株式会社ウェルカム 代表取締役 横川正紀氏株式会社ウェルカム 代表取締役 横川正紀氏

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2018.10.19

日本のプレミアムに取り組む企業 
株式会社ウェルカム 代表取締役 横川正紀氏インタビュー

インテリアショップ「GEORGE’S 」「CIBONE」、そして NY発祥の“食のセレクトショップ”「DEAN & DELUCA」など、「感性の共鳴」を企業理念に様々なブランドを展開している株式会社ウェルカム。今回は代表取締役 横川正紀さんにお話をうかがいました。

 

ブランドではなく文化を伝える難しさ

日本で現在40店舗を展開し、NY発の食のセレクトショップとして認知されているDEAN & DELUCA。現在ウェルカムの売り上げの約6割を占める事業となっていますが、当初はうまくいかず、悩んだ時期もあったそうです。

 

「3年目ぐらいまでは本当に厳しかったんです。すでにアメリカでは一つの文化として成立していたDEAN & DELUCAでしたが、本来なら文化になる前のコンセプト、いわゆる根っこの部分をちゃんと掴んで、苗から植え直さないといけなかった。それなのに『成熟したブランドだから、ぱっと抜いて持ってくれば育つ』と考えていたところがあったんです」

 

1970年代、経済成長を続けるアメリカで、食文化の乏しさに危機感を持っていた4人のニューヨーカーが始めた1軒の食料品店。4人のうちの1人、ジョルジオ・デルーカさんのルーツであるイタリアのメディテレーニアンの食文化をベースに、地産地消が当たり前のヨーロッパの食文化をアメリカに紹介したことが、感度の高いアメリカ人にヒット。そしてNYという土地柄から、世界中へブランドが波及していった、それがDEAN & DELUCAです。

 

横川さんが日本にDEAN & DELUCAを紹介した時は、すでに創業者の手を離れ、ライセンスとして別の会社のものになっていましたが、悩んだ彼が向かったのは創業者のひとりジョルジオ・デルーカさんのもとでした。

 

「彼からは『DEAN & DELUCAのルーツを探りたいのなら、僕の祖国も含めてヨーロッパに行くべきだ』と言われました。そこで2年くらいかけ、彼から紹介された生産者を訪ねるように。イタリア、フランス、スペイン、ベルギー、ギリシャ、北アフリカと、行けば生産者の方たちがまた人を紹介してくれて、それこそヒッチハイクのように毎回旅先が決まっているようで決まっていない旅をし、そこで得たこと感じたことを社員やお客さまに発信することから始めました」

さらに横川さんがデルーカさんから言われたのが「イタリアのパスタって、みなさんにとっては蕎麦やお米じゃないの?」という言葉。

 

「実はデルーカさんは日本食も大好きなんです。『僕は「モリモト」(NYの和食店)のそばが好きだけど、あなたのお客さまなら、もっとおいしいものがあることを知っているはず。それを届けたらどうですか?』と言われたんです」

DEAN & DELUCAの転換点

DEAN & DELUCA(写真提供:ウェルカム) DEAN & DELUCA(写真提供:ウェルカム)

DEAN & DELUCA(写真提供:ウェルカム)

デルーカさんの言葉に、自分たちのルーツを見つめ直した横川さん。創業から5年目に開店した六本木店では、醤油や塩、お酒など、日本の職人が作るこだわりの食材が並ぶように。

 

「でもそれが一番緊張しました」と横川さんは言います。

 

日本の食をセレクトする時、今でもよく覚えていますが、初めて稲妻が走る感覚が。オリーブオイルやパスタを選ぶのとは、とにかく緊張感が違うんです。なぜならその商品を手にする相手は、日本の味、美味しさの答えをわかる人たちですから。でもそのおかげで改めて日本の食材がこんなに豊かで素晴らしいものだと、その奥深さを実感しました」

「食を楽しむ」それが思想のベースに

生産者を訪ね日本の食を知ることは、それはまさにDEAN & DELUCAの思想となる「食をする喜び」を体感することでもあったそうです。そして一番に「食を楽しむこと」。それがDEAN & DELUCAの思想のベースに流れています。

 

「DEAN & DELUCAは”Artisanal grocers”(職人型食料品店)。具体的に言えば、自然を極力大事に、伝統手法を用いて無理に量産しない商品を揃えていますが、例えばオーガニックだけにこだわっているわけではないんです。実はNYのソーホー店にはコカ・コーラもあるんです。でもダイエット・コークやコカ・コーラゼロは置いていない。考え方はすごくシンプルで、食の美しさとは“enjoy”なんだということなんです。例えばお菓子も、厳しく規定すればお菓子がみんな茶色になってしまいます。天然成分由来の着色料を使用して、子供のケーキのトッピングぐらいはカラフルにしたいですよね。ベースには必ず“enjoy”があり、そのバランスを持つことが生きるための美意識を生むという考え方なんです」

ルールではなく感性でつなぐ

DEAN & DELUCAの思想に流れるルールではなく感性でつながる考え方は、ウェルカムの企業理念にも現れています。

 

「企業理念は「感性の共鳴」。ルールで縛っても未来はどんどん変わってしまいます。多様性の中、誰か一人の答えが必ずしもあっているとは限らないですし、僕らのような仕事は常にクリエイティブを求められる。となると、みんなをつなぐのは感性しかない。自分たちの価値観を共有した上で、あとはクリエイションを楽しもうという考えでいます」

日本の美しいものを海外へ

これまではCIBONEやDEAN & DELUCAで海外商品を日本に紹介してきたウェルカムですが、近年は外務省がロンドン・ロサンゼルスなどに開設する「ジャパン・ハウス」では商品のキュレーションを担当。日本の商品の魅力も積極的に発信しています。

 

「DEAN & DELUCAのセレクトでも日本製品の魅力の奥深さを感じているので、造り手などさまざまな方たちとつながりながら、少しずつやっていきたいと思っています。B to Cだけではなく日本食レストランをやっている人たちに必要な食材、器などを届けるようなB to Bでも可能性はあると思っています」

ジャパン・ハウス ロンドン(写真提供:ウェルカム) ジャパン・ハウス ロンドン(写真提供:ウェルカム)

ジャパン・ハウス ロンドン(写真提供:ウェルカム)

DEAN & DELUCAがカフェやケータリング、カタログギフトなど、日本でその可能性を広げていったのも、固定概念を持たずウェルカムが雑貨とかインテリアで培った表現方法があったからと言えるでしょう。

 

「ジャパン・ハウスもそのひとつですが、近年はホテルのプロデュースや商業施設の開発、地域活性の行政のプロジェクトも多くなってきました。自分たちがお店を作ってきたノウハウや経験・ネットワークを別の形で生かせば街づくりとか、メディアや学校、あるいは一次産業との連動など、もっとカテゴリーをまたいでやれることはあると思っています」

店から広がる大きな可能性

学生時代は建築を学んでいたという横川さん。当時感じていた思いがだんだんと形になっているそうです。

 

「残念ながら建築家にはなれませんでしたが、いつか建物の中に入るコンテンツを作る人間になって、建物を作る人と一緒に仕事しようというのが、建築やめた時の自分に対する約束だったんです。それから約25年。1軒のインテリアショップから始まった仕事ですが、だんだんとその約束に近づいてきている気がします」

今後さまざまな分野で、これまでの経験を活かしていきたいという横川さん。
一軒の店には、大きな可能性が秘められていると話してくれました。

 

「店づくりは街づくりなんです。自分が気に入ったモノを集めた雑貨屋が1軒できると、そんな雑貨が好きなお客さんが集まるようになる。そして、そんな雑貨を使ったカフェができると、またそんな感じが好きな花屋ができ本屋ができ、4軒ぐらいつながればその雰囲気が好きな人たちが集まってくる。そうすればマーケットもできるし、さらにカフェもまた増える…街の色ってそうやってできてくるものだと思うんです。今はまず施設としてのカタチがあって、そこに呼ばれてきた店が並ぶのが商業施設の作られ方。お店をやりたい人や住みたい人が連なっていき、だんだん街の色になっていくという、本来の街の作り方ができないかなと考えてます」

 

 

※この記事に記載されている内容、情報は公開当時のものとなります。

<プロフィール>

横川正紀(よこかわ まさき)

株式会社ウェルカム 代表取締役
1972年東京都生まれ。2000年創業。2001年「CIBONE」をオープン。2003年には「DEAN & DELUCA」の日本での展開を始める。その後も国立新美術館ミュージアム「スーベニアフロムトーキョー」、くらしのDIYをテーマにした「TODAY'S SPECIAL」を立ち上げる。2016年にWELCOME GROUPとして統合し、そんな経験とネットワークを活かし施設開発・街づくり・ホテルのプロデュースも手掛ける。食とデザインを軸にライフスタイルの提案を拡充している。

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