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やまなみ街道~森の息吹を浴びる癒しの街道〜広島・島根への旅《後編》

2018.11.29

シジミ漁と夕日で有名な松江のシンボル、宍道湖。夕暮れ時には、多くの観光客が湖のほとりに座り、暮れなずむ夕空を鑑賞している。

やまなみ街道の終着地は、水の都、松江市。 縦横に堀川が走る美しき城下町で一服のお茶をいただき、古代出雲文化を今に伝える縁結び神社に参詣し、そして迎える黄昏時。宍道湖の空は茜色や金色に、時には淡い紅色に染まり、ここが「神々の国の首都」であると静かに語りかけてきます。

茶人、松平不味公の茶室を訪ねて〜明々庵


明々庵へと続く赴きある階段。

武家屋敷が今に残る松江市は、京都、金沢と並んで茶処、菓子処として有名です。松江に茶の文化を根付かせたのは松平藩7代藩主の松平不昧公(治郷)。不昧公は18歳で茶の湯を始め、号を「不昧」とし、後に「不昧流」と言われる茶道観を確立した大名茶人です。

江市内の不昧公の茶室「明々庵」を訪ねれば、不昧公が好んだという銘菓と共に一服のお茶を頂くことができます。銘菓「若草」と「菜種の里」は、不昧公が詠んだ歌から名付けられたもの。

「曇るぞよ 雨降らぬうちに 摘みてこむ 栂尾山の春の若草」

「寿々菜さく 野辺の朝風そよ吹けは とひかう蝶の 袖そかすそふ」

今年は不昧公没後、200年。長い時を超えて現代に伝わる銘菓と共に、茶の湯の美学に触れてみてはいかがでしょう。


厚いかやぶきの入り母屋造りの茶室は1779年(安永8年)に建てられたもの。「わび」の精神が漂う枯淡な茶室。

不昧公が使用していた釜。室町時代から続く京都の釜師、大西家二代目の釜で300年の歴史をもつ。(写真左) 200年以上の時を超えて今に伝えられた松江の銘菓「若草」(手前)と「菜種の里」(奥)。奥出雲の餅米でできた求肥の上に薄緑色の寒梅粉のそぼろをまぶした「若草」の萌ゆる緑が印象的。(写真右)

須佐之男命と稲田姫命を祀る神社で恋占い〜八重垣神社

結びの神社といえば出雲大社ですが、松江市内の八重垣神社も良縁を結ぶ神社として高名です。祀られているのは、須佐之男命(スサノオノミコト)と稲田姫命(イナダヒメノミコト)。須佐之男命は、八岐大蛇(ヤマタノオロチ)に狙われていた稲田姫命を八重垣を造って守り、怪物を退治した後、稲田姫命を妻に娶ります。天の神と地の神の結びを祝う神社の奥の森にあるのが、恋占いの「鏡の池」。この池は、稲田姫命が水を飲み、姿を写していたため、稲田姫命のご霊魂が深く浸透していると伝えられています。


須佐之男命と稲田姫命を縁結びの大親神として祀る八重垣神社。

お社で求めた占いの紙を鏡の池に浮かべると、一枚一枚異なるメッセージが現われてきます。紙の上に硬化をそっと乗せ、15分以内に沈めば良縁が早く、遅く沈めば縁が遠い。近くで沈むと身近な人、遠くで沈めば遠方の人とご縁があるのだとか。

また、縁結びの大親神を祀る八重垣神社には「夫婦杉」と呼ばれる杉の樹や、2本の樹が1本に交わった椿の樹があり、結婚の象徴として神聖視されています。

の終わりに水の都の夕日を眺めて〜宍道湖

水の都、松江市のシンボルである宍道湖。その夕日は神々しく茜色に染まるため、多くの文人に愛されてきました。中でも出雲に居を構えた明治の文豪、小泉八雲(ラフカディオ・ハーン)は、毎日、宍道湖の夕景を眺めていたとか。そんな彼は『神々の国の首都』の中で、不思議なことに夕景ではなく早朝の宍道湖を讃えています。

「はるか湖の縁ふちまで長く伸びている、ほんのり色づいた雲のような長い霞の帯。それはまるで、日本の古い絵巻物から抜け出てきたかのようである」。

夜から朝へ。そして昼から夜へとシーンが切り替わるひと時、宍道湖は空と溶け合い、美しい姿を現します。出雲の松江は、神々の国の首都。神々が織りなす美と豊かさに出会える麗しの地です。

 
前編》《中編》も是非、ご覧ください。

■明々庵
島根県松江市北堀町278
Tel : 0852-21-9863
http://www.meimeian.jp/

■八重垣神社
島根県松江市佐草町227
Tel : 0852-21-1148
http://yaegakijinja.or.jp/

 

取材、文/北澤杏里