ヨーガンならどう楽しむ?
思いをつなげる、夏のアイテム
ババグーリには、世界から集めた手仕事の技と知恵が込められたライフスタイルを彩るアイテムがそろう。日本の季節を慈しんで暮らしたヨーガン レールの思いがそこに、ある。
「私が撮ったババグーリ本店の写真をちらりと見て、友人は『ヨーガンの部屋の写真?』と尋ねました。ごく親しい友人ですから、私の部屋もよく知っています。ですから私は、『ちがう、これはお店の写真ですよ』と否定しながらも、内心では、もしそう見えたなら、このお店づくりは成功していると感じました」(『ヨーガン レールとババグーリを探しにいく 大切なもの、美しいもの、使えるもの』2009年刊 PHP研究所)
明るい陽射しがたっぷりとはいる、ババグーリ清澄本店の一角。装うことを中心に、ヨーガンが目指したていねいなライフスタイルに触れることができる場所。
2006年にブランドを立ち上げた時から、ヨーガン レール自身が本当に生活に取り入れたいと思ったものだけをババグーリでは扱ってきた。「沖縄県の石垣島にもう一つの拠点を置いていたこともあって、夏の暮らしのアイテムについては、いろいろな考えを持っていたようでした」と同社プレスの武安輝子は語る。
ビーチに打ち上げられたプラスチックゴミを拾い集めるヨーガン レール。沖縄・石垣島に住んだヨーガンは、年々増大するゴミをなんとかしなければと「The End of Civilization」という活動に取組んでいた。打ち上げられた膨大なプラスチックを拾い集め、照明を創作。没後の2015年東京都現代美術館の企画展「ここはだれの場所?」、2016年十和田市現代美術館「On the Beach ヨーガン レール 海からのメッセージ」、2017年金沢21世紀美術館「ヨーガン レール 文明の終わり」で展示された。Photography by Ayumi Tahara
移り住んだ石垣島に、ヨーガン レール農園も作った。時折、無農薬で育てられた農作物がババグーリ清澄本店に届く。この日は島バナナ。
生活を快適にする知恵は
沖縄での暮らしで学んだ
たとえば一年を通して湿度の高い沖縄では、プラスチックの収納ケースの中に入れた衣服は、すぐカビが生えてしまう。「そこで愛用したのが、アジア各地に伝わる植物で編んだカゴでした」。フルナやリード、エレファントグラスなどの水草、また天日干しをしたベチバーという草の葉、竹などを編んだ大きさも用途もさまざなカゴ製品は、現在もババグーリの人気アイテムだという。また天然素材で編んだ寝ござは、「シーツの上に敷くと、体との間に空気が通るので寝苦しさをやわらげてくれるんですよ。これもヨーガンが沖縄の暮らしで取り入れていた工夫です」と教えてくれた。
これからの季節に活躍する天然素材のアイテムとして、吸水性と速乾性にすぐれ、汗をかいても蒸れにくいリネンブレードやペーパーブレードの帽子もある。細いひも状になった麻や和紙を手がけのミシンでくるくると螺旋を描くように縫い上げるには、熟練の職人技が必要とのこと。頭頂部のとんがりなど手作りならではのデザインも愛らしく、やわらかな仕上がりのためつばを折り返すなどのアレンジもできる。
細い紐状になった和紙を手がけのミシンで繊細に縫い上げた、ペーパーブレードの帽子。かぶるとふんわりと軽く、しっくりと頭になじんでくれる感触がうれしい。24,840円(税込)
夏の帽子はババグーリの定番アイテム。汗をかいても蒸れにくい素材を使い、さわやかに過ごす知恵で作られている。帽子22,680円(税込)~。
マダガスカルのラフィアのバッグ、モロッコの椰子のカゴ、ブルキナファソの水草で編んだバッグなど、紅茶やコーヒーなどで染めた夏の装いを楽しくしてくれるバッグもそろう。6,264円(税込)~
夏に活躍するアイテムとしては、鉄の蚊遣りも面白い。「もとは事務所で使う丈夫で美しいテープカッターが欲しいと考えたヨーガン レールが、南部鉄器の職人さんの工房で作ってもらったのがきっかけでした。商品化したところ好評で、蚊取り線香を入れる重厚な蚊遣りも作ったのです」と武は語る。その後、軽くて持ち運びのできるタイプが欲しいという声に応じて、マダガスカルで薄い鉄の板を薄く加工し、鉄のドラム缶をリサイクルして表面を焼いた黒鉄のシリーズも生まれた。蓋に開けた穴から、立ち上っていく煙も美しいとのこと。持ち運びができるので、夏の夜にベランダで口開けの一杯をといったシーンにも合いそうだ。
ヨーガンの思いを形にした南部鉄器のテープカッターと蚊遣り。機能的で長く使え、そして美しい。テープカッター 19,440円 蚊遣り 17,280円(ともに税込)
見た目よりも軽量で、使いやすい黒鉄の蚊遣り。蚊取り線香の煙が立ち上る様子も風情がある。黒鉄の蚊遣り8,100円(税込)
ヨーガン レールは2014年に不慮の事故で急逝しているが、「いつもと変わらず『いってきます』と出かけて行ったので、今もひょっこり帰ってくるような気がします。ですから新しいデザインを出すときも、常にヨーガンから見られているという意識でデザイナーやプランナーは考えているようです」と、武は微笑みながら教えてくれた。たとえば、ヨーガン レールが木の実など自然にあるものの形を写して作ったテーブルウェアのシリーズ。定番の白釉や灰青に加えて、今年は瑠璃磁のシリーズが登場した。沖縄の海を思わせるような涼しげな青色の食器に、彼はどんな評価をしただろう。夏の食卓では、どんな料理や食材と合わせるだろうか。そんな想像をしながら手に取ってみるのも面白い。
ヨーガンの視点が生かされた食器。これは木の実など、自然のかたちを写したシリーズ。均一なサイズで作られた通常の食器とは異なり、手にしたときにやさしい丸みを感じる。定番の白マット釉、灰釉マット釉薬、飴釉に加えて、今年は深い青色の瑠璃釉シリーズが仲間入りした。小皿1,620円(税込)~
インド産のコットンをていねいに手紡ぎで糸に仕上げ、手織りで織られたタオル。手紡ぎ糸は、表面は柔らかく肌にやさしい。ハンドタオル2,700円~、フェイスタオル4,320円~、バスタオル9,288円~(すべて税込)
自然に抗うよりも、その厳しさをいったん受けとめて、どうしたらそれを快適に楽しめるかを考える。そのヒントを、伝統の技や知恵に求める。考えるだけでも鬱々としそうな夏の到来を、ささやかながら喜びに変えられるヒントを店内のあちこちから見つけられた気がした。
(敬称略)
ヨーガン レール Jurgen Lehl
デザイナー
1944年生まれ。パリでテキスタイルを学び、71年に来日、72年「ヨーガンレール」を立ち上げる。自然と向き合うことから目をそらさない服作り、そしてライフスタイルの提案で人気ブランドとなる。「ババグーリ」も彼のフィロソフィーを強く反映したもの。2014年没。
babaghuri ババグーリ
自然と共に暮らし、慈しんだデザイナー、ヨーガン レール。ババグーリは、着るもの、食べるもの、そして生活に必要なものすべてが、自然を破壊せず調和し、自然へと還る道筋をたどるものだけを提供していきたいと考えたヨーガンのフィロソフィーがオリジンとなったブランド。2014年に急逝したのちも、その衣鉢は受け継がれ、多くのファンをもつ。
ババグーリ清澄本店
https://jurgen-lehl-for-babaghuri-jp.tumblr.com/
公式インスタグラム
https://www.instagram.com/babaghuri/
Text by Mary Yamada
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