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泉州タオルが醸成する歴史と新たな挑戦

2022.2.28

泉州タオルの水を想い、暮らしに寄り添うモノづくり



常に身近にあるからこそ、背景や成り立ちに気づくことのないタオル。その状況を払拭すべく、唯一無二のこだわりを日本へ、そして世界へ伝えようと動き始めたのが、大阪の南西部に位置する泉州の伝統産業である泉州タオル。目指すステージへと仕掛けた、新たな挑戦を紹介する。



歩んできたのは、知られざる日本のタオルの歴史

 

キッチンで料理を仕上げた手をぬぐう時、バスルームでそのぬくもりに包まれる時、あるいは公園やスタジアムで熱い汗と涙を受けとめる時…私達の生活シーンにおいて、どんな時もすぐそこにあるタオル。今は誰もが当たり前のように使っているアイテムゆえ、日本のどこでいつ生まれたのかを知る人は少ないのではないだろうか。

 

歴史を紐解けば、日本に初めてイギリスからタオルが輸入されたのは1872年、明治初期のこと。その15年後、当時綿織物の産地として知られていた大阪・泉州地域で、里井圓治郎がタオル織機を開発し生産に成功。これが初の国産タオルの誕生となる。以来130年以上に渡り、日本のタオルの歴史とともに歩んできたのが泉州タオルだ。

 

最盛期は700社近くあった泉州地域のタオル製造も、安価な輸入タオルの台頭により現在は80社となった。それでも国産品は2%と言われるアパレルをはじめとした繊維業界の中で、タオルは現在も国産比率は20%を超えている。毎日使うものだからこそ、国産タオルのクオリティを誰しもが認めているのは、その数字をみれば明らかだ。

 



泉州タオル 泉州タオル

適度な厚みで扱いやすく、現代のライフスタイルにマッチする。



泉州タオルの特徴は“よく吸い、よく乾く”。歴史と製法がその源

 

日本のタオルのルーツである泉州タオルの大きな特徴は“後ざらし”という製法にある。

 

“さらし(晒し)”とは、綿の油分や不純物を洗い落とし漂白する作業のことだが、今治などで行われている先ざらし製法では、素材である生糸の状態でまず一度さらす。その後、染色をし、さらに糸の強度を高め、織りやすくするため糸を糊付けしてから織る。最後に織り上がった生地を洗い、糊抜きをし、仕上げる。

 

一方泉州タオルが行うのが、生糸をそのまま糊付けして織った後に、生地の状態でさらす“後ざらし”製法だ。その良さは、なんといっても吸水性の高さ。糊や綿の油分や不純物を最後にしっかり洗い落とし仕上げるので、おろしたてから高い吸水性を持つ。

 

またさらしていない生糸は、天然の油分が残り水を吸わない状態のため、糊がつくのは表面のみ。先ざらしと比べ深部にまで糊が入らず、晒し工程は1回で済むため、使用水量も減らすことができる。そして何より工程を経ても、織りあがった後の最終工程で晒しを行うので、綿の吸水性を最大限に生かすことができ、やさしい肌触りとなるのだ。

 

 

「かつて泉州で多く作られていたのが、日常で使う日本手ぬぐいです。生産が手ぬぐいからタオルに変わっても、作るのは普段の暮らしで誰もが使いやすい製品を目指しています」と教えてくれたのは大阪タオル工業組合理事長・金野泰之氏。ゆえにただ厚さを追い求めるのではなく、例えば絞る時も扱いやすい適度な厚さのタオルが多く、水を含んでも重さを感じず乾きやすいという特性も。まさにこの地の歴史が、“よく吸い、よく乾く”泉州タオルのスタイルの源になっているのだ。



泉州タオル 泉州タオル

洗濯しても乾きやすいのが特徴。スタイリッシュな色使いも毎日を楽しくする。



よく水を吸う よく水を吸う

よく水を吸うから使いやすく、かさばらないので収納にも便利だ。



泉州タオル 泉州タオル

タオルは家族が毎日使うもの。だからこそ吟味したい。


モノづくりは豊かな自然とともに

 

泉州タオルにとって無くてはならない要素、それが豊富な水だ。さらしをはじめ、実はタオルの製造工程には大量の水が必要となる。常時きれいな水が豊富に供給できなければ、生産は不可能だ。幸いにも泉州地域には、和泉山脈を水源とする地下水が豊富に存在しており、130年枯れることなく湧きだすきれいな水が、まさに泉州タオルを支え続けている。

 

 

そんな自然の恩恵とともにある泉州タオルは、SDGsという考え方でも注目されている。後ざらし製法は工程が少ないため、水やエネルギーの使用量も抑えることができ、また大量に排出される水も、より高い基準を設けて濾過処理を実施。水の大切さを知っているからこそ、常に自然とともにあることを忘れず、環境に最大限に配慮したモノづくりを行っている。



水をまもり水とつくる、その想いを世界に

 

そんな知られざる泉州タオルの魅力を伝えようと、現在新たなプロジェクトが始動。日吉屋Claft-labの西堀耕太郎氏をプロジェクト・プロデューサーに、森田明奈氏がクリエイティブディレクションを担当し、2025年の大阪万博に向け「グローバル市場でも認知される日本を代表するタオルブランドになる」ことを目指す。そのプロジェクト第一弾となるのが、泉州タオルの製造メーカー 13社による新たなブランド「水とともに生きる 泉州タオル」の発表だ。このブランド名に泉州タオルの特徴、製法、そして環境に対する想いが込められている。

 

「ブランドロゴの“泉”の文字が表すように、無垢のような白いタオル造りを水が支えているのが泉州タオル。人の生活の一番身近にあるタオルのあるべき姿を形にしました」(クリエイティブディレクター森田氏)

 

後ざらし製法の場合、派手な柄を織り込むことはできないが「だからこそ、タオルの本質が見えてきた」という森田氏の言葉のように「水とともに生きる 泉州タオル」ブランド商品は、オフホワイト、アクア、ブルー、ネイビーの4つのカラーが基調。13社の組合会員企業によってハンカチタオル、ハンドタオル、フェイスタオル、スモールバスタオル、バスタオル、バスマットなどの多様な商品群を展開する。水をイメージした色をベースにステッチを施したり、緯糸に異なる糸を織り込み色の淡さを表現したりと、そのどれもがシンプルで上質なデザインだ。

 

収納や洗濯のしやすさも考えたスモールバスタオルなど、これまでにはないサイズ展開もあり、日常に馴染み、ずっと使い続けたくなる商品が揃う。3月中旬より大阪を皮切りに、各地でポップアップショップも開催予定。泉州タオルのサイトでECもスタートする。



泉州タオル 泉州タオル

スタイリッシュなオフホワイト、アクア、ブルー、ネイビーの4つのブランドカラーで展開する。


泉州タオル 泉州タオル

ヘムにカラーをあしらったり、アクセントを楽しむ。


泉州タオル ブランドロゴ 泉州タオル ブランドロゴ

水とともに生きる 泉州タオルのブランドロゴ。



「決して華美ではないですが、毎日の生活の中で使って初めてその心地よさに気づく。それが泉州タオルだと思います」(金野理事長)

 

大阪タオル工業組合は今後、水源保護を支持する立場から、公益財団法人日本ユニセフ協会への寄付を行い、また、大阪府の森林を守る活動団体への寄付も現在進めており、「水とともに生きる 泉州タオル」ブランドネーム1枚につき3円の寄付を予定している。名実ともに、環境への配慮をおこたらない姿勢に共感する人も多いだろう。

 

製法も肌触りも、誰もの暮らしに寄り添い続ける泉州タオル。その新たなスタートはこの春始まる。心地よさの奥に紡がれた、水を守り水とつくるタオルのストーリーを、ぜひ感じてみて欲しい。


Text by Yukiko Ushimaru

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