Experiences

Spotlight

上高地帝国ホテルから始まるサステナブル

2023.2.12

上高地帝国ホテル 自然と共生する日本の本格山岳リゾートホテル


日本屈指の山岳リゾート上高地。大自然の美しさに魅了され、毎年多くの人が標高1500メートルのこの地を訪れる。手つかずのまま残る自然を守るため、上高地には宿泊施設は数えるほどしかない。その中で、古くからの歴史を持ち、上高地を訪れる誰もが一度は泊まりたいと憧れる赤い三角屋根のクラシックホテル、それが「上高地帝国ホテル」だ。上高地が雪と氷に閉ざされる冬の間、ホテルは休業に入り、翌年の4月下旬に営業を再開する。冬の眠りを1週間後に控えた晩秋、憧れのホテルを訪れた。そこで出会ったのは、伝統を守りつつサステナブルなホテルを目指す、さまざまな取り組みだった。



上高地の象徴、河童橋とその下を流れる梓川。左奥に見えるのが穂高連峰。 上高地の象徴、河童橋とその下を流れる梓川。左奥に見えるのが穂高連峰。

上高地の象徴、河童橋とその下を流れる梓川。左奥に見えるのが穂高連峰。



古くは「鏡池」とも呼ばれていた明神池。その名の通り、湖面はまるで鏡のよう。 古くは「鏡池」とも呼ばれていた明神池。その名の通り、湖面はまるで鏡のよう。

古くは「鏡池」とも呼ばれていた明神池。その名の通り、湖面はまるで鏡のよう。



上高地の美しい自然とともに90年

 

上高地帝国ホテルの開業は、1933(昭和8)年に遡る。1977(昭和52)年に木造から鉄筋コンクリートへと全面改築されたが、外観はほぼ忠実に開業当時の様子が保たれている。木立の合間から赤い屋根が見えてきた。建物のそのものの高さは意外に低く、樹々の間に慎ましく佇む邸宅のようにも見える。ファサードへと続く道が下り坂なのも、上高地の大自然の中で少し控えめに、でも訪れる人を温かく受け止めてくれる心遣いを体現しているかのようだ。そして今年、上高地帝国ホテルは開業90周年を迎える。



1933年の完成当時の上高地帝国ホテル。外観は現在とほとんど変わりがない。 1933年の完成当時の上高地帝国ホテル。外観は現在とほとんど変わりがない。

1933年の完成当時の上高地帝国ホテル。外観は現在とほとんど変わりがない。



重ねた歴史が醸し出す重厚感と安堵感

 

住み手が大切に暮らしてきた山小屋のよう……。エントランスからロビーラウンジへと足を踏み入れた時、誰もがそう思うに違いない。歴史を重ねたホテルだけが醸し出すことができる重厚感と、柔らかく包み込む安心感がそこには流れている。薪を燃やした時に生じる独特のほんの少し甘い燻香が、重厚感と安心感にブレンドされている。その燻香の源となる銅製のマントルピースは、ロビーラウンジの中央で圧倒的な存在感を放つ。

 

マントルピースの下では、日中の気温が15度以下の日は、夕方5時になると薪に火が入る(6月中旬~9月中旬までは休止)。「点火式」と呼ばれるそのセレモニーは、宿泊客にも大人気。5時近くになるとマントルピースの周りに人々が集まり、ふいごを使ってスタッフが薪に火を熾す様子を見守っている。そのアットホームな雰囲気は、まさに山小屋。東京や大阪の帝国ホテルに比べて格段に少ない74室という客室数だからこそ、醸し出されてくる空気感だ。



このマントルピース、高さは5.1メートル、重さは650㎏。 このマントルピース、高さは5.1メートル、重さは650㎏。

上高地帝国ホテルのアイコニックなこのマントルピース、高さは5.1メートル、重さは約650㎏。ヨーロッパの山岳地帯のシャレーに来たような風格と温もりを感じる。



包み込まれるような安堵感の客室

 

客室も柱や梁のダークブラウンと壁の白が基調。包み込まれるような安堵感は、ロビーに足を踏み入れた時の安堵感と似ている。テーブル、椅子、ベッドなどもどっしりとした重厚感で統一され、歴史を重ねたクラシックホテルならではの、揺るぎない自信と誇りのようなものすら感じさせる。その一方でバスルームなどの水回りは、最新の機器で整備され、そこにはラグジュアリーホテルとしての矜持があった。



ベランダ付きのツインルーム。上高地の大自然が窓外に広がる。 ベランダ付きのツインルーム。上高地の大自然が窓外に広がる。

ベランダ付きのツインルーム。上高地の大自然が窓外に広がる。



料理は帝国ホテルの正統的なフランス料理をベースとしながらも、随処に 信州の野菜や飛騨牛を用いた上高地帝国ホテルならではの味わい。 料理は帝国ホテルの正統的なフランス料理をベースとしながらも、随処に 信州の野菜や飛騨牛を用いた上高地帝国ホテルならではの味わい。

料理は帝国ホテルの正統的なフランス料理をベースとしながらも、随処に信州の野菜や飛騨牛を用いた上高地帝国ホテルならではの味わい。



宿泊客専用の「バー ホルン」は、これまでの雰囲気そのままに、 ロビーラウンジに移設された。 宿泊客専用の「バー ホルン」は、これまでの雰囲気そのままに、 ロビーラウンジに移設された。
宿泊客専用の「バー ホルン」。これまでの雰囲気そのままに、ロビーラウンジに移設された。


自然と共存するサステナブルなホテルを目指して

 

上高地帝国ホテルは、2022年度からSDGs達成に貢献する取り組みをより進め、自然と共存するサステナブルなホテルを目標としている。歯ブラシ、ヘアブラシ、カミソリなどの柄はすべて竹や木に切り替え、シャワーキャップや衣類カバーは植物由来の製品を採用。それにより、従来に比べてプラスチック使用量を9割削減することに成功した。自然素材の歯ブラシやヘアブラシの柄は、どこまでも手に優しくなじみ、部屋の雰囲気にも自然に溶け込んでいる。

 

 

こうした取り組み関し、総支配人の浅井功さんは次のように語る。

 

「サステナブルへの取り組みは、もちろん東京と大阪の帝国ホテルでも同じように進められています。ただ、上高地帝国ホテルは美しい自然あってこそのホテル。だからこそ、私たちが率先して進めていかなければならないと思っています。実際、信州産CO2フリー電気を導入、ガス・灯油はJ₋クレジットの購入によりカーボン・オフセットすることでCO2排出量を実質ゼロで運営しています。さらに、ホテルスタッフが『上高地を美しくする会』の活動に積極的に参加するなど、上高地だからこそ可能なサステナブルな取り組みも、どんどん進めています」



歯ブラシとカミソリの柄は竹製、ヘアブラシの柄は木製となった。 歯ブラシとカミソリの柄は竹製、ヘアブラシの柄は木製となった。

歯ブラシとカミソリの柄は竹製、ヘアブラシの柄は木製となった。



ホテル館内の飲用水は上高地の山からの湧き水を引き込み使用。 ホテル館内の飲用水は上高地の山からの湧き水を引き込み使用。

ホテル館内の飲用水は上高地の山からの湧き水を引き込み使用



「上高地を美しくする会」の活動にもホテルスタッフは積極的に参加している。 「上高地を美しくする会」の活動にもホテルスタッフは積極的に参加している。

「上高地を美しくする会」の活動にもホテルスタッフは積極的に参加している。



4月下旬、上高地帝国ホテルは冬の眠りから覚め、マントルピースにも火が入る。長年続く変わらぬ光景が今年も始まる。上高地帝国ホテルが大切に守り続けてきた、伝統と格式、そしてラグジュアリー感。それらを保ちつつ、SDGs達成に貢献する取り組みも積極的に続けられていく。赤い三角屋根は一見すると開業当時から変わってないかもしれない。多くの人が愛するアットホームな安心感もまた。ただ、サステナブルなホテルを目指した歩みは、今年もまた着々と進められていくに違いない。



Text by Masao Sakurai(Office Clover)


上高地帝国ホテル
長野県松本市安曇野上高地
2023年の予約は2月1日からスタート。詳しくは公式サイトを参照されたい。

最新情報をニュースレターでお知らせするほか、エクスクルーシブなイベントのご案内や、特別なプレゼント企画も予定しています。

ページの先頭へ

最新情報をニュースレターでお知らせするほか、エクスクルーシブなイベントのご案内や、特別なプレゼント企画も予定しています。