で固定する技法です。ワークショップでは、伝統工芸士の先生に教わりながら、数種類から選んだベースに丸や四角、桜の形などに予め抜かれたアワビ貝の螺鈿を使ってオリジナルの柄を付けたアクセサリー、お箸が作れます。手先に自信ありなら、自分で切り出した螺鈿を使うことも可能。作ったものは先生が最後にコーティングしてくれ、約1時間後に完成品を受け取れます。螺鈿ネイルの方は、プロのネイリストが同じく螺鈿を使って指先を美しく飾ってくれます。

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(左上)ネックレスやイヤリング、ピアスなどが作れる。ワークショップでは漆は使わないので、かぶれるなどの心配はない
(右上)ジェルネイルを使い、爪にオリジナル柄の螺鈿を施してもらえる
(左下)螺鈿に使う切り出したアワビ貝
(右下)サンプルのネイルチップ。実際は直接爪に塗る

キラキラ光る貝は、個体によって色が違います。また非常に薄く加工されているので、まさに吹けば一気に飛んでしまうほど。センスも技術も根気もいる作業で、実際に体験するとプロの作業の緻密さや難しさがよく分かります。

 

た錫を使った鋳物なら、金屋町の「鋳物工房 利三郎」で体験が可能。用意された砂型に好きな柄を鉛筆で下書きし、釘で彫ります。ペーパーウェイトや小皿、ぐい飲み、箸置きなどを作ることができます。

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(左上)工房に何冊もあるイラスト・図案集を参考にして決めた図柄を、砂型に下書き中
(右上)錫の塊をバーナーで溶かす
(左下)自分の型に錫を流し込むところも、体験させてくれる
(右下)しばらくして錫が冷えて、型を開けてもらうと、この通り。余分な部分を削り、きれいに磨き上げたものをいただける

 

鋳物とは「溶かした金属を型に流し込み、冷やし固めて取り出したもの」。これもまた、自分の手でやってみるとその工程がよく理解できます。型抜きのため図案が反転するので、文字なら鏡文字で、模様でも逆になることを念頭に置きながら彫らねばなりません。その難しさはあるものの、錫は融点が232度と金属の中では大変低く、冷めるのも早いので、約1時間で完成品をいただけるのは、観光客には嬉しい手軽さです。

 

進化する高岡のものづくり
その「いま」を知る

 

岡銅器の伝統的な着色技術を間近に見ることができる工房もあります。高岡銅器では、青銅色や煮色、宣徳色、鉄漿色など、数多くの色を付けることができますが、塗料を使うわけではありません。各種技法や薬品を組み合わせた化学反応によって銅を着色する手法で、これまた、直接見るとその変化の面白さ、美しさに目を奪われます。

 

モメンタムファクトリー・Orii」は昭和25年に創業し、美術工芸品や銅像、仏具等の着色を手がけてきた会社。近年は伝統的な分業制による受注生産に留まらず、オリジナルのクラフト作品や、ホテル・飲食店・個人宅などで使われる建築資材を製造し、大きな成果を上げています。

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(左上)自社で着色した「モメンタムファクトリー・Orii」の看板。
(右上)緑青を発生させた銅板をアンモニアの気化ガスに当てると、深みのある青色に変化する
(左下)工房見学は要予約。作家活動と平行しながら働く若手がいるなど、元気な職場だ
(右下)食酢に鉄くずを加え、水で薄めた溶液を稲の芯で束ねた「ネゴボウキ」に浸して磨き、焼き付けながら染める「鉄漿(おはぐろ)色」

 

回の訪問では「鉄漿(おはぐろ)色」「緑青(ろくしょう)色」の着色法を見せていただきました。「モメンタムファクトリー・Orii」は社長の折井宏司さん含め、10数名ほどの工房。職人の半数が県外出身者で、若手が中心です。伝統工芸産業は、職人の高齢化や市場の縮小で難しい局面にありますが、現場で頑張る若き職人さんから話をうかがっていると、少しずつでも確かな変革が起きていると分かります。そんな時代の変化を感じることができるのも、ものづくり現場探訪の魅力のひとつでしょう。

 

他にも、伝統技術を使いながら、新しいものづくりに挑戦している会社があります。代々高岡銅器を製造してきた「四津川製作所」は特に香炉に強い会社ですが、この数年はオリジナルのテーブルウェア商品に注目が集まっています。代表作は、銀やターコイズブルーに着色した真鍮を土台にした木製の酒器「Guinomi Sake Cup」。異素材を精緻に組み合わせる技術力と高いデザイン性が、人気の秘密です。

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(左)「四津川製作所」ショールーム。同社のテーブルウェアは、「KISEN」というブランド名で販売
(右)「KISEN」の新製品、アルミに金や銀、プラチナの箔を貼った「Dish FUNGI」

 

津川製作所」の製品は自社ショールームの他、町家をリノベーションした日本料理店「茶寮 和香」でも見ることができます。毎日必ずとは言えないのですが、木製の酒器やアルミ製の皿に、刺身や前菜を盛り付けて提供。地元食材の美味を楽しみながら、高岡産工芸品の日常的な使い方を知ることができます。

 

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(左)「茶寮 和香」で使われている、「四津川製作所」の代表作「Guinomi Sake Cup」。この日は前菜の盛り付け皿として登場
(右)伝統的な高岡の町並みが残る金屋町にある「茶寮 和香」。高岡産の野菜や氷見の魚などがいただける

 

高岡市をはじめ、富山県全体が、地場産業を「見せる」ことで観光資源として活かそうという取り組みを続けています。今回訪れた場所以外にも、高岡には数々の「体験・見学スポット」があります。そのどこを訪れたとしても、一朝一夕には手にできないこの土地ならではの魅力に触れられる、貴重で楽しい思い出になることでしょう。

 

漆器くにもと
富山県高岡市中央町13
TEL:0766-21-0263 
http://www.kunimoto-japan.com

 

鋳物工房 利三郎
富山県高岡市金屋町8-11
TEL:0766-24-0852
http://www13.plala.or.jp/jinpachi/

 

momentum factory Orii
富山県高岡市長江530 折井着色所
TEL:0766-23-9685
http://www.mf-orii.co.jp

 

四津川製作所
富山県高岡市金屋町6-5
TEL:0766-30-8108
http://www.kisen.jp.net

 

茶寮 和香(さりょう にこか)
富山県高岡市金屋本町2-26
TEL:0766-75-8529
https://www.facebook.com/nicoca25/

 

第3回に続く》

 

文 木原美芽 
写真 中村 億