LED美顔器や美顔器機能を搭載したドライヤー、EMSを使用したボディ用美容器など画期的な製品を続々と生み出し、美容機器業界をけん引するのがヤーマンだ。
現在は美容機器メーカーとしてその名が知られているが、当初は美容とはまったく関係がなく、半導体の検査装置などを扱う会社として1978年にスタート。精密電子機器メーカーとして、瀬戸大橋のたわみを遠くから光を飛ばし測る非接触の検査機器なども自社で開発していた。そんな中、アメリカの取引先である精密機器メーカーからニードル脱毛器の販売を委託され、日本に紹介するとともに自社でも業務用レーザー脱毛器を開発。美容業界への扉を開くことになった。日本の美容機器メーカーの先駆者であるヤーマンの代表取締役社長/CEOである山﨑貴三代氏に、ヤーマンという企業について、美容観、そして自身のキャリアについてなど、インタビューした。
精密機器から美容機器へ。培った技術が先進性あふれる製品に
山﨑氏の前にあるのが美顔器「フォトプラス プレステージシリーズ」。美容機器専門メーカーとして40年以上の歴史を持つ、ヤーマンのこだわりが詰まっている。
「実は日本で初めて体脂肪計を作ったのもヤーマンなんです。ただ、まだ当時はサイズの大きな業務用機器の製造販売がメイン。ですので、特許は家庭用機器が作れる他社に売却しました。でもその時に体脂肪が売れるのを見て、だったら自分たちもちゃんとブランドを作って、自分たちの届けたい製品を造るべきではないかと感じたんですね。結果的にそれが会社のひとつのマイルストーンになった気がします」
1985年に開発した、手足4点で測るインピーダンス方式として日本初の体脂肪計「MICHIGAN」。
レーザー脱毛器などの美容機器も基本的に美容外科やエステ向けの業務用だったが、まだネットショッピングがない時代のある日、カタログショッピングへの掲載依頼が。当時10万円以上する機器なので売れないだろうと誰もが思っていたそうだが、予想に反し順調に販売されることに。そこから徐々に業務用から家庭用へと軸足を変えていった。
「会社自体が技術をベースに始まっているので、現在の美容機器の機能に至るさまざまな“技術の種”のようなものは、その当時から培っていたんです。でもLEDを美容に活用することがまだ一般的ではなかった時に、育毛剤をLEDで浸透させる『LED毛穴ソニックブラシ』など、早すぎてまったく売れない製品もたくさんありました(笑)」
重要なのは、“ザワザワする気持ち”を解決する機能
現在美顔器のマーケットシェアでは5年連続No.1※を誇るヤーマンだが、それだけの消費者からの信頼感はどんなところから生まれてきているのだろうか。
※(株)富士経済『美容家電&健康家電マーケティングトレンドデータ2020』2018-2019年実績、『美容&健康家電市場・関連サービストレンドデータ2023-2024』2020-2022年実績、美顔器カテゴリーにおいて、日本国内の美容家電全体におけるメーカーシェアとして
毛穴悩みや乾燥・ハリ不足・もたつきなどのエイジングサインや、日々変化する肌悩みにアプローチする美顔器。業務用レベルのRF(ラジオ波)を搭載した「フォトプラス プレステージ SP」(左)、12もの多機能を備えたヤーマンの最高峰機種「YA-MAN THE MIYABI」(右)はフラッグシップストア先行発売。
「私たちの製品は、生きるためにどうしても必要というような生活必需品ではありません。それではどうしてヤーマンの製品を選んでくださるのか。ひとつは、我々が提供しているのが、こういうことができる時間のゆとりや美に対する自分の向上心といった、心の豊かさを感じるツールだということです。ちょっと高価なものでもありますし、夢や憧れという部分も感じてくださっているかもしれません。そして同時にもうひとつポイントになるのが、“ザワザワする気持ち”だと思うんです」
それは強い言い方をすれば、自分の未来への変化に対する一種の恐怖感と言えるだろう。
「例えばバッグやアパレルは、やっぱりワクワクして買うものですよね。でも美容機器の場合は『何もしないと私は10年後どんな肌に、どんな顔になってしまうのだろう』というような心がザワザワする、ちょっとした恐怖感のようなもの。皆さんそんな気持ちから化粧品も含め美容機器を購入されるのだと思います」
だからこそ、そのザワザワ感を解決できる機能が重要なのだと山﨑氏は言う。
「お客様の気持ちに対し、機械が本当にやってくれるのか。美容機器として、結果をもたらしてくれる機能は絶対に必要です。その結果をどう保証するか、そのためにこれまで培ってきた技術を存分に活かすだけではなく、『表情筋研究所』を社内に開設しました。『テクノロジー』と『サイエンス』の双方の視点から、さまざまな方法で表情や皮膚の研究と技術の開発を続けています」
「製品がヤーマンの顔」と語る。「メーカーであることが一番の強みなんです」
ゆえに製品開発するうえで大事なのは、市場調査を重ねて人々が欲しいものを作るやり方ではなく、欲しいと思ってもらえるものを提案すること。
「単に今欲しいというモノではなく、人が求める効果を掘り下げ、それを実現する技術によって『あなたが欲しいのはこういうモノなのでは?』というものを作っています。そうやって問いかけ続けて、今に至るのがヤーマンなのです。だからみなさんが『そうなのか、じゃあ使うべきなのかも』と気づいて、自分の大切なお金を費やしてくださる。ブランドとして常に新しくなっていくこと、そしていつもザワザワするものをお届けできているのか、それが一番大切なのです」
今ある要望ではなく、さらなる美の効果を提案することで新たな市場を作る、それがヤーマンのモノ作りなのだ。
「常に新しいものを、というのは社風というかヤーマンのDNAなのかもしれません。なにしろ創業当時は美容とは無縁の会社。それが急流を流れるように常に次へ次へと新しい場所へと変化していくのがヤーマンなのだと思います」
海外経験から、日本をそして自分を客観視できた若手時代
自身も大学卒業後、ヤーマンに就職したのは時代に即時に対応していたからだという。
「やっと男女雇用機会均等法が制定され、女性も男性同様の就職機会を得られるようになった時代。それまでは会社によっては女性は受けることもできませんでしたから。ヤーマンはまだ小さな会社でしたが、当時学生の私がすごいなと思ったのが男女同賃金だったこと。さらに創業者が『うちは余裕ないから働いてもらわないと困る』という方だったので(笑)いろんなことを経験させてもらいました」
20代で当時シリコンバレーにあった支社でアメリカ勤務を経験。さらにイタリア・ボローニャで開催される世界最大の化粧品・美容機器関連の展示会「コスモプロフ・ワールドワイド・ボローニャ」にも参加した。
「英語も大してできず、とにかく行かせてもらったからには何か成果を出さなくてはと必死でした。でも若い時に外から見る日本や、日本を離れて知る自分の実力をすごく考えることができて、自分のキャリアにとってとても良い経験だったと思います」
「美容大国でもあるアメリカ支社での仕事は、自分にとってとても大きな経験になりました」
ヤーマンの想いを発信する、初のフラッグシップストア
家庭用美容機器メーカーとして躍進を続けているヤーマンだが、昨年グローバル フラッグシップストア「YA-MAN the store GINZA」(ヤーマン ザ ストア ギンザ)をオープン。これまでは家電量販店等への卸やオンラインショップが主だったが、初めてB to Cの場所を設けた。
「家電量販店などさまざまな場所で製品を販売させていただいたり、CM放映もしましたが、やっぱりまだ『ヤーマンって何をやっている会社?』と言われることも多いんです。だから私たち自身が開いた場所で、直接お客様に我々の製品を見ていただき、ヤーマンが何者で、どういう想いでやっているのかを知っていただきたい。百聞は一見に如かずだと思うんです。自分たちが本当に発信したいことを発信していける場所として活用すること、それがこのフラッグシップストアの使命だと考えています」
銀座中央通りに2023年11月にオープンしたグローバル フラッグシップストア「YA-MAN the store GINZA」(ヤーマン ザ ストア ギンザ)。2階に顔専門トレーニングジム「FACE LIFT GYM(フェイス・リフト・ジム)」を併設する。Photo: Tomooki Kengaku
銀座という場所柄、中東やヨーロッパ、中国など世界中のお客様が毎日数多く訪れて、購入される方も多いそうだ。
「ヤーマンをご存じない方も多いのですが、製品を見てこんなものが世の中にあるの?とびっくりされますね。機能やコンパクトさに驚かれて買われる方は多いです。やっぱりきめ細かな、かゆいところに手が届くような機能など、日本らしいと思われるのではないでしょうか」
2階には顔専門のトレーニングジム『FACE LIFT GYM(フェイス・リフト・ジム)』もオープン。広い贅沢なスペースに専用ブースを設け、専門のトレーナーによるヤーマンの最新美容機器を使った表情筋トレーニングを提供する。
「美容機器を実際に使うので、最新機器を試したり、すでにお持ちの方なら正しい使い方やコツをつかむなどしながら、表情筋を鍛えることができます。またほうれい線の長さなどここで計測したデータは、表情筋研究所で活用して新しい機能や、新製品を生み出していく予定です」
ブース内でトレーナーと1対1で表情筋トレーニングを行う。メニューにあわせてさまざまなヤーマンの製品を使用する。
ヤーマンのコーポレートスローガンは「美しくを、変えていく」。そこには「スキンケアのその先へ」という想いが込められている。
「スキンケアはもちろん大事ですが、それですべてのことができるわけではありません。特にリフトケアは、スキンケアでは難しく機械によるトリートメントが必要です。スキンケアの、さらにその先の美しさのためにヤーマンは存在すべきと考えています」
そこには日本の美意識も込められている。
「100年前の建物に住むヨーロッパと違い、数十年で街が変わっていくのが日本。私にとって日本の美意識とは“日々新た”ということ。自分がいつも新しくなっていく、そんな凛とした美しさが日本の美しさでもあるということも、この言葉には込められているんです」
美顔器を美容の新たな習慣として、世界に届ける。
美容機器ブランドとして、アジアを始め、昨年からは米国での展開も本格的に始まった。
「スキンケアはほとんどの方がしていますが、美顔器となると使ったことがない方も多いですし、まだまだ習慣とはなっていません。そんな美容の習慣を変えること。まさに『美しくを、変えていく。』ことができると思っています。日本でもまだ美顔器を使ったことがない方が多いのですから、海外にはもっと知らない方が多い。だから、美顔器という新たなカテゴリーを作ることができる、大きなチャンスだと思っています。
美の基準は異なりますが、美しさを追求するのは世界中同じこと。日本市場が潤っていた時は、日本で成功したら海外へという考えで良かったかもしれませんが、韓国のように自国の市場が小さければ最初から外を目指す、今はそうやってどんどんグローバル市場を目指すべきだと思っています。私たちの美容機器がグローバルになれる良いチャンスだと思っています」
「自分自身で使って良いと思えるものをおすすめできるのは、美容業界における女性社長としての特権だと思います」
社長として大切にしていることは?と聞けば、「社長とは、例えば沈没する船で最後のひとりになるまで責任を持つ“ラストマン”であること」と笑顔で答えた山﨑氏。
その覚悟のもと、初のフラッグシップストアという形でヤーマンの新たな航路が始まった。常に新たな変化を求め、止まることのない技術革新で「美しくを、変えていく。」その思いは日本だけではなく、きっと世界の隅々に届いていくに違いない。
顔専門トレーニングジム「FACE LIFT GYM(フェイス・リフト・ジム)」のラウンジにて、Premium Japan発行人・島村と。
山﨑貴三代 Kimiyo Yamazaki
大学卒業後、ヤーマンに入社。マーケティング部門や海外部門を経て、1999年に社長に就任。美容機器市場をリードするヒット商品を世に送り出す。ミネラルコスメでコスメ市場にも参入し、美顔器、ヘアケア、オーラルケアなど、幅広く美容機器を展開する。2023年11月全製品をそろえる初のグローバル フラッグシップストア『YA-MAN the store GINZA』(ヤーマン ザ ストア ギンザ)をオープンするなど、積極的な展開を推し進めている。
島村美緒 Mio Shimamura
Premium Japan代表・発行人兼編集長。外資系広告代理店を経て、米ウォルト・ディズニーやハリー・ウィンストン、 ティファニー&Co.などのトップブランドにてマーケティング/PR の責任者を歴任。2013年株式会社ルッソを設立。様々なトップブランドのPRを手がける。実家が茶道や着付けなど、日本文化を教える環境にあったことから、 2017年にプレミアムジャパンの事業権を獲得し、2018年株式会社プレミアムジャパンを設立。
Photography by Toshiyuki Furuya
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