株式会社ギンザのサヱグサ 代表取締役社長 三枝亮氏株式会社ギンザのサヱグサ 代表取締役社長 三枝亮氏

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2019.1.12

日本のプレミアムに取り組む企業 
株式会社ギンザのサヱグサ 代表取締役社長 三枝亮氏インタビュー

厳選したベビー&子ども服の販売を主軸とし、子どもたちのライフスタイルをトータルプロデュースする株式会社ギンザのサヱグサ。今回は代表取締役社長 三枝亮さんにお話をうかがいました。

150年前に唐物屋としてスタート

SAYEGUSA 銀座店ファサード SAYEGUSA 銀座店ファサード

SAYEGUSA 銀座店ファサード

東京・銀座4丁目と大阪・梅田に店舗を構える「SAYEGUSA」は、オリジナルからヨーロッパのインポートブランドまで、上質な子ども服を揃えるセレクトショップ。1869 年(明治2年)の創業以来、今年で150 周年を迎えますが、当初は唐物屋としてスタートしました。一体どんな商品を扱っていたのでしょうか?

 

「創業年の1869年は明治維新の翌年で、ちょうど横浜港を通じて海外から公式に物が入ってくるようになった頃でした。当時はまだちょんまげを結って刀を指している人たちが歩いていた時代ですから、輸入品というだけでイノベーティブだったようです。そんなご時世に当社が扱っていた輸入品は、実に様々だったようです。唐物屋というのは、いわゆる輸入雑貨商のこと。明治屋さんや丸善さんも唐物屋としてスタートした企業ですが、それぞれ食品や本に特化し、当社は、特に毛糸と洋装品に力を入れて商事化したというわけです」

 

2階全体(写真左)3階全体(写真右) 2階全体(写真左)3階全体(写真右)

2階全体(写真左)3階全体(写真右)

明治初めに子ども服を強化

明治時代初期、輸入品は横浜港から海や川を利用して運ばれていたため、初代が創業地として選んだのは水運の利の良い築地の外国人居留地でした。その後、銀座に進出したのは1875年(明治8年)。明治の終わりには主力商品は毛糸から婦人服・子ども服や洋装品となっていましたが、昭和の初め、2代目の時代に子ども服事業を強化します。

 

「2代目はジャージー素材の動きやすさに着目し、子どもにとっても動きやすいだろうと、昭和7年、子ども服に初めてウール100%のジャージー素材を使用し、サヱグサの代名詞となったスモックワンピースを販売しました。それがきっかけで、子ども服をメイン事業とするようになったと聞いています」

 

SAYEGUSA GREEN PROJECT 〜豊かな地球を子どもたちへ〜

GREEN MAGIC(キャンプ) GREEN MAGIC(キャンプ)

GREEN MAGIC(キャンプ)

ギンザのサヱグサは昭和2年以来、日本の子どもたちに装いの文化を提案し続けてきましたが、最近はよりソーシャルでサスティナブルな企業となることを目指し、子どもたちの成長に役立てるプロジェクトも計画中。そのひとつが現社長就任の2012年にスタートした環境・社会活動「SAYEGUSA GREEN PROJECT」です。

 

「具体的な活動内容としては、子ども向けの自然体験キャンププログラム “GREEN MAGIC”をはじめ、ワークショップの開催、再生可能エネルギーへの切り替え、サイトでの情報発信などを行っています。“GREEN MAGIC”を始めたのは、子ども服を通じて日々子どもたちと接する中で、都心部の子どもたちの自然体験不足を実感したのがきっかけでした。そこで自然の中で遊びを体験できる場を作りたいと思い、年4回、キャンプイベントを始めたのです。キャンプの開催地を探していて出会った長野県最北端の里山・栄村小滝の人々とは、何度も訪問を重ねるうちに絆も生まれ、新しいプロジェクトも成功しています」

 

小滝米のリブランデイング

image:コタキホワイトギフトボトル image:コタキホワイトギフトボトル

image:コタキホワイトギフトボトル

“GREEN MAGIC”がきっかけで生まれた新しいプロジェクトとは、栄村小滝特産のコシヒカリ「小滝米」のプロデュース販売事業のこと。三枝さんがキャンプの開催地を探していた2014年、長野県北部地震で被災し、7割が壊滅的な被害を受けた田んぼが奇跡的な復活をとげた栄村小滝と出会いました。三枝さんは過酷な状況に負けず、明るく懸命に300年後を見据えた復興活動に取り組む集落の人々の姿勢に共感し、小滝米のブランディングに取り組むことにしたのです。そして2015年、小滝米はワインボトルに入り「コタキホワイト」と名付けられ販売がスタートしました。

 

「小滝はわずか13世帯35人の小さな集落ですが、そこには千曲川の清流、棚田、民家という、日本の里山の風景があります。この集落の1番の仕事である米作りを販売の面でサポートし、経済が好転すれば、日本の風景である里山の風景を残すことができ、子どもたちの学びの場を残すことにつながる。交流人口が増えエリアが活気づけば、過疎の抑止にもつながります。そんな思いから、新規事業部を立ち上げ、小滝米に関わるようになりました」

 

環境省グッドライフアワード

小滝全景 小滝全景

小滝全景

ギンザのサヱグサの環境・社会活動「SAYEGUSA GREEN PROJECT」を通じて始まった、小滝米「コタキホワイト」の販売事業は、昨年、第6回環境省グッドライフアワードの環境大臣賞(企業部門)を受賞。お米を通じて里山の新たな価値を見出した取り組みが、高く評価されました。「栄村小滝は新潟県南魚沼に隣接する米どころとあり、小滝米の美味しさは昔から知られていました。もともと作付け量が少ないためほぼ地元で消費されていたのですが、復興支援と里山継承の目的で弊社がパッケージを工夫し、希少米としてサイトでの販売を行なっています。小滝と弊社が、里山継承という志を共にしてパートナーシップを築けたことも、評価された理由ではないでしょうか。今後も小滝の方々と共に、できることをひとつずつ積み重ねていきたいですね。明日の売り上げだけでなく、10年、30年、200年先を見据えた長期目線を持つことも、老舗として大切なことだと思うのです」 ※コタキホワイトwebサイト:http://kotakirice.jp/

grow with BOOKS

image: grow with BOOKS image: grow with BOOKS

image: grow with BOOKS

ベビー&子ども服以外にも、様々なプロジェクトにチャレンジしているギンザのサヱグサですが、活動の基本哲学は子どもの成長に役立つこと。その一環として、2017年10月には『grow with BOOKS』と題したブックプロジェクトをスタートしました。『grow with BOOKS』は、サヱグサの店内にある小さな本屋さん。ブックディレクターの幅允孝さんを選書のパートナーに迎え、年間75,000冊以上も発行されている本の中から、子どもたちの感性を刺激し、大人も一緒に楽しめる本を厳選して揃えています。

 

「『grow with BOOKS』は、本を通じて子どもの感性を育む場を提供したいと思って始めたこと。絵本・童話はもちろん、写真集やグラフィックに優れたものなどさまざまな本を揃えています。子どもというのは親の背中を見て育つものですが、我が身を振り返ると、商人だった親の背中を見てきたため、将来音楽家やスポーツ選手、職人になろうという選択肢を持つことができませんでした。子どもが将来を選択する場面になった時、何か感性を刺激されるような経験が少なければ選択肢が限られてしまいます。日本の教育システムには将来を選択するための気づきや体験を与えてあげる取組みが足りないと思うので、私は子どもたちが意思決定する時に役立つような引き出しを広げてあげたいと思っているんです」

子どもの感性を育む体験を提供

こどもたちの音楽アトリエ(参加型コンサート) ©︎teamMiura こどもたちの音楽アトリエ(参加型コンサート) ©︎teamMiura

こどもたちの音楽アトリエ(参加型コンサート) ©︎teamMiura

創業150年の節目を迎える今年は、子どもたちに本物の音楽体験をさせてあげたいと、ゴールデンウィークに有楽町・国際フォーラムで3日間開催される音楽イベント「ラ・フォル・ジュルネ(La Folle Journée)」に参加。有料公演の半券で参加できる「子どもたちの音楽アトリエ」という参加型ワークショップの枠のひとつをサヱグサがスポンサードし、企画から携わる。

 

「ラ・フォル・ジュルネの今年のテーマである『ボヤージュ』に関係するクラシック楽曲を盆踊りバージョンにアレンジし、事前のワークショップでオリジナル楽曲を練習した子どもたちが、音楽家たちと一緒に大合奏、そのまわりを子どもも大人も一緒になって踊るというイベントです。プログラム名は『フォル盆 キッズバンド』。楽曲作りや振り付けには、子ども達も参加します」プロの音楽家と一緒に楽曲を作るなんて子どもにはハードルが高いと思うかもしれないが、「世間は子供を子供扱いしすぎ。子どもは大人の想像を超える能力や感性を持っている。」というのが、三枝さんの持論。これからも子どもたちが“本物”の文化を体験できる場を作っていきたいと考えているそうです。

0歳児からのコンサート ふれあいのシーン 0歳児からのコンサート ふれあいのシーン

0歳児からのコンサート ふれあいのシーン

プロの音楽家と一緒に楽曲を作るなんて子どもにはハードルが高いと思うかもしれないが、「世間は子供を子供扱いしすぎ。子どもは大人の想像を超える能力や感性を持っている。」というのが、三枝さんの持論。これからも子どもたちが“本物”の文化を体験できる場を作っていきたいと考えているそうです。

 

「銀座はたくさんの流行が生まれ、たくさんのカルチャーが生み出されてきた街。この特別な街で、私たちは事業の核である“子ども”というキーワードを、“未来への希望”と捉え直し、この街を見つめ続けてきました。創業150周年という節目を迎え、これからもファッションという分野に特別なこだわりを持ちながら、未来へ向かって持続可能な社会を実現するための「あたらしい」ことを積み重ねていきたい。ひとつひとつは小さくても、その先へと広がるのは、子どもたちの無限の可能性です」

 

※この記事に記載されている内容、情報は公開当時のものとなります。

プロフィール
三枝亮(さえぐさ りょう)
株式会社ギンザのサヱグサ 代表取締役社長

1869年創業の子ども服の名店、ギンザのサヱグサ5代目社長。慶應義塾大学卒業後、銀行勤務を経て、2012年に家業であるギンザのサヱグサの経営を継ぐ。2017年4月に銀座店を銀座4丁目に移転。子どもたちに本物に触れる機会を作るため、自ら様々なプロジェクトを企画している。銀座を牽引する旦那衆のひとりとして町内会の活動にも携わる。

https://www.sayegusa.com

取材/島村美緒(プレミアムジャパン)、文/小松めぐみ、写真(人)/山村隆彦

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