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~日常生活の中にある、ものづくり~

ものづくりの町 高岡市を訪ねて《第3回》

2018.04.24

高岡御車山祭
毎年5月1日に開催される、高岡御車山祭。400年の歴史を誇る御車山は、さながら動く美術館だ   (写真提供:富山県高岡市)

 

連載第2回では、「体験して」楽しむ、ものづくりの町・高岡をご紹介しました。第3回では「歩いて」楽しむスポットをご紹介しましょう。

 

 

過去も現在も未来も、工芸はここにある

 

町に今も息づく
伝統工芸の歴史

 

岡駅から徒歩10分の山町筋エリア。ここに、高岡が持つ伝統工芸技術の底力を見ることができる場所があります。「高岡御車山会館」は、国の重要有形・無形民俗文化財である「高岡御車山(たかおか・みくるまやま)」を通年展示する施設。高岡御車山は、1588(天正16)年、豊臣秀吉が後陽成天皇を聚楽第に迎え奉るときに使用した御所車を、加賀藩祖・前田利家が拝領し、1609(慶長14)年、高岡を開町した加賀藩二代・前田利長が高岡城を築く際に町民に与えたのが始まりと言われています。2016年には、ユネスコ無形文化遺産にも、登録されました。

御車山は御所車に鉾を立てた特殊なもの。金工、漆工、染織等、高岡ならではの優れた工芸技術による装飾が施されており、非常に華やかで美しい山車です。高岡御車山は現在7基あり、うち1基の実物を会館内で見ることができます。毎年5月1日に開催される「高岡御車山祭」では、これら7基が、太鼓や鉦のゆったりとした囃子と共に町を引き回されます。

 

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(上)館内に展示されている御車山。御車山は数ヶ月単位で入れ替える
(左下)車輪の文様解説
(右下)高度な技術があるからこそ実現する美しい装飾

 

華やかさと対極にある
素朴な工芸品も

 

一方、高岡伝統工芸の粋を集めた御車山の優美な世界とはまた違う、素朴な工芸品もあります。高岡市とその周辺3市は、実は全国最大の菅笠産地。平成29年で約3万蓋を制作しているそうです。2位の山形県飯豊が約3000蓋と聞けば、その差は明快。17世紀頃から作られてきた菅笠は「越中福岡の菅笠」と呼ばれ、2017年には国の伝統工芸品に指定されました。

 

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(左上)伝統の技を活かしつつ改良した、ヘルメット笠と乙女笠
(右上)裏を返すと、「越中福岡の菅笠」認定シールが
(左下)竹の骨を使わず、スゲだけで編んだ帽子(サンプル)。後ろが材料であるスゲ
(右下)大菅商店外観

 

の「越中福岡の菅笠」を販売しているのが、高岡大仏にほど近い場所にある「大菅商店」。古い土蔵づくりの家屋をリノベーションして2016年に開業した、“現代の荒物屋”です。ここで、竹を中骨に地元産スゲを使って縫い上げていく伝統技術はそのままに、現代風にアレンジした改良型菅笠を取り扱っています。

越中福岡の菅笠振興会の高田哲さんによれば、「今後は伝統的なスタイルだけでなく、スゲを使った様々な工芸品を生産・販売していきたい」とのこと。帽子型のほか、ランチョンマットやコースターなども試作中だそうです。

 

こまで3回にわたり、駆け足でものづくりの町・高岡の魅力をご紹介してきましたが、これらをまとめて楽しめるイベント「高岡クラフト市場街」が、年に1度、9月に開催されています。第7回目となる今年2018年は、9月21日(金)から24日(月・祝)までの4日間。通常は公開されていない市内の工房の見学ができたり、工芸品のショッピングや、食とクラフトとのコラボも楽しめます。

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(写真提供:高岡クラフト市場街実行委員会)
高岡クラフト市場街2017でのひとこま。山町筋にある町家を改修した商業施設・山町ヴァレー

 

昨年は「工芸都市高岡クラフト展」「金屋町楽市 in さまのこ」「銅器団地オープンファクトリー」との同時期開催し、高岡全体でこのお祭りを盛り立て、4大イベント総計で約4万9000人が来場したそう。今年も開催に向けて準備中で、詳細は随時公式サイトで発表されるとのことです。

 

岡市の人口は約17万人。富山県第二の都市ですが、町をそぞろ歩いていると、のんびりとした空気感が居心地の良いところです。今回旅の合間に小耳に挟んだ話によれば、実は本格的なインドカレー店がたくさんあるとか、おにぎりはとろろ昆布で巻くのが普通だから子どもの頃は海苔が憧れだったとか、高岡はものづくり以外でもたくさんの魅力的なエピソードを持っている様子。噛めば噛むほど味が出る、掘れば掘るほどネタが出る。伝統工芸やクラフトという言葉を入り口に、もっとじっくりつき合いたくなる。高岡は、そんな滋味深い町でした。

 

高岡御車山会館
高岡市守山町 47-1
https://mikurumayama-kaikan.jp

 

大菅商店
富山県高岡市大手町12-4
http://oosuga-syoten.com

 

高岡クラフト市場街2018
2018b年9月21日(金)〜24日(月・祝)※予定
http://ichibamachi.jp

 

《第1回》 ~その歴史と世界に誇る最新のものづくり~

《第2回》 ~ものづくりの現場が覗ける、産業観光の面白さ~

 

文 木原美芽 
写真 中村 億