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PREMIUM SHIGA プレミアム滋賀

《第6回》名刹と大津絵に心あそぶ。琵琶湖を望む古都・大津を歩く。

2018.11.18


門跡寺院圓満院門跡の誇る「三井の名庭」。室町時代の絵師・相阿弥の作と伝えられるもの。相阿弥は絵だけではなく、竜安寺の庭も彼の手によるものとされているほど、作庭にも才を見せた人物。

京都駅からJR琵琶湖線に乗ってたったの2駅。大津駅に降り立つとそこは、歴史と文化、そして比叡山や琵琶湖という自然に抱かれた静かな古都・大津でした。いにしえの昔から交通の要所であり、往来の人々を懐深く迎える心が宿っています。荘厳な静けさに包まれた古刹で日本の文化に触れ、素朴でユーモラスな大津絵になごむ。喧噪から遠く離れて、心身共にやすらぐひとときがここにありました。

由緒正しき門跡寺院
静けさの中に身を置く至福

琶湖疎水を眺めながらの散策の先に見えてくる荘厳な雰囲気の寺院。それが圓満院門跡です。皇室にゆかりの方々が住職に就かれていた門跡寺院は、こちらを含めて17寺院しかありません。その由緒と歴史は、随所に見られます。徳川秀忠の息女和子が後水尾天皇に入内した際に御所として作られ、京都御所より譲り受けた「宸殿」(しんでん)には、直接足を踏み入れて拝観することができます。「宸殿」から眺める庭は、相阿弥作と伝えられる名勝史跡指定「三井の名庭」。春には山桜、夏の青葉、秋には錦秋に彩られます。



名勝史跡指定「三井の名庭」は池泉鑑賞式庭園。この庭は滝を設けていないことも特徴。(写真上)「宸殿」、「三井の名庭」を望む。(写真下左)副住職の山上進道さんが圓満院門跡の歴史と未来を語ってくれた。(写真下右)

座禅、茶道、投扇興など
圓満院門跡で日本文化を体験する

要文化財「宸殿」では、さまざまな日本文化を体験するという取り組みもされています。座禅はもとより、茶道、投扇興など、この「宸殿」内で体験できるのです(要予約)。この取り組みをはじめたきっかけを副住職の山上進道さんがお話ししてくれました。「檀家の方のたっての願いで、宸殿で結婚式を執り行うということがありました。そのときの宸殿のあまりの美しさに私たちが驚いたのです。参拝してくださる方々にもこの感動をお伝えしたくて、日本文化体験をこの宸殿で行うことにしました」。


重要文化財「宸殿」(写真上)投扇興、座禅、茶道など「宸殿」内で体験できる。外に目を移せばそこは「三井の名庭」という贅沢な環境。指導してくれる先生方がいるので気軽に体験できる(要予約)

いま再発見されている大津絵を一堂に
大津絵美術館も併設

満院門跡には、大津絵美術館も併設されています。仏画をメインにしたもの、ユーモアと風刺の効いたものなど、江戸時代の庶民から愛された大津絵のコレクションは見応えがあります。近年、大津絵は注目され、国内外のコレクターや研究者も多く訪れるそうです。大津絵美術館のほか、宿泊施設、研修施設も併設している開かれた寺院。現代人にとって、この静けさに身を置くことは至福です。


江戸時代中期を代表する絵師、円山応挙の作品も展示。応挙は圓満院門跡の後援を受けており、圓満院に住んでいたこともある。(写真左)大津絵以外にも、菓子作りには欠かせない型も多く収集、展示している。古い菓子の型は大変貴重なもの。「天皇家へ参内する際、お菓子を献上していました。そのため、菓子作りの型も寺には多く残っています」と山上さん。(写真右)

素朴さと詩情が味わい深い、大津絵になごむ


初めて見る大津絵は、素朴な色合いと大胆な線、ユーモラスなモチーフが楽しい。大津絵の起源は江戸時代初期。 「大津絵の筆のはじめは何仏」、この有名な芭蕉の句から大津絵と呼ばれるようになったといわれる。元来は主に仏画が描かれ、元禄時代「大津絵十種」として絵種を絞り、護符とされていた。「大津絵道成寺」「傾城反魂香」など歌舞伎にも取り上げられるほど、江戸時代を通じて人気があった。大津絵十種の絵種には、それぞれ護符としての意味があり、たとえば「鬼の寒念仏」は小児の夜泣きを止め悪魔を払うこと。(写真左)「藤娘」は愛嬌が加わり良縁を得ること。(写真右)

等神社、三井寺へと続く参道の途中に、風情のある店構えの「大津絵の店」はあります。店内にはさまざまな大津絵がずらり。緑や朱色、黄土色などの素朴な色調に、大胆な筆致が特徴的です。描かれるのは鬼や猿、寿老人などのユーモラスなもの、藤娘や鷹匠などのモチーフも目を引きます。店舗の奥では、5代目高橋松山さんがひとり、筆を執っていました。江戸時代、旅人のお土産品として人気があった大津絵。「浮世絵とは異なり、役者絵や場所が判るような風景は描きません。特に江戸時代はお土産ものでしたから、全国どこへ持って帰ってもわかることが必要だったのでしょう。ユーモラスに描かれている鬼や猿は、人間への戒めや、風刺のメッセージも込められています」と高橋さんが説明してくれました。


いまではポストカードや短冊、陶器などバリエーションも豊富。(写真左)店舗の奥は高橋さんの工房。大津絵は泥絵具を使用して描かれる。いまも昔も、ユーモラスな表情の鬼や猿の絵に人気がある。(写真右)

大津はかつて、大津百町といわれるほど栄えた城下町でした。その情緒と発酵グルメを楽しむ企画「おおつ百町発酵めぐり」が1130日まで開催されています。「おおつ百町発酵お試し券」1,000円を購入してスタート。  造り酒屋の平井商店での日本酒テイスティング、鮒ずし専門店の阪本屋で鮒ずしを使った新感覚のスープを試食、そして宮内省御用達の漬物店・八百与では名物・ながら漬のお土産をご用意。発酵食品を扱う大津の老舗3店舗を巡ることができます。大津の街歩きと発酵食を堪能してください。

 
 ■本山圓満院門跡
滋賀県大津市園城寺町33
TEL:077-522-3690
https://enman-inn.com/

 ■本山圓満院門跡 大津絵美術館
滋賀県大津市園城寺町33
TEL:077-522-3690
開館時間: 9:00~16:30(年中無休)
入館料: 大人500円 高校生300円 中学生以下、障がい者無料。
https://enman-inn.com/about/museum/

※美術館入館料で「宸殿」「三井の名庭」の拝観も含む。茶道、座禅、投扇興の日本文化体験プランは各4,800円(要予約)。英語、フランス語での対応可(要問合せ)。宿坊「三蜜殿」もあり、宿泊者は朝のお勤めに参加できる。11,800円(夕朝食付き)。

■大津絵の店
大津市三井寺町3-38
TEL: 077-524-5656
http://www.otsue.jp/

■おおつ百町発酵めぐり
(公社)びわ湖大津観光協会
http://www.otsu.or.jp/

「おおつ百町醗酵おためし券」1,000円を大津駅、石山駅、堅田駅前の各観光案内所で購入。平日、土曜日のみ。11月30日まで。

 
写真左から、おおつ百町醗酵おためし券1000円を購入後、町歩きをスタート。平井商店では、平井弘子さんから仕込みのお話しなど聞きながらテイスティング。八百与は長年皇室御用達の漬物店からは名物のながら漬をおみやげに。賜った賞状や書簡から歴史を物語る6代目の小倉与七郎さん。鮒ずしの老舗・阪本屋の内田健一郎さん。鮒ずしの新しい楽しみ方として店頭でスープの試食を。

 

取材、文/千祥 写真/平林義章 写真提供/本山圓満院門跡、大津絵の店