茶道家/現役ラクロス選手 小堀宗翔

Style

Living in Japanese Senses

アスリート茶人 小堀宗翔が結ぶスポーツと茶道(後編)

2020.3.27

茶道家/現役ラクロス選手 小堀宗翔の「アスリート茶会」に注ぐ情熱

遠州茶道宗家小堀宗実の次女である小堀宗翔。ラクロス元日本代表であり、現在も社会人チームで現役選手として「動」の世界を知る茶道家だ。そしてアスリートに「静」の時間を提供する「アスリート茶会」を開いている。

アスリートとして
お茶に支えられていたことに気づいて

遠州茶道の立礼席(りゅうれいせき)には二幅の軸がかかっていた。描かれているのは、きものでお茶を点てる小堀宗翔とラクロスをする宗翔だ。龍や人が躍動する姿を墨で描く西元祐貴の作品で、彼女の中の静と動の対比を見せてくれている。

西元祐貴が描いた小堀宗翔の静と動。宗翔の中の二つの面を見事に表している。 西元祐貴が描いた小堀宗翔の静と動。宗翔の中の二つの面を見事に表している。

西元祐貴が描いた小堀宗翔の静と動。宗翔の中の二つの面を見事に表している。

宗翔がアスリートにお茶を点てるようになったのは、ラクロスのワールドカップに日本代表として参加したことから始まった。「家元の内弟子として修行していた期間に、2013年のラクロス ワールドカップへの出場を果たしました。海外で日本をどう表現するか熟慮した結果、お抹茶を点てるセットを持って行き、お茶を点てることに。世界各国の選手たちに茶道を通して日本人と認識してもらえ、日本の文化をリスペクトしてもらえたのです。その後、ラクロス協会主催の国際親善試合でもお点前を披露するようになりました」。

 

海外で茶道の魅力に改めて気がついた宗翔が、「アスリート茶会」として選手たちにお抹茶を出すことを始めたのは、2014年からのことだ。「小学校から大学まで剣道や、ラクロスに打ち込んできました。大学を卒業して初めて、茶道に支えられたことに気がつき、茶道に恩返しがしたいと思ったんです。動の世界にいたからこそ、静のよさがわかります。家元である父は、本質をずらさずにやりなさいと言ってくれています」。宗翔は、茶道という『道』のつく家に生まれて、自分に何ができるか長く探してきたのだ。


2013年ラクロスワールドカップ日本代表に選出された小堀宗翔のトップアスリートとしての姿。現在は社会人クラブチーム「MISTRAL」で活躍する。 2013年ラクロスワールドカップ日本代表に選出された小堀宗翔のトップアスリートとしての姿。現在は社会人クラブチーム「MISTRAL」で活躍する。

2013年ラクロスワールドカップ日本代表に選出された小堀宗翔のトップアスリートとしての姿。現在は社会人クラブチーム「MISTRAL」で活躍する。

「今回参加してくれたラグビーの金正奎(しょうけい)さん、アメフトの前田眞郷 (しんご)さんとは、トレーニングジムが一緒というご縁がありました。もともと日本の文化に興味があったという金さんに、茶道をやってみたいと言われたんです。プロの選手は自由な時間をコントロールして、何をするかを常に考えているように見受けられます」。アスリートはいつも自分の身体能力を高めたいと思い、トレーニングに真剣に取り組んでいるが、メンタルな面も何かで高めたいと考えている。

「アスリート茶会」に集ってくれたトップアスリートたち。左から播戸竜二、 金正奎、 前田眞郷、YUI、YUUTARO。現代の武士然としたアスリートの佇まいに目を見張った。 「アスリート茶会」に集ってくれたトップアスリートたち。左から播戸竜二、 金正奎、 前田眞郷、YUI、YUUTARO。現代の武士然としたアスリートの佇まいに目を見張った。

「アスリート茶会」に集ってくれたトップアスリートたち。左から播戸竜二、 金正奎、 前田眞郷、YUI、YUUTARO。現代の武士然としたアスリートの佇まいに目を見張った。

「アスリートにとって茶道とは、自分の心を映す鏡なのではないでしょうか。戦国武将はある種のアスリート。安堵の一服と言いますが、心身と時を削っている人にとっての茶道には重みがあります。武家茶人だった小堀遠州にとっても心の拠り所だったと思います」。遠州茶道の祖、小堀遠州は大名茶人。武士の矜持を持ってお茶に臨んでいたに違いない。試合に臨む前のアスリートは、現代における武士のようなもの。時空を超え、いにしえの武士と現代のアスリートの間に、シンパシーが響き合う。

試合の前、そして後
アスリートが心を整え、「刀」をそっと置く時

茶室でも、アスリートたちは様(さま)になっている。体幹がぶれないので、あぐらをかいても美しい。一口飲んで、見せる笑顔も印象的だ。「アスリートは自分の体を見られるのに慣れているので、かっこよく、強く見える形をいつも意識しています。負けず嫌いですから、袱紗捌きもトレーニングになる。抹茶はコンディションを整えてくれます」。実際、抹茶は茶葉全体を飲むことになり、ポリフェノールやビタミン、アミノ酸などさまざまな成分を摂ることができる。

「アスリート茶会」でのひとこま。所作ひとつひとつを丁寧に、おもてなしの心を感じながら。みな一様に緊張していたが堅苦しさはない。小堀宗翔のほがらかさが、心地よい時間を作っていた。 「アスリート茶会」でのひとこま。所作ひとつひとつを丁寧に、おもてなしの心を感じながら。みな一様に緊張していたが堅苦しさはない。小堀宗翔のほがらかさが、心地よい時間を作っていた。

「アスリート茶会」でのひとこま。所作ひとつひとつを丁寧に、おもてなしの心を込めながら。参加したアスリートたちは一様に緊張しつつも和やかな雰囲気で、堅苦しさはない。小堀宗翔のほがらかさが、心地よい時間を作っていた。

トップアスリートにこそ、茶道のような、精神を整える時間が必要だと実感しているという。茶道の所作や約束事に気を取られがちだが、アスリートは茶道に、精神性と身体性の相関を見つけているのが面白いと思う。 トップアスリートにこそ、茶道のような、精神を整える時間が必要だと実感しているという。茶道の所作や約束事に気を取られがちだが、アスリートは茶道に、精神性と身体性の相関を見つけているのが面白いと思う。

トップアスリートにこそ、茶道のような、精神を整える時間が必要だと実感する宗翔。茶道の所作や約束事に気を取られがちだが、アスリートは茶道に、精神性と身体性の相関を見つけているのが面白いと思う。向かって右の赤い茶入は、日の丸をイメージしたもの。


2014年から始めた「アスリート茶会」。宗翔がアスリートに呼びかけたり、体験したアスリートからの口コミで知った別のアスリートから声がかかったりと、近年、活動が本格的に動き出しているのを感じる。依頼には早朝から夜遅くまで応えている。試合前の早朝に来たいというプロゴルファーから、ナイトゲームが終わった深夜に訪れるプロ野球の選手までさまざまだが、そのひとつひとつに、宗翔みずからが対応している。

 

今も毎日の筋トレ、毎週末のトレーニングに励み、日本一になる夢を持つ小堀宗翔。「茶の道とともに、父は剣道、私はラクロスにと、情熱を注ぐものを持っていることに血を感じます。流祖・小堀遠州がそうだったように」と語る。遠州から440年続く、武士の血が流れていることを感じるという。「金メダリストも刀を置く時間が必要。日本中のアスリートがお茶を点てるようになるのが理想です。アスリートには、自信を持って日本のことを答えられるようになってほしいですね」と言う宗翔。ふと、茶室のアスリートたちが戦国時代の武士と重なって見えた

毎日の筋トレ、毎週末のトレーニングに励み、日本一になる夢を持つ小堀宗翔。「茶の道とともに、父は剣道、私はラクロスにと、情熱を注ぐものを持っていることに血を感じます。流祖・小堀遠州がそうだったように」。遠州から440年続く、武士の血が流れていることを感じるという。 毎日の筋トレ、毎週末のトレーニングに励み、日本一になる夢を持つ小堀宗翔。「茶の道とともに、父は剣道、私はラクロスにと、情熱を注ぐものを持っていることに血を感じます。流祖・小堀遠州がそうだったように」。遠州から440年続く、武士の血が流れていることを感じるという。

現役選手として、社会人チーム「MISTRAL」で活躍する小堀宗翔。

→アスリート茶人 小堀宗翔が結ぶスポーツと茶道(前編)へ

 

(敬称略)

 

小堀宗翔 Sosho Kobori

茶道家。遠州茶道宗家13世家元次女。ラクロス選手としても活動し、2011年U22日本代表、2013年日本代表に選出された。現在は社会人クラブチーム「MISTRAL」に所属。ポジションはアタック。家元の元で修行後、茶道の普及に努めながらラクロスの現役選手としても活躍。スポーツと文化の融合・発展、アスリートに向けたアスリート茶会など新たな試みで注目を集めている若手アスリート茶人。

 

Photography by Hiroshi Abe
Text by Akiko Ishizuka

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