伊豆半島東岸に位置する熱川は、海岸沿いに温泉が湧出する温泉地である。高度成長期には多くの旅館やホテルが建設され、昭和54年をピークに、海沿いの温泉リゾートとして盛隆を誇った。現在も、昭和期の面影を色濃く残す温泉街である。
11月1日より、その地に「ノスタルジック・ラグジュアリー」のコンセプトのもとリニューアルオープンしたホテルが、「伊豆リトリート 熱川粋光(あたがわすいこう)」だ。
昭和の温もりに包まれる伊豆旅へ
最初に出会う伊豆熱川駅の送迎車両からして、ノスタルジックで気持ちが弾む。宿が選んだのは、1990年代のクラシックカー、光岡自動車の「ガリューⅠ」である。
「ノスタルジック・ラグジュアリー」とは、昭和を思い起こさせる趣向が随所に凝らしてあることを指す。それが第1の特徴である。
ロビー階奥にはLPが陳列されている。左奥がラウンジバー。
その感覚はレセプションからロビーへと進むと、より一層強くなる。例えば、壁にLPレコードが陳列してあるコーナーがある。
アース・ウィンド・アンド・ファイアー、ビートルズ、キース・ジャレット、中島みゆき、中森明菜……懐かしさとともに思わず手に取ってしまう。もちろんリクエストすれば、それらはラウンジバー「汐待ち」で聴かせてもらえる。
全室に露天風呂が完備。源泉掛け流しで豊富な湯量を誇る。
趣味性の高い、贅を尽くした空間が快適を滞在を約束する
客室は全16室で、すべての部屋がオーシャンビューで露天風呂を完備する。しかも、豊富な湯量を誇るために、全室が源泉掛け流しである。
全客室の大胆なリノベーション、これが第2の特徴となっている。
客室は6タイプ。最小でも約87平米もあり、最大で約200平米と、とても贅沢な広さを有している。最小の部屋であっても、入室しただけでゆったりとした気分に浸ることができる。
大浴場がなくても、部屋に露天風呂が付いているのはたいへん素晴らしい。到着してすぐに入れば、目の前に広がるのは東伊豆の海原だ。就寝前に海面に輝く月光(月の道)を眺めながらもう一度、さらに翌朝は曙光を浴びながら入りたくなる。
「元大浴場スイート」は約200平米もある。
そして、リニューアルの目玉が、元あった男湯・女湯の2つの大浴場をスイートルームに改装したことだ。
その2つの「元大浴場スイート」は、約200平米もあり、一枚の写真では捉えきれないほどの広さで、洗い場の鏡などがそのまま意匠として残してあるところが面白い。露天風呂は約20平米と広く、サウナも完備している。こちらは2人で贅沢に使うのはもちろんのこと、6人まで泊まれるそうなので、家族、もしくはグループで宿泊するのに向いている。
「カラオケスイート」にはレトロなカラオケルームが付いている。
他に「カラオケスイート」があり、中の一部屋はカラオケルームになっている。こちらもサウナを完備しているので、やはりグループで宿泊したら楽しそうだ。
また、客室でもレストランでも目に付くが、地元作家の陶芸作品や、地酒、地元産の海山の食材である。それらは、滞在中に東伊豆町という地域を知らしめ、ゲストの興味をホテル周辺へと向かわしめるきっかけにもなっている。
それが第3の特徴である。高級ホテルとして地域で孤立するのではなく、地域とともに歩み、地域そのものの発展に寄与しようとする姿勢が素晴らしい。
海の恵みを堪能できる素晴らしい料理に舌鼓を打つ
宿の食事についても触れておきたい。夕食はとてもゴージャスだ。11月の献立からは、金目鯛、伊勢海老、黒むつや地元の野菜など、伊豆の食材をふんだんに使ったイノベーティブな和食になっている。
特に印象に残った品であるが、先付で出てきた「富士鱒のタルタル」は、器の蓋を取ると、鱒をダイス状に揃えた切り身を燻した煙が立ち昇る。薫香がいい。もちろん、タルタルには十分な残り香がある。
「伊勢海老のソテー」はソースがたまらないほど美味しい。
伊豆は伊勢海老の産地として知られるが、「伊勢海老のソテー 桜エビ地トマトのソース」はとても美味しかった。プリッとした伊勢海老の火入れも抜群にいいのだが、桜エビとトマトのソースがアレンジしたアメリケーヌソースで、海老味噌を溶かした奥行きの深い旨みは、しばらく忘れ難いほどだった。
ワインと日本酒のペアリングも見事で、この伊勢海老に合わせたのがギリシャの白の「サントール」。ペロポネソス半島で作られたビオのナチュールワインである。程よい酸味と切れの良さはいかにもヴァン・ナチュールで、トマトのソースとの相性はとても良かった。
「金目鯛げんなり彩寿司、金目鯛味噌汁」は締めには最高の地元料理だ。
地元の静岡牛ヒレのローストも堪能したが、締めの「金目鯛げんなり彩寿司、金目鯛味噌汁、香の物三種」は、金目鯛の身で作った紅と白のそぼろの押し寿司である。これはまさに東伊豆町の郷土料理なのだ。酢飯で食事を締めてくれたところが、口がさっぱりして嬉しい。また味噌汁も金目鯛のアラで出汁を取っているためか、味の統一感がとても良かった。
朝食もまた、旬の魚の焼物、味噌鍋、八寸、小鉢の数々……所狭しと渾身の品が並び、圧倒された。
去りがたく、また、再訪したくなる宿であることは間違いない。
Text by Toshizumi Ishibashi
伊豆リトリート 熱川粋光 by 温故知新
住所:静岡県賀茂郡東伊豆町奈良本1271-2
TEL:0557-23-2345
料金:1泊2食付き94500円~(2名1室利用時、税サ込)
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