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充実した子育て支援制度を誇る石川県小松市

2024.2.25

子育てダントツ宣言都市、小松市へ。金継士・中岡さん家族の実体験レポート

石川県小松市で活躍する金継士を支える、
充実した子育て支援制度

 

北陸新幹線敦賀延伸に伴い、新幹線が停まる都市として新たな注目を集めている石川県小松市。小松空港、あるいは世界企業の「小松製作所」の存在で、これまで主に知られてきた小松市は、実は子育て支援と移住に対して、行政自らが積極的な支援を行っている市でもある。





小松市移住のきっかけは、「金継」に魅せられて

 

2歳になる悠杏(ゆあん)ちゃんの母・中岡庸子さんと、父・浅井耕平さんも、県外から小松市に移住し、子育てをしながら、それぞれが小松市で働いている。春の兆しがわずかに感じられるようになった2月初旬、小松市に中岡さんを訪ねた。

 

中岡さんの職場は、「九谷セラミック・ラボラトリー」。石川県の伝統産業である九谷焼を作るプロセスを見学、体験することができるスペースに加え、若手作家の育成を目的としたレンタル工房などの機能も備えた複合ミュージアムだ。地元の人が親しみを込めて「セラボクタニ」と呼ぶこの施設で、中岡さんは施設の運営全般と、金継(きんつぎ)に携わる。





亀裂の入った染付の大皿に中岡さんが金継を施した。最近では、金継をした器が持つ魅力が見直され、趣味として始める人も多い。 ⒸJunko Ueda 亀裂の入った染付の大皿に中岡さんが金継を施した。最近では、金継をした器が持つ魅力が見直され、趣味として始める人も多い。 ⒸJunko Ueda

亀裂の入った染付の大皿に中岡さんが金継を施した。最近では、金継をした器が持つ魅力が見直され、趣味として始める人も多い。 Junko Ueda




金継とは。漆を用いて欠けた陶磁器を修復する技術のこと。伝統技法の蒔絵に魅入られ芸術大学で学び、さらに修復の道を進むため石川県加賀市の蒔絵職人のもとに弟子入りしたことが、後々の小松への移住につながった。移住先で、建築家の浅井耕平さんと出会い結婚、悠杏ちゃんを授かった。




「赤ちゃん紙おむつ定期便」と、先輩ママからのアドバイス

 

「二人とも最初はとても不安でした。知り合いもそれほどいませんでしたし。でも、友人たちを含め周囲の方々がとても親切で、とくに具体的なアドバイスをくださる先輩ママさんたちがとても頼りになりました」

 

 

こうした、人と人との温かい繋がりに加え、市が整備した支援制度に助けられたと中岡さんは言う。そのひとつが「赤ちゃん紙おむつ定期便」。生後3カ月から1歳の誕生月までの赤ちゃんを育てている家庭に、1カ月に1度無料で紙おむつが届けられる制度だ。




紙おむつを定期的に届けるスタッフが、育児に悩む母親を見守り、手助けする役割も担っている。 紙おむつを定期的に届けるスタッフが、育児に悩む母親を見守り、手助けする役割も担っている。

紙おむつを定期的に届けるスタッフが、育児に悩む母親を見守り、手助けする役割も担っている。




「無料でいただけるのも嬉しいのですが、届けてくださる方が先輩ママの場合が多く、いろいろな情報や、時には悩みを聞いていただきました。そのおかげで、自分たちだけでなく地域の方々が子育てを見守ってくださる、という安心感がありました」

 

 

この制度以外にも、母子手帳の交付を受けた妊婦に胎児一人あたり5万円の市独自の給付や、子どもの医療費助成、小中学校の給食費無償など、他の市町村と比べてもかなり高水準な支援制度が整っている。




都会では考えられない、保育園の充実ぶり

 

悠杏ちゃんの保育園通いが始まったときも、中岡さんは小松市の素晴らしさを感じた。

 

「保育園の選択肢がとても豊富なのです。しかもそれぞれの保育園の育児方針などの情報を詳しく知ることができ、私たちも希望する保育園に娘を入れることができました。都会で暮らしている同世代の友人ママたちは『信じられない』と言っていました」

 

 悠杏ちゃんの送り迎えは、自宅での仕事も多い浅井さんが主に担当。
「どうしても送り迎えができない時は、私の仕事場に連れていったこともありました。子連れ出勤です」




「九谷セラミック・ラボラトリー」では、子連れ出勤する中岡さんを温かく迎えてくれた。 「九谷セラミック・ラボラトリー」では、子連れ出勤する中岡さんを温かく迎えてくれた。

「九谷セラミック・ラボラトリー」では、子連れ出勤する中岡さんを温かく迎えてくれた。




普段は建築士の浅井さんが、悠杏ちゃんの送り迎え担当。浅井さんの仕事場は、自宅もしくは加賀市の事務所。 普段は建築士の浅井さんが、悠杏ちゃんの送り迎え担当。浅井さんの仕事場は、自宅もしくは加賀市の事務所。

普段は建築士の浅井さんが、悠杏ちゃんの送り迎え担当。浅井さんの仕事場は、自宅もしくは加賀市の事務所。




「小松市地域おこし協力隊」の一員としても活動

 

ここで、中岡さんの仕事について、少しく詳しく触れたい。中岡さんは、修得した金継の技術をいかし、「九谷セラミック・ラボラトリー」で、施設の運営全般のみならず金継教室も開催し、さらに金沢のギャラリーで金継を施した九谷焼に音楽と映像を組みあわせたインスタレーション展示を行うなど、幅広く活動を行っている。さらに「小松市地域おこし協力隊」の一員として、地域活性化にも関わっている。それだけに、イベントなどに出席しなければならない場合も多い。




「九谷セラミック・ラボラトリー」には、ギャラリーとショップも併設。展示作品の選定なども中岡さんに任されている。 ⒸJunko Ueda 「九谷セラミック・ラボラトリー」には、ギャラリーとショップも併設。展示作品の選定なども中岡さんに任されている。 ⒸJunko Ueda

「九谷セラミック・ラボラトリー」には、ギャラリーとショップも併設。展示作品の選定なども中岡さんに任されている。 ⒸJunko Ueda


「イベントにも子連れで参加したこともあります。私の手がどうしても離せないときは市役所のスタッフの方々に、代わる代わる娘を抱っこしていただきました。新生児のころもそうでしたが、本当に周囲の皆様が育ててくださっている、という気がします。そんな方々に囲まれていると、子育てで困った時は、甘えてもいいんだと思えるようになり、気が少し楽になりました」


「カブッキーランド」で思いっきり遊ぶ

 

小松市をはじめ、北陸一帯はお天気に恵まれた地域とは言い難い。とりわけ長い冬の間は好天の日が少ない。しかし、子どもが安心して遊ぶことができる室内施設が、じつは小松市には数多くある。それも、親にとっては大きな「支援」となる。

 

2歳を過ぎ、このところ一段と活発になった悠杏ちゃんも、そうした施設を存分に活用している。

 

「小松市は子ども向けの施設がとても多い場所。住んでみて初めてわかりました。いちばんよく行くのは、『カブッキーランド』と『空とこども絵本館』そして豊かな自然が残る『木場潟公園』です」

 

 

歌舞伎の演目、「勧進帳」の舞台となった安宅関の所在が小松市であることにその名を由来する「カブッキーランド」は、大型遊具や知育遊具などで子どもたちが思いっきり遊ぶことができる室内スペースだ。安全な玩具の輸入、開発、販売を手掛ける「ボーネルンド」がプロデュースし、玩具などを提供。子どもだけでなく親まで夢中になることができる。さらに、スタッフには保育士、栄養士、看護士などのスペシャリストが揃っているので、ここでも子育ての悩み相談を受けることができる。

 

 

「年間パスが保護者1600円、子ども2400円と驚くほど安く、それを買って月に2回くらいは行っています。上質なボーネルンドの玩具を、存分に楽しむことができます」




「カブッキーランド」で遊ぶ悠杏ちゃん。広々としたスペースで、「ボーネルンド」の玩具で思う存分遊ぶことができる。 「カブッキーランド」で遊ぶ悠杏ちゃん。広々としたスペースで、「ボーネルンド」の玩具で思う存分遊ぶことができる。

「カブッキーランド」で遊ぶ悠杏ちゃん。広々としたスペースで、「ボーネルンド」の玩具で思う存分遊ぶことができる。




『空とこども絵本館』は、子育ての悩みにも応えてくれる、心強い場所

 

 

『空とこども絵本館』は文字通り、子どものための絵本図書館。かつての警察署庁舎を改築した建物は、書架の高さや絵本読み聞かせ室の設置など、徹底的に子ども向けに考えて作られている。図書館としての機能だけでなく、乳幼児の親子連れでも気軽に利用できるようなさまざまな工夫がなされている。

 

 

「お湯の入ったポットや、流し台などの飲食可能なラウンジまで設けられ、哺乳瓶を持参してミルクをあげることもできます。スタッフの方々も、単に図書館のスタッフとしてだけでなく、子育てに関するいろいろな悩みを聞いていただけます。私自身、子育てで煮詰まったときは、よくここへ来ていました。娘が、一時期ご飯をあまり食べなくなったことがあり、そんな時はここへ来て『子どもがご飯を食べるようになる絵本ってありますか』とか尋ねたりもしました。少しずつ絵本の内容がわかりかけてきた今の娘にとっては、最大のお気に入りの場所です。

 

絵本館の1階は、大きなサイズの絵本を読む畳敷きの部屋と、自由に動きまわることができるフローリングのスペースが隣接。静寂な一般的な図書館とは大きく異なり、子どもの賑やかな笑い声が絶えない。




絵本の陳列スペースは主に2階。書架の高さも、子どもの背たけを考慮し、低めに抑えられている。ⒸJunko Ueda 絵本の陳列スペースは主に2階。書架の高さも、子どもの背たけを考慮し、低めに抑えられている。ⒸJunko Ueda

絵本の陳列スペースは主に2階。書架の高さも、子どもの背たけを考慮し、低めに抑えられている。ⒸJunko Ueda




普及版よりも大きなサイズの絵本が並ぶ書架。悠杏ちゃんの最近の お気に入りは、永遠の名作『もこ もこもこ』。 普及版よりも大きなサイズの絵本が並ぶ書架。悠杏ちゃんの最近の お気に入りは、永遠の名作『もこ もこもこ』。

普及版よりも大きなサイズの絵本が並ぶ書架。悠杏ちゃんの最近のお気に入りは、永遠の名作『もこ もこもこ』。




子育て支援の充実と、古き良き共同体のありがたさ

 

「赤ちゃん紙おむつ定期便」をはじめ、子どもの医療費助成、数多くの保育園、「カブッキーランド」……。子育てを支援する制度や、子どものための施設の充実ぶりに加え、「ようこそ小松・定住促進奨励金」や「小松二地域居住支援制度」など、現在の小松には県外からの移住を促進するさまざまな制度が整っている。こうした制度的な充実度ぶりに加え、日本海と白山という豊かな自然に囲まれ、足を延ばせばすぐに大自然に触れることができる環境と、小松空港や新幹線小松駅の存在、あるいはショッピングモールなどの都市機能的利便性。これらが、うまく噛みあったエリア、それが小松市といえるだろう。




お天気がよい休日には、豊かな自然が残る「木場潟公園」へ家族揃って出かける。 お天気がよい休日には、豊かな自然が残る「木場潟公園」へ家族揃って出かける。

お天気がよい休日には、豊かな自然が残る「木場潟公園」へ家族揃って出かける。




そして、何よりも忘れてならないのは、中岡さんが何度も口にしていた、人と人の繋がりだ。「赤ちゃん紙おむつ定期便」で、職場で、各施設で。中岡さんを助けたのは、人と人の繋がりだった。

 

「村や町に住む人の多くが顔見知りで、こちらが困っているときは何かと助けてくれる、昔の日本では普通だったかもしれない古き良き共同体。小松市に住んでいると、そんな共同体が持つありがたさのようなものを感じます」

 

何度も口にしていた中岡さんの表情は、どこまでも穏やかだった。

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