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素敵の周辺

2025.5.29

映画「サブスタンス」は女の若さと美貌への欲望をむき出しにするジキルとハイドの物語




今回から始まる編集部コラム「素敵の周辺」。生まれつきキレイな人にはなれなくても、素敵な人になることはできる。素敵な人に近づくために、Premium Japan編集部が贈る、美容やファッションのコラムです。



第1回目は、編集Nが激白。映画「サブスタンス」から、女性の若さや美について考えさせられたことについてです。



エイジング、ルッキズム、ミソジニー……
容赦なく女性へ向けられる問題を突き付けてくる映画「サブスタンス」



映画「サブスタンス」を観た。これは、美容を主軸にしたこのコーナーにぴったりな、深く鋭いテーマを抱えた作品。だからこそ、どうしても書きたくなった。

 

 

「サブスタンス」は、年齢への恐れ、見た目への偏見、そして女性蔑視を、これでもかというほど容赦なく突きつけてくるホラー映画。主演のデミ・ムーアが、まさかここまで振り切るなんて…その覚悟に、まずは心から拍手を送りたい。






あらすじをざっくりと。

 

元トップ女優で、長年人気のフィットネス番組を持ち、輝いていたエリザベスは、ある日突然番組を降板させられる。理由は「年を取ったから」。十分美しいし、スタイルだって申し分ないのに、プロデューサーのハーヴェイ(この名前の皮肉さよ!)からババア呼ばわりされ、深く傷つく彼女の前に、「サブスタンス」という謎の薬が現れる。不信感と、若さを渇望する気持ちとの間で揺れながらも、それを受け入れたエリザベスから、もうひとりの若くセクシーな彼女=スーが誕生するという、出だしから息が詰まる展開。







スーが生まれた瞬間から、観ている側は「これはただの整形や若返りの話じゃない」と気づかされる。でも、そこはほんの入口。ここからは、エリザベスとスーの、愛憎入り混じる暴走が、怒涛の勢いで展開し、襲いかかるのだ。

若さと輝きを纏ったスーは、老いたエリザベスを激しく拒絶し、エリザベスは傲慢になってゆくスーを憎みながらも、どこか彼女に憧れと未練を重ねてしまう。スーを止めるにはサブスタンスを断たねばならないのに、決断できずに揺れるエリザベス。その揺らぎが、痛いほどに分かってしまうのがつらい。



「サブスタンス」を手にしたとき、同封されている「REMEMBER YOU ARE THE ONE」というメッセージ。この意味深な言葉が、物語が進むほどに、エリザベスにもスーにも、そして観客の胸にも鋭く突き刺さってくる。





ひとりの女性の中にある、ふたつの対立する自己。これはまさに、今を生きる私たち女性の心に巣くうジキルとハイドの物語なのだ。

 

 

これ以上はネタバレになってしまうので控えるけれど、これは間違いなく、すべての現代女性の深層に潜むものを、容赦なくあぶり出す作品だ。


私たちは芸能人でもモデルでもない。でも、女として生きていれば、子どもの頃から常に評価の目に晒されてきた。学校でも職場でも、たとえ容姿と無関係な場でも、美しい人は賞賛され、それ以外は無言で線を引かれることを、私たちは知っている。若い頃は特にその傾向が顕著で、心ない言葉に、気づかれないほど小さく何度も傷ついてきた。


もう少しキレイだったら……。もう少しやせていたら……。どんどんエスカレートしていき、過度な美への欲求が暴走することは、もはや他人事ではない。美容皮膚科で定期的に肌を整え、整形のために韓国へ渡るのも珍しくない昨今。それほどまでに私たちが美に執着してしまうのは、いったいなぜなのだろう。

 

 

エリザベスがついにすべてを終わらせようとした瞬間、スーに届いた花束に添えられていた「THEY ARE GOING TO LOVE YOU」というカードの「LOVE」の文字が、静かにフォーカスされる場面。そこで私の心はざわついてしまった。


承認欲求などという言葉では追いつかない。もっと切実な、どうしようもなく深い――― 愛されたい、選ばれたいという渇望が女性の中に潜んでいる。その盲目的な欲求が、エリザベスの胸の奥で膨れ上がり、やがては自らをも壊してしまう。彼女の苦しみが、まるで整形を繰り返す女性たちの心と重なって、たまらなく切なく、胸を締めつけられた。


そしてもうひとつ。若さというものが、これほどまでに性的魅力と強く結びついているという事実。そして、多くの男性が若さを求める理由は、結局そこにあるのだと、映画ははっきりと突きつけてくる。このテーマは、作品の中であからさまに、そして容赦なく描かれている。


たとえば、ハーヴェイの「女は50になれば終わりだ」という、聞くに堪えないセリフ。彼が言う終わりとは、女性が閉経すれば、もはや女ではない、価値がない、という意味なのだ。その考えがどれほど歪んでいても、現実にそう信じている人間が存在するという事実に心が痛む。


そして、新たにスーが起用されたフィットネス番組では、彼女の身体を過剰に切り取るようなセクシーカットが執拗に挿入され、彼女が観る者の欲望を満たすための商品として編集されていることにも、ぞっとさせられる。


サブスタンス サブスタンス

サブスタンス 公開中

■監督・脚本:コラリー・ファルジャ『REVENGE リベンジ』

■出演:デミ・ムーア、マーガレット・クアリー、デニス・クエイド

イギリス・フランス/142分/R-15+ 配給:ギャガ

(c)2024 UNIVERSAL STUDIOS


男は歳を重ねることが渋みや貫禄とされ、むしろ加点されていくのに、女は若くて美しくなければ終わりなのか? 本当は、そんなことはない。だけど、社会が女性に無意識に課す役割期待が変わらない限り、私たちはきっと、この呪縛から逃れられないのだろう。若さ、美しさ、性的魅力。それらにしがみつくようにして、必死に選ばれる側でいようとする心の奥底には、あのどうしようもない渇望―――「LOVE /愛されたい」―――があるのだ。


私だってそうだ。スキンケアにも気を使っているし、ボトックスだって続けると思う。髪の色もまだグレーヘアにしていこうとは思えない。でも、どうやって美や若さを手放していくのか、どう年齢に沿って降りていくかを、きっと男性以上に深く、切実に考えていると思う。


年齢を重ねても胸を張って生きていたい。気分良く毎日を過ごしたい。いつまでもカワイ子ちゃんの席をキープすることが重要ではなく、自分が熱中できることを探し、次の自分の居場所を作っていく。それくらいの気概が、女性には必要なのだ。


「サブスタンス」はホラー映画だ。心理ホラーと言えるかもしれない。怒涛のラストへの展開はもう、言葉を失うほどだった。張り巡らされた意味深なセリフの数々が、すべて回収される構成の巧みさも見逃さないでほしい。圧巻の結末は、スティーブン・キングの名作ホラーへのオマージュでもあるけれど、それ以上に強烈で、見たことのない領域に踏み込んでいく。これはぜひ、劇場で、自分の目で確かめてほしい。

 

今回のお勧めアイテム 「年齢を重ねても、気分よく過ごせたら、それが最高!」

 

とはいえ、年齢を重ねても、毎朝鏡を見るのがイヤでない自分ではいたい……なんて欲張りなことを考えている編集N。初夏から盛夏に向けてはUV効果の高い下地を物色中。そして、この額や目尻のシワにもチャレンジしたいと考えている。


使ってみたかった2品にトライできる「リンクルショット ファーストキット」

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リンクルショット ファーストキット 7,920円(税込)/ポーラお客さま相談室(フリーダイヤル) 0120-117111

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※全国のポーラ ビューティーディレクター、コスメ&エステショップ「ポーラ ザ ビューティー」約430店舗 、ポーラ公式オンラインストアにてお取り扱いします。 百貨店・海外でのお取り扱いはありません。



光老化に新アプローチ「アスタリフト D-UVシールド トーンアップ」

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アスタリフト D-UVシールド トーンアップ ローズ(左)、ナチュラルホワイト(右)各4,290円(税込)/富士フイルム 0120-596-221

アスタリフト D-UVシールド トーンアップ
アスタリフトは、波長が長い370~400nmの紫外線をDeep紫外線と名付け、研究。化粧品に配合することができる約35種類の紫外線防御剤の組み合わせだけでは、カットすることが難しいという結論にたどり着き、Deep紫外線までカットすることができる独自の紫外線防御技術の開発に成功。誕生したのが「アスタリフト D-UVシールド トーンアップ」。血色感のある明るさを目指すローズと、ワントーン上の明るい健康的な肌を表現するナチュラルホワイトの2種を用意。編集部Nは、SPF50+PA++++の頼もしさと、肌のくすみを払ってくれるローズがお気に入り。




「素敵の周辺」とは

美容やファッション、エイジングなど、素敵に心地よく生きるためのヒントをお届ける編集部ブログ「素敵の周辺」。きれいな人は生まれ持った容姿が必要かもしれないけれど、素敵な人は自分の在り方がすべて。だから、誰でも素敵な人にはなれるし、そうありたいと思う編集部の気持ちから、このタイトルを付けました。時には発表会情報なども織り交ぜながら、お伝えしていきます。

 

 

 

 

 

 

 

 

中嶋千祥 Chisa Nakajima

編集NことPremium Japanの編集長ダイリ。1950~60年代の日本映画鑑賞とワインを飲むのが大好き。戦後の女性誌収集が趣味というちょいオタク。

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