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PREMIUM SHIGA プレミアム滋賀

《第3回》北国街道の宿場町、木之本が誇る「七本槍」

2018.03.24


(左)羽柴秀吉と柴田勝家が織田信長の後継者を競った天下分け目の戦いとして歴史に刻まれる「賤ケ岳の合戦」。「七本槍(しちほんやり)」と呼ばれる、秀吉軍で活躍した七人の武将たちは今尚語り継がれています。写真は賤ケ岳山頂の武将の像。春~秋は木之本から運行するリフトで山頂まで登るのが便利。(右)当地に天文年間に創業した造り酒屋、冨田酒造を代表する銘酒「七本鎗」。若き蔵元により湖北の土地が凝縮した本物の地酒を日本に、世界に発信する。左より「琥刻2016」、「純米滋賀渡船6号」、「純米」、「純米冬季限定にごり酒」、「純米冬季限定しぼりたて生原酒」。

 

私たちが知らない、未だ見ぬ日本のプレミアムを求めて。
PREMIUM JAPANはローカルな街のグローバルな魅力を紐解く旅に出ます。

最初の目的地は琵琶湖の豊かな自然を抱き、由緒ある寺社や歴史情緒が残る風光明媚な滋賀県。今回は「賤ケ岳の七本槍」で知られる北国街道の宿場町、木之本を散策します。

 

PREMIUM SHIGA プレミアム滋賀《第3回》
北国街道の宿場町、木之本が誇る「七本槍」

北と呼ばれる琵琶湖の北東地域は、豊かな自然と歴史・文化が共存する、知る人ぞ知るハイダウェイ。東海道新幹線を米原で下車し、JR琵琶湖線に乗り換えて福井方面に向かうと、30分程の乗車で到着する7つ目の駅、木之本が今回の旅の目的地です。

北国街道の宿場町として、また「木之本のお地蔵さん」の愛称の地蔵院の門前町として賑わった木之本宿。北国街道は、北陸と近畿を結ぶ陸路として古くから開けた道で、大名行列も宿泊した木之本宿には本陣、問屋、伝馬所が設けられました。賤ケ岳の戦いで秀吉軍を助けた「賤ケ岳の七本槍」と呼ばれる7人の武将の伝説が刻まれた場所としても知られ、木之本地蔵院には秀吉軍の本陣が置かれたといいます。瓦葺の切妻屋根、凹凸のある柚子壁、細い角材を縦に並べて外の光を取り入れる連子格子といった伝統的な日本家屋が立ち並び、宿場町の面影を色濃く残す街並みには、造り酒屋、醤油の醸造元、和菓子屋、ギャラリーなどが並びます。


(左)北国街道の宿場町として栄えた面影を今に残す木之本宿の街並み。(右)JR木之本駅から徒歩6分程度で到着する木之本地蔵院は日本三大地蔵のひとつ。


この土地の水、この土地の米から生まれる
滋賀・湖北の本当の地酒「七本鎗」

之本のメインストリート、地蔵院通りに軒を連ねる冨田酒造は470年の伝統と歴史を誇り、滋賀・湖北の銘酒「七本鎗」の蔵元として知られています。第15代目当主であり杜氏も務める冨田泰伸さんは、大学卒業後はワイン製造のメーカーでの職務経験の持ち主。実家の家業を継ぐ決意をした後、フランスのワイナリーやスコットランドのウィスキー蒸留所を巡り、「真の意味での地域の酒=地酒を造って、土地を表現する」ことに強く心を揺さぶられます。2010年に醸造責任者になった後は、歴史を大切に守りながらも、様々な変革に挑んで新しい「七本鎗」を形作ってきました。

県外の有名な酒米を一切ブレンドすることなく、滋賀県特有の酒米である「玉栄」と、冨田酒造の蔵内の井戸から湧き出る奥伊吹山系の伏流水を用いた、「この土地の米と水を使った本当の地酒」は、国内はもとより、海外の日本酒愛好家からも高い評価を得ています。その魅力は、海のない滋賀県の誇る発酵料理にもよく合うボディのある、深みのある味わい。また、完全無農薬栽培米による「無農薬純米無有」、ワインのようにビンテージという発想から醸造年をラベルに記した「琥刻」など、これまでの枠にとらわれない冨田酒造の日本酒には、土地の豊かな自然と文化、生産者と作り手の想いがこめられていて、1本の日本酒が語りかけるストーリーに心が躍ります。

 

「七本鎗」の蔵元、冨田酒蔵。江戸時代に建てられた蔵の内部が趣のある店舗スペースになっている。この地に長期逗留して七本鎗を愛飲した若き日の北大路魯山人によって描かれた「七本鎗」の篆刻作品も必見。酒蔵を代表する日本酒はもちろん、酒粕、酒粕を使用したスイーツなども販売されている。趣のあるステンドグラスは第十五代目蔵元のお姉さまの作品。木之本町のある長浜市はステンドグラスの街としても有名。

 

冨田酒造の蔵と煙突は木之本町のシンボル的な景観のひとつ。冨田酒造第十五代目蔵元であり杜氏も務める冨田泰伸さん。日本酒造りを通して木之本から世界に向けて土地の文化を発信している。

 

旅の一番の楽しみは食べ歩き
散策の合間に木之本名物に舌鼓

国街道の宿場町として、行き交う多くの旅人が宿をとった古を彷彿させる木之本は、一日のんびり街歩きをするにはちょうど良い小体な街。JR木之本駅を起点に、この街のシンボルでもある木之本地蔵院、蓮如上人ゆかりの明楽寺、秀吉の伝説が残るくつわの森などをまわる合間を縫って、風情のある和菓子屋、カフェ、お土産屋などに誘われます。木之本の山にある自社栽培のよもぎで作った草餅で有名な「菓匠禄兵衛(かしょうろくべい」)、たくあんとマヨネーズという特異なコンビネーションの具で一躍有名になった、サラダパンの「つるや」などは、お目当ての名物を指名して県外からの来店者も絶えない人気店です。

元郡役所跡にあり、店頭の「北国街道」という石標が目印の料亭「すし慶」は創業大正元年。天皇皇后両陛下も御召上された名店ですが、ランチタイムであれば気軽に料亭の味を堪能できます。ここで必ずいただきたいのが鯖の棒すし。大分の漁場から届いた活きのいい鯖と近江米の奏でる上品ながらも滋味のある味わいで、お取り寄せグルメとしても人気の逸品です。奥琵琶湖の新鮮な湖魚、湖北の季節を彩る山の幸、そして鯖の棒すし。この地の魅力を凝縮した昼御膳「湖北旬料理 きのもと」は木之本散策のランチにおすすめです。

 
すし慶

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菓匠禄兵衛

すし慶の店舗は元郡役所跡にあり、ギャラリーとして公開されている蔵に飾られた賤ケ岳合戦の屏風は一見の価値あり。鯖の棒ずしで知られる大正元年創業の老舗、すし慶。漁場から直送の活きのいい鯖と極上の近江米が織り成す味わい。/大正15年に木之本で創業した菓匠禄兵衛。名物の「名代草餅」や「黒さや草餅」はこの地方の山にある自社の畑で栽培しているよもぎを使用している。近江名物のでっち羊羹やくず豆腐も人気。

 

 
賤ケ岳リフト
滋賀県長浜市木之本町大音
http://www.ohmitetudo.co.jp/shizugatake/
木之本から賤ケ岳山頂に向けて登るリフト。4月から11月に運行。南西に奥琵琶湖と比良山系、竹生島など湖山の美しさ、東は伊吹山、北は羽衣伝説の余呉湖が一望できる。山頂には賤ケ岳合戦の戦跡碑、戦没者の碑がある。山頂までリフトで約6分。

木之本地蔵院
滋賀県長浜市木之本町木之本944
http://www.kinomoto-jizo.com/

冨田酒造
滋賀県長浜市木之本町木之本1107
http://www.7yari.co.jp

すし慶
滋賀県長浜市木之本町木之本988
http://www.sushikei.com/

 

プレミアム滋賀は第4回に続きます。

写真・野口佳那子

文・藤野淑恵