【和菓子ってなに?】 和菓子についての基礎知識【日本人にも外国人にもわかりやすく説明】【和菓子ってなに?】 和菓子についての基礎知識【日本人にも外国人にもわかりやすく説明】

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マダムワタナベの日本文化講座

2025.4.6

【和菓子ってなに?】和菓子についての基礎知識【 日本人にも外国人にもわかりやすく説明する】

ごきげんよう。マダムワタナベの日本文化講座へようこそ。

 

今日のテーマはワガシ(和菓子)について、日本人にも、外国の方にもわかりやすく説明していこうと思います。

 

和菓子の歴史や種類、そしてこの数十年で、ダイフク(大福)など、モチ(餅)やアン(餡)を使ったスイーツが世界中で人気を集めている理由について、考察していきます。




今、私は大変感慨深い思いに浸っています。なぜなら、東アジア文化圏で生まれ育っていない方々に、和菓子―――モチ(餅)やアン(餡)で作られた日本のスイーツ―――が受け入れられる時が来るとは、想像できなかったからです。




忘れられない出来事があります。

 

 

それは1980年代の初頭のことでした。「夜のヒットスタジオ」という、そうですね、イギリスのBBC1が放映していた音楽番組「Top of the Pops」のような、人気歌手やバンドが出演するTV番組がありました。その晩は、イギリスからある女性グループが特別出演していました。




その日、一緒に出演している日本人の女性アイドル歌手が、彼女たちのために手作りの和菓子—おそらく、ひとくち大にしたダイフク(大福)—を用意し、その場で食べてもらうというコーナーがあったのです。




テレビの前の私には、とてもとても嫌な予感がありました。

そして残念ながら、私の勘は当たってしまいます。彼女たちはそのスイーツを口に入れてすぐ、吐きだしてしまったのです……。




彼女たちを責める気持ちはありません。彼女たちにとっては未知の食べ物、その背景にある食文化などの知識がまったくない状態で、ダイフクの美味しさが理解できるわけがないと考えるからです。




少なくとも20世紀の終わり、つまり20数年前までは、モチ(餅)のスティッキーなテクスチャーがワイアードだの、マメ(豆)を砂糖で煮たものをスイーツとして食べるなんて信じられないなど、ヨーロッパやアメリカから来日した方々からは、あまりいい印象を持たれていなかったことは確かだったのです。




この数十年の間に、ユズ(柚子)や、マッチャ(抹茶)などの日本の食材や、ウマミ(旨味)など日本人の持つ味の概念が少しずつ欧米の食文化の中にも広がり、とうとう、モチのスティッキーさは、ワイアードではなくなったのです。つまり、その食文化を理解するには多くの体験を必要とするということなのでしょう。




さあ、これから和菓子の歴史を簡単に走り抜け、バラエティ豊かな和菓子の種類なども説明しましょう。英語で読める本なども紹介します。














和菓子ってなに?:日本の歴史に育まれた和菓子



和菓子の歴史は、古代に遡ります。最初は木の実などをすりつぶしてまとめた、本当に素朴なものだったと想定されます。奈良時代(710-794年)には、中国から伝わった製法を元に、日本独自の餅や団子が作られ始めました。その後、平安時代(794-1185年)から室町時代(1336-1573年)には、宮廷文化と共に技術も進化しました。


この頃中国からやってきたお菓子が今も作られています。神奈川県小田原の名物「ういろう」というお菓子は、1368年に中国からやってきた陳 延祐が帰化し、エンペラーに仕えていたときに作られたお菓子。米粉と黒砂糖を混ぜて蒸した素朴なお菓子です。




大きな転換期は室町時代(1336-1573年)に起こります。サドウ(茶道)の発展に伴い、チャセキ(茶席。ティーセレモニーのこと)で供される繊細で美しい和菓子が求められるようになり、現在の和菓子の原型が形成されていきました。


和菓子とは、ワ(和)=日本の、カシ(菓子)=スイーツ、つまり日本のお菓子という意味です。

その対義語としてヨウガシ(洋菓子)という言葉もあります。ヨウ(洋)=ウェスタンスタイル、西洋のお菓子というように、日本人は区別しました。



和菓子ってなに?:餅や豆が主な素材となるヘルシーなお菓子です




和菓子に使われる素材として、主にモチ(餅)とアン(餡)があります。


モチは、コメ(米)の種類の中でも、モチゴメ(餅米)を用います。食事に用いられるコメである、ウルチマイ(うるち米)と比較すると、粘りが強いのがモチゴメ。その特性を生かしてモチにしていきます。

もちつき もちつき

伝統的なモチの製法は、蒸したモチゴメをウス(臼。モチ専用の石の容器)で叩きつけながら、成形していく。


アン(餡)は、アズキ(小豆)を煮て、柔らかくなったところに砂糖を入れて、さらに水分がなくなるまで長時間煮て作ります。



あんこ あんこ

砂糖で長時間煮る前に、アズキを水につけ置きし、水煮するなどの下処理が、美味しいアンを作るために必要。時間のかかる作業だ。





和菓子ってなに?:日本の四季を表現するスイーツ



和菓子は—茶道の中で食されるネリキリ(練きり)から、庶民が日常的にカジュアルに食べるものまで—季節感を大切にしています。自然の移り変わり、四季を表現することが、重要な要素となっています。


春には桜や若葉を、夏には涼しげな水辺を、秋には紅葉や栗を、冬には雪景色や梅の花を模した和菓子が作られます。季節の変化を視覚的に表現し、その季節ならではの味覚を楽しむことができます。

 


また、和菓子は季節の行事や祝い事にも欠かせません。様々な行事に合わせて特別な和菓子が作られ、その行事を彩ります。では、季節ごとの和菓子を紹介しましょう。


【春】

日本の春を代表する桜をモチーフにしたサクラモチ(桜餅)、ドウミョウジ(道明寺)、若草色の草餅など、冬の終わりを感じさせるピンクやグリーンなどの美しい色が特徴です。



春の和菓子 春の和菓子

写真左上から時計回りに、小麦粉をクレープ状に焼いたものでアンをくるんだサクラモチ(桜餅)、ドウミョウジ(道明寺)、サクラの花びらの塩漬けを乗せたサクラジョウヨマンジュウ(桜薯蕷饅頭)、ヨモギの葉を蒸して細かくしたものを混ぜたクサモチ(草餅)。


【夏】

初夏の五月に食べるカシワモチ(柏餅)をはじめ、爽やかなミズヨウカン(水羊羹)、涼しげなミナヅキ(水無月)など、暑い夏をしのぐため、涼しげな見た目の和菓子が多いです。



夏の和菓子 夏の和菓子

写真左上から時計回りに、5月の節句という男の子を祝う日に食べるカシワモチ(柏餅)、夏のワガシといえば冷やしたミズヨウカン(水羊羹)、ゼリー状のクズの食感が夏らしいクズマンジュウ(葛饅頭)、白いういろうに甘く煮た小豆をのせて三角形に切り分けたミナヅキ(水無月)。


【秋】

クリヨウカン(栗羊羹)、クリマンジュウ(栗饅頭)など、秋に収穫される栗を使った和菓子が登場する季節です。秋また9月の満月の夜に食べるツキミダンゴ(月見団子)や仏教徒が墓参りをする9月のオヒガン(お彼岸)の際に食べるオハギ(おはぎ)などもあります。



秋の和菓子 秋の和菓子

写真左上から時計回りに、ヨウカンに栗をたっぷりいれたクリヨウカン(栗羊羹)、小麦粉で焼いた皮でアンと栗をくるんだクリマンジュウ(栗饅頭)、モチゴメを焚き、俵型(barrel shape)に整えてアンでくるんだオハギ、9月の満月の晩に食べるツキミダンゴ(月見団子)。




【冬】

新年の祝いや、その年最初の茶会に出されるハナビラモチ(花びら餅)、春を告げる鳥・鶯を模したウグイスモチ(鶯餅)、厳冬の時期にも甘い香りを放つ梅の花を模したウメ(梅)のネリキリ(練きり)も冬のお菓子です。また家庭ではお正月に残ったモチ(餅)で、オシルコ(お汁粉)を楽しみます。



冬の和菓子 冬の和菓子

写真左上から時計回りに、新年を祝うときに食べるハナビラモチ(花びら餅)、ギュウヒ(求肥)でアンを包み、うぐいす粉(緑色の豆の粉)をまぶしたウグイスモチ(鶯餅)、オシルコ(お汁粉)、梅の形に美しく整えたネリキリ(練きり)。




和菓子ってなに?:バラエティに富んだ種類があります


ワガシとひとことで言っても大変な種類があります。ここでは通年食べられる、ポピュラーな和菓子を紹介しましょう。

 

 

ダイフクやオハギ、ダンゴなどの庶民的な和菓子と、茶道などで供されるネリキリ、そしてモナカやカステラなども和菓子の仲間です。


ネリキリ(練きり)

茶道などで供されるネリキリという、美しい細工のお菓子のことです。シロアン(白餡)をベースにしたものに、美しいカービングを施します。モチのような食感がありますが、モチではなくギュウヒ(求肥)が使われています。ギュウヒ(求肥)とは、粉状にしたモチゴメに砂糖や水あめを混ぜて練り上げたもの。モチよりもやわらかく、なめらかな食感が特徴です。


いろいろな種類の和菓子 いろいろな種類の和菓子

ネリキリは、季節の植物や動物、風物を美しく表現したワガシ。



ダイフク(大福)

乾燥したモチゴメ(もち米)をパウダー状にし、砂糖を混ぜて伸ばしたもので、アン(餡)を包みます。アンは小豆を砂糖で煮て、水分を飛ばして作ります。アンを包むモチやクラッカーのことを日本人はカワ(皮)と呼びます。ダイフクは通年食べられるものです。


大福 大福

ダイフク(大福)は海外でもポピュラーなお菓子になりつつある。

約40年ほど前、ダイフクのアンの中に生のイチゴを入れた、イチゴダイフクが考案されました。アンの甘さにイチゴの酸味がマッチし、すぐに全国的に広がりました。今ではブドウやマンゴーなど、さまざまなフルーツを合わせた、フルーツダイフクが人気を集めています。



イチゴダイフク イチゴダイフク

アンの甘さとイチゴの酸味が美味しいイチゴダイフク(苺大福)。




オハギ

もち米とうるち米を混ぜて炊き、ひとつずつ丸めて、アンで周りを包んでカタチを整えたものです。つまり、もち米のオニギリをアンで包んであるのです。アンの他、大豆を焙煎して粉末にし、砂糖を混ぜたキナコ(黄粉)をまぶしてあるものなどもあります。



おはぎ おはぎ

オハギは通年食べますが、年に2回春と秋にあるオヒガン(お彼岸)という、お墓参りをするシーズンに特に食べられるものです。


モナカ(最中)

モチ米の粉を薄くのばして焼いた、薄いウェハースのようなクラッカーであるカワ(皮)とカワの間にアン(餡)を入れて作るもの。パリパリとした食感とアンの甘さを楽しみます。最近ではファインダイニングのシェフたちがモナカの皮を取り入れた料理をよく見かけます。

 

 



最中 最中

パリパリとした食感の皮と、アンの甘みがマッチ。日本茶やほうじ茶と試してみてほしい。



ドラヤキ(銅鑼焼き)

小麦粉、卵、砂糖などの材料を混ぜて円形に焼いた2枚のパンケーキ(ドラヤキのパンケーキのことを日本人はカワ[皮]と呼びます)の間にアンを挟んだもの。ふっくらとしたパンケーキにアンがマッチし、日本では手土産の定番のお菓子です。

 

 

日本人はアン(餡)を挟むものがモチであれ、クラッカーであれ、パンケーキであれ、総称してカワ(皮)と呼びます。



どらやき どらやき

ふっくらとしたパンケーキでアンを挟んだお菓子。マダムワタナベのフェイバリットは浅草にあるカメジュウ(亀十)のドラヤキ。



カステラ

卵・砂糖・水飴・小麦粉を混ぜ合わせ、オーブンで焼いたお菓子。400年前、ポルトガル人が日本に紹介しました。日本人がこのお菓子の名前を尋ねたところ「「ボロ・デ・カステラ(カスティーラ王国[現在のスペイン]のお菓子だ)」と答えたのを、お菓子の名前だと勘違いした、という説があります。


カステラ カステラ

日本に入ってきて400年経つカステラ。


まだまだたくさんの種類がありますが、今回はここまでにしましょう。

 

和菓子は日本人の美意識を凝縮したようなもの。そしてバターなど油脂を使わずカロリーも控えめでとてもヘルシーなのも現代にマッチしています。

 

コンビニエンスストアにもダイフクやヨウカンが売っていますから、まず、いろいろ食べてみることが和菓子を知る近道です(最近のコンビニのスイーツはあなどれません)。

 

 



和菓子を知るためのガイド


英語で読める和菓子についての本を2冊ご紹介しましょう。美しいビジュアルと共に楽しんで読めると思います。



Book

和の菓子 和の菓子

和の菓子

京都の老舗和菓子店、川端道喜(カワバタドウキ)や、亀屋伊織(カメヤイオリ)の和菓子を、美しい写真と詩人の高橋睦郎の言葉で綴る写真集です。日本語と英語のバイリンガルの、まさにコーヒーテーブルブック。自宅でゆっくりと美しい写真を眺めながら見るのにぴったりです。パイインターナショナル刊 https://amzn.to/3Ydi3GR

 

 


英語で読む和菓子50選 英語で読む和菓子50選

英語で読む和菓子50選

日本人の生活になじみのある和菓子50種を水彩画と英文で解説。素材、製法から、歴史まで網羅しています。誠文堂新光社刊

https://amzn.to/4i6BZTa




【マダムワタナベとは】
日本文化に造詣の深い、謎の日本人女性。ちなみに欧米の株式市場に現れる日本からの小口投資家群・ミセスワタナベとは関係がない。

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