市販されている、本当に美味しい日本酒はどれか? 日本酒選びの基準にもなる日本酒品評会の一つである2024年度「SAKE COMPETITION(サケ・コンペティション)」の表彰式が6月12日に開催された。
飲み手の視線で選んだ、一度は味わいたい日本酒
2012年から始まったSAKE COMPETITIONは、「ブランドによらず消費者が本当に美味しい日本酒にもっと巡り会えるよう、新しい基準を示したい」という理念のもと、東京の酒販店らが中心となって、消費者に分かりやすく日本酒の魅力を伝えようとして企画された品評会であり、今年で10回目を迎えた。
審査対象は市販されている日本酒であり、それらの銘柄を完全に隠し、日本酒の酒質のみで競うことに徹底している。つまりはブランドや銘柄に左右されることなく、どんなブランドでも1位をとるチャンスがあるということである。
審査は「純米酒」「純米吟醸」「純米大吟醸」「Super Premium」部門に加え、「海外出品酒」部門を再開し全5部門で行われる。
審査員は蔵元や技術指導員といった業界の有識者たちであり、日本酒のスペシャリストたち。出品された日本酒を飲み手の視点に立って、一品ずつ丁寧に審査し、点数化することで順位を決定していく。
上位入賞酒は出品数の上位10%程度になることから、選ばれた日本酒はその年のtop of the topと言ってもよく、ここから流行も生まれていく。


ザ・ペニンシュラ東京で開催された表彰式に一堂に会した受賞者たち。
審査員によれば、2024年度はかつてないほど原料米の品質が悪い年だったため、その味わいを危惧していたが、蔵元の高い技術力によって、例年通りの素晴らしい日本酒が多かったと、その苦労を讃えた。
以下は表彰をされた日本酒である。
「純米酒部」
1位は広島杜氏の里として知られる安芸津町の蔵元である株式会社今田酒造本店の「富久長 新橋の男達(おやじ)の酒」。
「今年は酒造りが難しく、上手くいかない年だなと蔵の仲間と話していました。まさか1位を獲れるなんて夢にも思っていなかったので、驚きと同時に本当に嬉しく思っています」と、受賞の喜びを語った。
その味わいは、冷でも燗でもいける超辛口純米。無口で硬派な男のイメージとも言われている。辛さがありながら、ほど良い旨味の幅があることから、様々なお料理に合わせやすい。
2位以下は次の通り。
2位「伯楽星 特別純米」株式会社新澤醸造店(宮城県)
3位「楽器正宗 純醸」合名会社大木代吉本店(福島県)
4位「飛露喜 特別純米」株式会社廣木酒造本店(福島県)
5位「宝剣 純米酒 レトロラベル」宝剣酒造株式会社(広島県)
6位「山丹正宗 純米酒 松山三井」株式会社八木酒造部(愛媛県)
7位「みむろ杉 ろまんシリーズ Dio Abita」今西酒造株式会社(奈良県)
8位「山丹正宗 Jazz Brew」株式会社八木酒造部(愛媛県)
9位「峰乃白梅 純米」峰乃白梅酒造株式会社(新潟県)
10位「雨後の月 特別純米 山田錦」相原酒造株式会社(広島県)
「純米吟醸部門」
1位は「楽器正宗 愛山 中取り」合名会社大木代吉本店(福島県)
慶応元年(1865年)創業の大木代吉本店は良質な米の産地として知られる福島県南部の矢吹町の老舗。その味わいは和梨やメロン、マスカット甘やかな香りに包まれガス感も相まってフレッシュで爽やかな印象。さらに、甘味がありながら重たくなく、すっきりとキレイ余韻にミネラルも感じられる。
2位「雨後の月 純米吟醸 山田錦」相原酒造株式会社(広島県)
3位「初陣 純米吟醸」古橋酒造株式会社(島根県)
4位「黒松白扇 純米吟醸 花」白扇酒造株式会社(岐阜県)
5位「東洋美人 醇道一途 限定純米吟醸 山田錦」株式会社澄川酒造場(山口県)
6位「武勇 純米吟醸 山田錦 雷」株式会社武勇(茨城県)
7位「武勇 純米吟醸 山田錦」株式会社武勇(茨城県)
8位「京ひな 内子座 純米吟醸」酒六酒造株式会社(愛媛県)
9位「東魁盛 純米吟醸 なのはな」小泉酒造合資会社(千葉県)
10位「寒紅梅 純米吟醸 山田錦50%」寒紅梅酒造株式会社(三重県)
「純米大吟醸部門」
1位に輝いたのは、「山和 Shizukudori」株式会社山和酒造店(宮城県)
酒袋から滴り落ちる一滴一滴を集め斗瓶取りした超限定純米大吟醸酒。気品ある華やかな香り、繊細で滑らかな舌触りと透明感ある優雅な味わい、完成度高い珠玉の逸品と評されている。
2位「太平山 天巧」小玉醸造株式会社(秋田県)
3位「蓬莱 純米大吟醸 最高級極秘酒」有限会社渡辺酒造店(岐阜県)
4位「豊國 純米大吟醸」豊國酒造合資会社(福島県)
5位「東洋美人 壱番纏 純米大吟醸」株式会社澄川酒造場(山口県)
6位「SEN 純米大吟醸 雫どり」合同会社廣瀬商店(茨城県)
7位「森嶋25+ SILVER 純米大吟醸」森島酒造株式会社(茨城県)
8位「石鎚 純米大吟醸」石鎚酒造株式会社(愛媛県)
9位「燦爛 純米大吟醸 夢ささら」株式会社外池酒造店(栃木県)
10位「鳳凰美田 赤判 純米大吟醸酒」小林酒造株式会社(栃木県)


今回受賞をした日本酒。
「Super Premium部門」
特定名称酒に限らず、720mLで小売価格が10,000円(外税)以上、1,800mLで15,000円(外税)以上の清酒から選ばれる。
1位「富士大観 秘蔵酒 限定大吟醸」森島酒造株式会社(茨城県)
2位「勝山 暁」仙台伊澤家 勝山酒造株式会社(宮城県)
3位「作 智」清水清三郎商店株式会社(三重県)
「海外出品酒部門」
海外にある醸造所で製造した米を原料とする醸造酒では、1位「DASSAI BLUE Type 23」DASSAI USA INC.(NY)が選ばれた。
すでに入手困難になっている日本酒も多くあるが、その味わいを楽しめるチャンスがあればぜひご堪能あれ。
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