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松山 猛 時と人を繋ぐもの

2025.10.29

『時計を着替える』と、時計の魅せ方も変わる

左・ライトグレイのクロコをまとうのはユリス・ナルダンのシングルボタン・クロノグラフ。右・グレイのクロコダイルのベルトは1940年代のロレックス・パーペユアル・バブルバック。

 





文・松山 猛

 

季節が変わると、時計のベルトを変えてみようかと思う。

高温多湿の日本の長い夏には、金属製のブレスレットが活躍するが、気温が下がってくると、ドレッシーな雰囲気のレザーベルトが、気分を変えてくれるように思えるのだ。

 

 






ファッションのように着替える時計ベルト

 

 

以前は男性の時計のベルトと言えば、黒や茶系が主流だったのだが、最近はレザーベルトの素材や色も多様になってきて、時計本体や文字盤の雰囲気に合わせて、千変万化にコーディネイトを楽しめるようになってきた。

日本でもフランス発の”ジャン・ルソー”や”カミーユ・フォルネ”などの、ラグジュアリー感あふれるレザーベルトを楽しむ人が増えてきた。




これまで高級時計のレザーベルトには、クロコダイル素材が定番とされてきたが、最近の傾向としては、美しい色のカーフのベルトが人気になってきている。
そこには動物愛護を訴える人達からのプレッシャーもあるようだが、何のことはない牛や豚の革なら良いというのも、また偏見だと思うのだけれど。








それはさておき、僕が個人的に好きなのは、時計の世界の中心地である、スイスのジュネーブ市外にある”アトリエ・ド・ブレスレット”というレザーベルトをオーダーメイドできるアトリエのものだ。
ここには驚くほどのバラエティーに富んだ素材のストックがあるからだ。

 

はじめてそのアトリエに行ったときに手に入れたのは、1970年代に手に入れた1940年代製ロレックス・バブルバックのためのレザーベルトだった。それはミディアムグレイのクロコダイルのベルトで、ステンレスとローズゴールドのコンビで、黒文字盤の時計に、見事にマッチしてくれたのだった。





時計ベルト2 時計ベルト2

レザーベルトをオーダーメイドできるアトリエ「アトリエ・ド・ブレスレット」。





今年のジュネーブの時計フェアのおりには、つけていたベルトの一部が不具合になってしまったのを、ベテランの女性職人さんが、あっという間になおしてくれたので助かった。
時計ケースのサイズは様々なのだが、ラグの内径とバックル側のサイズがわかっていれば、素材を選んで注文できる。

 

 






こうしてベルトを付け替えると、時計はまた新しい表情となってくれるから不思議だ。

今回は愛用している”ユリス・ナルダン“製のクロノグラフ時計にもベルトを新調してみたところ、以前の淡いブルーのベルトもよかったが、今度のベージュ系もよく似合うのだった。

 

 





この新しいベルトによる変化を、もっと多くの人に楽しんでもらえたらと思うのだが、いかがだろう。

珍しい時計ベルトの素材と言えば、例えば海を泳ぐエイの革のガルーシャや、パイソンのバックスキンなども珍しい雰囲気を醸し出してくれるだろう。

ヴィンテージ時計の場合、その昔のカルティエなどが用いていた、ピッグスキンの時計ベルトも雰囲気満点だ。

スーツにネクタイを合わせるように、愛用に時計のレザーベルトを、着替えてみる楽しみを知っていただきたい。




時計ベルト4 時計ベルト4






「松山 猛 時と人を繋ぐもの」とは

日本の時計ジャーナリストの草分け的存在である、松山 猛さんが心惹かれた時計や人、ブランドに宿る物語を独自の視点で紹介していく連載。

 

 

 

 



筆者プロフィール

 

日本の作詞家、ライター、編集者。1946年京都市生まれ。1968年、ザ・フォーク・クルセダーズの友人、加藤和彦や北山修と共に作った『帰ってきたヨッパライ』がミリオンセラー・レコードとなる。1970年代、平凡出版(現マガジンハウス)の『ポパイ』『ブルータス』などの創刊に関わる。70年代から機械式時計の世界に魅せられ、時計の魅力を伝える。著書には『智の粥と思惟の茶』『大日本道楽紀行』、遊びシリーズ『ちゃあい』『おろろじ』など多数。

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