株式会社アマナ社長 進藤博信氏

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2018.5.11

日本のプレミアムに取り組む企業 
株式会社アマナ社長 進藤博信氏インタビュー

広告写真制作会社から、コンテンツ・パートナーへ

「アマナ」という企業を、意識されたことがあるでしょうか。人によってはフォトストックの会社というイメージをお持ちかもしれません。しかし実は現在同社は、写真素材の貸し出しだけではなく、広告制作や商品プロモーション、イベント、商品開発、出版など、幅広い事業を展開するグループ企業です。

 

最近で言えば、ある企業のフィットネス事業サービスとその結果を、インパクトのある映像で表現したTVCMシリーズを制作。また、乳業メーカーが新業態として手がけた飲食店では、ネーミング、レシピ開発、プロモーションまでトータルにサポートするなど、縦横無尽にその活躍の場を広げています。知らぬ間に私達は、アマナが作った多くの制作物に触れているようです。ではビジュアルを主体としたコンテンツ・パートナーを標榜するアマナとは、どんな会社なのか。創業者で社長の進藤博信さんにお話をうかがいました。

「我々のビジネスは、今、大きく2つに分けられます。ひとつはビジュアルの企画制作、つまりコンテンツのパーツ制作。もうひとつはコンテンツそのものの提供です。弊社は1979年創業。もともと僕自身がフォトグラファーで、広告写真制作会社として起業しました。ストックフォト事業を始めたのは、起業後8年ほど経ってからです」。

 

写真からスタートしたアマナ(起業当時はアーバンパブリシティ。その後、社名をイマ、そしてアマナへと変更)は、CGや動画をも手がけるようになります。前述した通り、現在はイベントや店舗開発も受注。そのアウトプットは、二次元から三次元、さらには四次元へと変化を遂げています。「写真が原点ですが、そこに留まっていてはダメだ。では我々のビジネスは、どう人々の役に立つべきなのか。そう考えたときに、『ビジュアル・コミュニケーション』で人々の役に立ちたいのではないかと、比較的早い時期に気がついたのです」。

 

全社員が共有する「鉄道王の失敗」による教訓

進藤さんは新卒、中途問わず、必ず社員に直接する話があると言います。それは「鉄道王の失敗」による教訓です。アメリカ東海岸の鉄道王が自分のミッションを大陸横断鉄道の実現と考え、それを20年かけて実現するものの、翌年に倒産。“鉄道というメディア”にこだわりすぎた鉄道王は、「時代の変化に対応できなかった」リアルなモデルケースなのです。「この話から学ぶべきは、『ビジネスは、時代と共に』ということです。大陸を横断するためには、バスでもクルマでも飛行機でもよかった。鉄道王が本来こだわるべきは“輸送”であって、“ツール”じゃなかったんですよ。だが鉄道に固執するあまり、時代の変化に対応できなかった。翻って我々の業態はコミュニケーション、つまり人と人との間に入るビジネスです。時代が変われば人は変わる、人が変われば僕らも変わらなくちゃいけないんです」。

 

そしてまた変化の速度も、重要だといいます。「後ろから追っかけると、つらいでしょう。だから時代の半歩前に出て、終始、時代を迎え入れる体勢を取るためには、しょっちゅう変わらなくちゃいけないのです」。その変化に対応するためには、組織は、チームワークを大切にしつつも、各フィールドプレーヤーが自主的に得点を重ねるサッカーチームであるべきだと進藤さんは言います。「私はサッカーから多くのことを学びました。学生時代のポジションは、ゲームを作るミッドフィルダー。野球のようにヒエラルキーが決まっている軍隊方式は性に合わないんですね。僕が右向け右と言ったら全員が右を向く、そんな会社は目指してないんです」。

 

進藤さん曰く、アマナのポリシーは「白線のマネジメント」。道路に白線がなければ交通事故が増えます。しかし白線があるところでは、運転者はそれによってマネジメントされているとは意識せず、「自分が注意して運転している」と考えるもの。企業としての大きな方向性を指し示しつつも、細かな積み上げ指示はしない。しかしアマナが目指すクオリティを肌身で感じさせれば、社員は自ずとそれに見合うものを生み出すと進藤さんは言います。

倉庫を改装し、その後も時代の変化に合わせて繰り返しリノベーションするオフィスの佇まいも、アマナが内外に示す方向性のひとつ。また、年間約2万件受託する案件のうち、現時点で約2000件の成功事例が検索できる社員専用ポータルサイト「akb(amana knowledge board)」、約1万2000の協力企業ならびにフリーランサーをデータベース化した「社内外クリエイター検索システム」を稼働。クライアントとのミーティングの場で、そのニーズに即時に対応するための環境づくりを着々と整えています。
「現在は、スマートフォンを活用した、クライアント満足度の高いコンテンツ制作環境を作ることにチャレンジしています。チームやクライアントとのスケジュール管理や打合せ情報の共有はもちろんのこと、打合せのその場ですぐにビジュアル素案が出せるデータベースや遠隔地にいるスタッフも含めてのバーチャル・ミーティング、AIを使ったモデル・キャスティング等を早期に実現し、ワークスタイルを変えていきたいですね」。

ここまで進藤さんが合理化、効率化に邁進するのには、深い理由があります。
「長年この仕事をして、気づいたんです。『伝える』と、『伝わる』は、まったく違うと。ビジュアル・コミュニケーション・コンテンツにおいて、『伝わる』とは、クライアントの思いを可視化させることです。しかし打合せではどうしても言葉が幅をきかす。日本語には一種、曖昧模糊とした難しい部分があります。言葉によるクライアントと制作側のイメージのギャップを減らしていくためには、どんどん仕組みを含めて変化していかねばならないのです」。日本語の向こうにある真なる『思い』をキャッチアップし、チームだからこその表現力を最大限活用して、クライアントやその先にいる消費者ら情報の受け手の五感に訴えかける。そのゴールに向けて、アマナは着々と策を立て、実行しているというわけです。

真なる『思い』を、ビジュアルで伝える

五感に訴えるという意味では、本社内に併設され一般にも開放されているギャラリーカフェ「IMA cafe」も、アマナらしいスペースです。カウンターには、NYのベンチャー企業の手によるコーヒーロボットが一台。これが、正社員で社内唯一のコーヒー専業スタッフ・中川亮太さんのハンドドリップ技術を忠実に再現し、雑味のない清々しい味わいのコーヒーを提供してくれます。「中川は、日本に300人ほどしかいないアドバンスド・コーヒーマイスター資格保持者。すべて数値化された彼の技はマンハッタンにあるサーバにインプットされ、ロボットに指示が飛んでくる仕組みです。中川のメイン業務は、コーヒー豆の選択や来店者とのコミュニケーション。『思い』を可視化し、五感で感じてもらうためには、シチュエーションが非常に重要だと考えています。ですからここは、アマナの『思い』を立体化させたコンテンツ、こだわりの象徴のひとつなんです」。

会議室に掲げた「写真の原点」

またアマナでは、このようにビジュアル・コミュニケーションの可能性を押し広げていく一方で、「Living with photography」をコンセプトにアート写真を取り扱うIMA ギャラリーなど、スマホやパソコンで見るのとは違う、リアルな写真の力を伝える活動にも注力しています。「杉本博司さんの作品『前写真、時間記録装置』。化石を写したものなのですが、彼に言わせれば、これはプレフォトグラフィ、つまり写真以前の写真なんです。写真というのは、一瞬にして世の中を閉じこめるじゃないですか。化石は何億年も前から、一瞬にしてその瞬間を閉じこめるから、写真の祖先を繙いていくと化石にぶつかると。すごいでしょう、その考え方って。化石は、写真の原点。だから僕はこの写真を、社内で一番大きな会議室に掛けています」。

取り組みが多岐にわたっても、原点は写真

右脳と左脳の両方をバランスよく切り替えるサッカーをモデルに、アートとサイエンスの間を行き来しながら、新しいビジネスを切り拓き続けるアマナですが、根っこがぶれることは決してない。そう、進藤さんはおっしゃりたいのかもしれません。

 

 

 

※この記事に記載されている内容、情報は公開当時のものとなります。

<プロフィール>

進藤博信(しんどう・ひろのぶ)

1951年、東京都生まれ。1977年、フリーランスのフォトグラファーを経て、1979年、アマナの前身となる広告写真制作会社、アーバンパブリシティ株式会社を設立。1987年にはストックフォト事業を開始。以降、デジタル化を急速に進め、動画やCG制作、コンテンツ制作なども取り扱う総合ビジュアルコミュニケーションカンパニーへと成長させた。
http://amana.jp/


インタビュー 島村美緒 文 木原美芽

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