SAKE 生駒代表
SAKE 生駒代表

JCCO

PREMIUM JAPAN AWARD

日本文化発信機構 JCCOが目指すもの

2026.10.19

日本酒ブランド「SAKE HUNDRED(サケハンドレッド)」を運営する Clea社の生駒龍史CEOが語る現在と未来

「SAKE HUNDRED(サケハンドレッド)」は、高価格帯の日本酒を世に出して来たブランドである。フラッグシップの「百光(びゃっこう)」の知名度は上がり、また国内外でその評価もすこぶるいい。日本文化発信機構(JCCO)が主催する「PREMIUM JAPAN AWARD 2026」に、SAKE HUNDRED運営元である株式会社Clea社がスポンサーとして参加する。代表取締役CEOの生駒龍史氏に、「SAKE HUNDREDの現在と未来」について聞いた。

メディアの立場から日本酒業界へ





Q 生駒さんは、事業を始める時に、なぜ数ある日本文化の中から日本酒を選んだのでしょうか。

 

 

A 日本文化の中から事業を選択するプロセスを踏んだわけではなく、25歳のときにたまたま出会ったのが日本酒でした。その素晴らしさに惹かれて、生業にしようと思い立ったわけです。

ただ、今になって思うと、お酒を飲むことや食事を共にするコミュニケーション文化というものは、普遍性が高くて非常に強固なものですね。コロナ禍やAI革命を経ても、お酒を飲む文化は揺るがないし、むしろ、フィジカルな価値が上がってきています。

ということは、日本のみならず海外でも、お酒というものは、人間の本質的なものを捉えていると考えていいでしょう。



Q 生駒さんは、2013年に「SAKETIMES」というメディアを創業したわけですが、その時点で2018年から始動する「SAKE HUNDRED」の形まで見えていたのですか。

 

 

A SAKETIMESの創業時から、次のフェーズでは酒の小売に進出すること自体はぼんやりと考えていました。ただ、高級酒市場の開拓などは具体的ではありませんでした。

2013年当初は、日本酒に賭けるベンチャーというもの自体が相当珍しかった。そこでまずは、メディアの立場で日本酒業界の中に入っていくことを課題にしました。

例えば、年商が数千万円台前半の小さな酒蔵で、夏はアルバイトで生計を立てていますというところから、年商が300億円ぐらいあって数百人の社員がいる酒蔵まで、規模やエリアや流通を問わずに、あらゆる酒蔵を回りました。そうすることで、自分がこの業界においてはアウトサイダーでありつつも、インサイダーとしての知見やネットワークを獲得することができる。そうしない限りは、お酒をつくったり売ったりする領域には入れないだろうことには気づいていました。

そういう意味では、今みたいな高級ブランドを作るまでの解像度はありませんでしたが、メディアをやることの重要度はステップ論として自覚していました。


頂点が高ければ市場規模は広がる



Q そこにはメディアを持っている有利さがあった?

 

 

A メディアをやっていて思ったのは、メディアを通じた発信力が最初にあります。でも同時に、受信力もあるわけです。

こうした技術がある、こんなお酒をつくった、こういうイベントがあるとか。そうした記事を1日に何本出しても足りないほどで、たくさんの記事を配信しました。おそらくこの十年の間で最も日本酒に関するインプットをした人間だと僕は思っています。

仕事として全国の酒蔵を回って、話を聞いて、酒を飲んで、酒造りに間近で接する経験をしました。この相当な情報量を持ったことが、なぜ今の自分たちが品質の高い酒を提案できるのかという一番重要な問いに直結している感覚があります。





Q ブランド事業という具体的な段階に入って行った時に、なぜあえて高価格帯だったのでしょうか。

 

 

A 僕は会社のビジョンとして、「日本酒の未来をつくる」を掲げています。そのために必要なことは何かと問われれば、僕は市場規模を拡大することが極めて重要だと思っています。市場規模は大きい方がいい。

 

日本酒の一番いいところはどこですかと聞かれたら、僕は「多様性です」と答えるのですが、規模の小さい市場の多様性と比べた場合、大きい規模の多様性の方が豊かなはずです。そして、市場規模に対して貢献性のある事業を行うことが、日本酒の未来をつくることだと思うのです。

今の日本酒マーケットにおける重要な課題の一つは、高価格帯が未形成であることです。

洋服や腕時計など、どの分野でもそうですが、安いことが悪いのではなく、それぞれの価格に応じた顧客が存在します。高価格帯が存在しないことは市場的にもったいないと思うのです。価格としての頂点が作られれば中間も大きくなりますし、裾野が広くなればなるほど頂点が上がるわけです。これが市場規模となります。

ですから、その未形成である高価格帯の市場を作っていくことが、日本酒の多様性をより豊かにしていくことだと信じています。

 

米の栽培をやろうかと迷ったこともありますし、日本酒のZOZOTOWNみたいなものを作ろうかなと思ったこともあります。あれやこれや考えて、ラグジュアリーな市場における日本酒を意識するようになったのは、まさに元エルメス本社副社長でJCCO代表理事でもある齋藤峰明さんとの出会い、彼の著書との出会いがあったからですね。あの本は衝撃的で、人生でトップ3に入るぐらい雷が落ちたような衝撃でした。




美味しいことが一番大事



Q 生駒さんのビジョンは、業界の外から入ってきたからこその発想に見えますね。

 

 

A そうですね。日本酒の未来を背負うぞという自負はあるものの、歴史と伝統を背負っているかと言えば、そこは四代も五代も続く酒蔵さんとは違います。僕は外部から来た人間ですから、外部からの人間が果たすべき使命があるし、自分の立ち位置や役割に関しては、かなり自覚的だとは思っていますね。





Q 既存の酒蔵さんの受け止め方はどうでしたか。

 

 

A 「うまくいくかどうかわからないけど、やってみたら良いんじゃないか」と見守るスタンスでした。僕は業界の合意形成をしながら丁寧に事業を進めることをすごく大事にしています。

ただ、業界の顔色を伺う必要はないと思っています。評価を求めるべきは顧客であって、業界におもねる必要はないと創業時から思っています。

お客様が一番大事という指針は、事業全体に対して言えることなんじゃないでしょうか。問われるべきは、事業がどちらを向けば社会が良くなるかなのです。僕はお客様に向いた方が、社会は良くなると思っています。




Q 御社は、最高峰の日本酒で、世界中の人々の『心を満たし、人生を彩る』というブランドパーパスを掲げています。それはどういうことでしょうか。

 

 

 

A 僕が特に重視しているのは、「美味しいことが一番大事だ」ということです。口に入れるものは、付加価値があるからとか、希少性があるからとか、評価が高いからとか、美味しくはないけれども飲んでくださいというのは絶対にダメなんです。美味しいことはとても大事なことです。

他方で、お客様が受け取れる価値は美味しさだけではありません。美味しさの次には、その視点を欠かしてはいけないのです。

 

ひとつの分かりやすい例を言えば、高品質のバッグや時計のデザイン。機能は満たされていてもデザイン次第で価値は大きく変わります。それと同じで、美味しくても、それ以外のデザインやブランドの方向性が好きじゃなければ、その価値は減退してしまいます。

他にも例えば、僕らの会社の活動が何か社会貢献性があるのかということも、お客様が受け取れる価値になると思う。誰が飲んで、その人はどういう評価をしてるのか、どこのレストランに置いているのか、海外展開はどうなのか、環境への取り組みはあるのかとか、いろんな価値があると思います。

 

つまり、お客様が受け取れる価値というのは無数に存在するということです。「美味しければいい」と言い切ってしまうと、その他の価値軸をすべて切り捨てることになるので、それはブランドの行為としては機会損失が大きくなりますね。

美味しさというのはもちろん最優先事項ですが、一面の価値に過ぎないので、どこからどう見ても価値のあるものだなと、お客様に理解いただける状況にしないとブランドは成り立たないんじゃないでしょうか。


お客様の人生を幸福にするブランドでありたい



Q 今後「SAKE HUNDRED」をどのようなブランドにしていきたいですか。

 

 

A 今回のプレミアムジャパンアワードの話にも、一部通じるのですが、やはり日本の良さは、世界に役立つものなのではないでしょうか。

日本の精神性や技術性、もしかしたら美徳の精神、謙虚な精神、あるいは一方で非常に挑戦的な精神、それらはいろんな世界の方々に意味のあるものではと思っています。日本らしさを学ぶことで、世界にとっていいことが起こるのではないか。

エゴイスティックな考え方という自覚はありますが、「SAKE HUNDRED」を通じて、日本酒や日本の魅力が伝わっていくことはすごく大事だと思います。一番大切なことはお客様の人生が豊かになることなので、お客様の人生を幸福にするブランドでありたい、それが究極の目標ですね。




Q 世界を見ると、本当に日本酒の伸び率が凄いような印象があります。生駒さんには先見の明があって、非常にうまくその時流に乗ったのではないでしょうか。

 

 

 

A 日本酒はこの十年で輸出額が4倍になっているので、堅調な成長です。とは言え、現在も450億円ぐらいの輸出規模なので、まだまだ小さいです。

多くの酒蔵さんにとっては海外展開は費用対効果が合いません。日本で下がった分の売り上げを海外で十分に補えるかと言うと、まだその規模にはなっていません。

日本酒産業においてで海外市場の重要性は、全員が認識しています。ただいつアクセルを踏むのかについては、タイミングは企業によって違います。僕は、今だと思っています。

輸出規模は450億円と小さいけれども、これからさらに大きく伸びます。その時に、これから準備しますでは遅い。今から存在感がある状態にしておけば、市場伸長の角度が上がった瞬間に、自分たちもそこにしっかりとフィットできるのではないでしょうか。





何を武器にして世界で戦うか





Q ターゲットとなる国はどこですか。

 

 

A 弊社の場合、現状は主にアジアですね。香港、台湾、タイ、シンガポール、そしてオーストラリアです。

日本酒全体の輸出は、アメリカと中国がツートップ。輸出量の半分を占めます。ここに香港、韓国、台湾を加えると、輸出の8割になります。

 

業界としては、ヨーロッパで多くイベントをやっているイメージがありますが、事業の規模を拡大するためにはどうすればいいかと言えば、それはまだまだアジアであるべきだと思います。

やはり、いいものを作ったら隣人に最初に提案したいなと思っています。アメリカ、ヨーロッパも将来的にはやりたいですけど、まずは近隣の国が先行しますね。美味しいご飯ができたら、隣の人にどうですかと声をかけるのが普通じゃないでしょうか。

物理的なことを言えば、距離が近いので品質劣化の懸念も少ないです。非常に親日で、日本の技術や日本酒、日本人に対しての姿勢も前向きな方々が多いので、それも含めてまずアジアをやるというのは、僕は合理的だと思っています。




Q アジア諸国をはじめ世界に持って行かれる時に、日本酒は何を武器にして戦えるのでしょうか。

 

 

 

A やはり美味しさだなとシンプルに考えています。

美味しくないものは飲まれないです。そこはすごく大事で、さきほども触れましたが、どんなに権威があって、伝統があるものだったとしても、美味しくないものを人は飲まないし、消費者はそんなに優しくはない。

特に自分の食べている料理と合うかどうかが重要だと思っています。
自分の生活に取り入れるイメージがない限りは、線を引かれた向こう側のエキゾチックな日本文化になってしまいます。

日本文化の文脈を強調したとしても、コンテンツとしては面白いけれど、彼らは自分の人生に取り入れようとは思わないんですよ。そうではなくて、あなたの生活に、あなたの家の冷蔵庫に1本あって、生活が豊かになるものですよ、という話をしない限り、彼らの生活への浸透はないと思います。

浸透するために何ができるかと言えば、現地のお食事と合うような提案をするとか、酸味だ旨味だ甘味だと語ることはキリがないですけど、何度も言いますが、要は、美味しくないものは飲まれない、ということです。



2年に1回の新商品のワケ





Q 今、酒蔵さんとの関係はどのように進展していますか。

 

 

A 今付き合っている酒蔵さんは9つですが、同じ志を持つということの重要度はすごく高いですね。

高級市場をつくることは、まだ未開拓の世界であることは間違いがない。安定した市場ではありません。もし僕らが失敗したら、「一時期、高級酒が流行ったよね」となるリスクはあると思っています。

こういう現時点では不確実性の高い市場を一緒に乗り越えていく時には、志が同じ方であることが大事です。信頼関係を持って、同じ山を登っていきましょうという思いを一つにすることをすごく大切にしています。

 

あとは、僕たちが蔵にとって有益な取引先かどうかということは、とてもシビアな部分です。どれだけ志が一緒でも、「全然売れないね」というのでは、「やる意味あったっけ?」となってしまうので、ちゃんと売り上げを作ることも大事なことです。

今回は2年ぶりの新商品でしたが、それは希少性を狙っているわけではなくて、生みの苦しみの方が大きいからです。個性があって、新しい提案で品質が高い。そこに「SAKE HUNDRED」らしさがある。レギュラー商品にはない新しい価値を含んでいないと、お客さんには新商品を買う意味はないはずです。

なので、技術的にも味わい的にも、いろんな面で検証しながらつくっていかなきゃいけないわけです。



まずは打席に立つこと





Q 日本酒業界についてですが、今、一番変えなきゃいけないことは何かありますか。

 

 

A 挑戦し、その打席に立つ回数じゃないでしょうか。

日本酒の生産量のピークは1973年ですから、53年前なのです。53年前がピークの産業なので、前年比で伸びていくという経験が全体的に多くない。もちろん一部の酒蔵さんにはありますよ。ですけど、やはり挑戦していかないと成功体験もないですからね。

さらに言えば、日本酒の製造免許というのは、国税庁が規制をかけています。もう70年ぐらい新規免許が発行されていません。新規参入がないことは大きな問題だと思います。

新規参入があるから打席に立つ者の数が増えて、その中から次の日本酒の未来をつくる新しいプロダクトや企業が生まれるかもしれないわけです。今まで通りのことをやってきていてダメだったのならば、やり方を変える必要があると思います。

 




累計43万人が抽選応募したフラッグシップ『百光(びゃっこう)』と双璧を成す商品として、「溢れる個性、味わう辛口」をコンセプトとした新商品『来火(らいか)』を事前登録者限定で2026年9月に22,000円(税込)で発売された。日本酒の王道である「辛口」をSAKE HUNDREDが独自の哲学で再構築し、飲むたびに旨味や甘味、酸味などの複数の要素が広がりながら、余韻の先に研ぎ澄まされたキレを感じる新しい辛口。



スポンサーとなった理由





Q 最後に、プレミアムジャパンアワードに協賛いただいた理由を教えてください。

 

 

A もともと齋藤峰明さんにご紹介いただいたことがきっかけです。

僕は齋藤さんを通じて様々な日本文化の魅力を教えてもらいました。でも、日本のいいものって意外に表面化されていないと思っていました。今回もアワードにノミネートされているものも、それをみんなが知っているかというと、まだ世の中に広く伝わってないですよね。

プレミアムジャパンが本物や本当にいいものを伝えようとしているという点も大きいです。ポップでカジュアルな日本のカルチャーを伝えていくようなものだったら、ピンとこなかったかもしれません。

 

さらに、プレミアムジャパンは、情報の流通経路にものすごく強いものがあり、やっていることはすごく硬派です。僕らも外からは華やかに見える部分もありますが、本質的なものを淡々と広げていくということを大事にしていたいので、そういう部分にも共感がありました。

また、そこに関わることは、周り回って自分たちのためにもなるだろうなという打算もありました。学ばせていただくことがきっと圧倒的に多いだろうなと思った、というのが正しい表現かもしれないですね。







生駒龍史 Ryuji Ikoma

 

株式会社Clear 代表取締役CEO 兼 SAKE HUNDREDブランドオーナー。
1986年、東京都生まれ。IT企業などを経て2013年に株式会社Clearを設立。2014年に日本酒メディア「SAKETIMES」をローンチし、2018年7月に日本酒ブランド「SAKEHUNDRED」を創業。これまでベンチャーキャピタル等から24.4億円の資金調達を実施。事業成長によって日本酒の発展に貢献し続ける。国税庁主催「日本産酒類のブランド戦略検討会」(2019年-2023年)委員を務める。2024年、これまでの功績が認められ⽇本醸造学会若手の会より醸造⽂化賞を受賞。

Text by Toshizumi Ishibashi
Photos by Toshiyuki Furuya

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