エントランスを入ると、目の前に飛び込んでくるアイコニックなバー。水盤にときおり水の雫が落ち、水紋が広がる様子を飽くことなく見てしまう。

Style

Living in Japanese Senses

湯河原に誕生したコクーンのような宿

2020.1.23

温泉と美食に和む全室露天風呂付の宿「三輪湯河原」のくつろぎ

エントランスを入ると、目の前に飛び込んでくるアイコニックなバー。水盤にときおり水の雫が落ち、水紋が広がる様子を飽くことなく見てしまう。

湯河原駅から温泉街を抜け、急こう配の小径をあがっていく。ここは明治時代に「理想郷」と名付けられ、小説家や政治家などが別邸を構えたことで知られるエリアだ。数寄屋造りの邸宅や旅館をいくつか通り過ぎ、到着したそこはまるでミュージアムのような建物。ここまでの湯河原の情緒とは異なる、スタイリッシュな外観の建物は、2019年12月にオープンした「三輪湯河原」である。

内田デザイン研究所が設計を手がけた 温泉宿「三輪湯河原」のエントランス。光をイメージした外観に旅の期待は高まる。 内田デザイン研究所が設計を手がけた 温泉宿「三輪湯河原」のエントランス。光をイメージした外観に旅の期待は高まる。

内田デザイン研究所が設計を手がけた 温泉宿「三輪湯河原」のエントランス。光をイメージした外観に旅の期待は高まる。

ホテルと旅館の美点をひとつに
現代人の求める温泉宿

ロビーに入ると、たっぷりと水の張られた大きな水盤が現れる。その向こうにはバーカウンターが横たわり、窓からは山々の稜線を見渡す借景が広がり、いま旅の途中にあることを思い出させる。内田デザイン研究所の設計となるこのスタイリッシュな温泉宿は、客室数わずか17室の小さな宿だ。現代人にマッチする、温泉の楽しみを提案してくれる。

 

全室露天風呂を備える客室で構成されているのが、「三輪湯河原」の特徴だ。部屋に通されると、広めのテラスにモダンな湯舟が置かれているのが真っ先に目に入る。さっそく湯舟に手足を伸ばす。思うがまま何度も、素直でやわらかな湯河原の湯につかれば、体も心もゆるんでくる。少し飽いたらバスローブにくるまって、ベッドに体を投げ出す。客室で、ゆったりとくつろいで過ごすのが「三輪湯河原」の最適な過ごし方だ。そしてまた湯につかる。静かだ。この静けさが何よりのもてなしと思う。


客室内は木をふんだんに使用。ミニマルなしつらえに癒され、いつまでも温泉とたわむれていたいと思わせる。 客室内は木をふんだんに使用。ミニマルなしつらえに癒され、いつまでも温泉とたわむれていたいと思わせる。

客室内は木をふんだんに使用。ミニマルなしつらえに癒され、いつまでも温泉とたわむれていたいと思わせる。

山の稜線を見渡せる部屋、木立の中に居るような部屋など、階層により眺望も湯舟も異なる。 山の稜線を見渡せる部屋、木立の中に居るような部屋など、階層により眺望も湯舟も異なる。

山の稜線を見渡せる部屋、木立の中に居るような部屋など、階層により眺望も湯舟も異なる。

全17室のうち、スイートルームは1室。 全17室のうち、スイートルームは1室。

全17室のうち、スイートルームは1室。

ゆったりとした広さのスイートルームの浴室。益子の作家 郡司庸久と郡司慶子(郡司製陶所)が、デザインし焼き上げた飴釉タイルの湯舟が美しい。 ゆったりとした広さのスイートルームの浴室。益子の作家 郡司庸久と郡司慶子(郡司製陶所)が、デザインし焼き上げた飴釉タイルの湯舟が美しい。

ゆったりとした広さのスイートルームの浴室。益子の作家 郡司庸久と郡司慶子(郡司製陶所)が、デザインし焼き上げた飴釉タイルの湯舟が美しい。


うるわしい創作料理を
自社輸入のイタリアワインで

ここで供されるのは、イタリアンと和食の創作料理だ。湯河原で採れた野菜や魚の持つ力を引き出し、洗練された料理に出合うことができる。ふたつの異なるジャンルの料理はよく調和し、一皿ごとに目を楽しませ、味に驚くよろこびがある。自社輸入するイタリア産ワインが用意されているのも「三輪湯河原」での楽しみのひとつ。今後はイタリアからワインメーカーを招き、メーカーズディナーも企画しているというほどだ。

写真左から蓮根豆腐、牛ロースあぶり寿司、甘鯛けんちん汁で構成された前菜の一汁二采。手前は、フォアグラのテリーヌにフレッシュ無花果をサンドしたフォアグラ最中。写真右はイタリア産のフレッシュポルチーニの天麩羅 トリュフ塩添え。イタリアンと和がよく調和している。 写真左から蓮根豆腐、牛ロースあぶり寿司、甘鯛けんちん汁で構成された前菜の一汁二采。手前は、フォアグラのテリーヌにフレッシュ無花果をサンドしたフォアグラ最中。写真右はイタリア産のフレッシュポルチーニの天麩羅 トリュフ塩添え。イタリアンと和がよく調和している。

左:蓮根豆腐、牛ロースあぶり寿司、甘鯛けんちん汁で構成された前菜の一汁二采。手前は、フォアグラのテリーヌにフレッシュ無花果をサンドしたフォアグラ最中。右:イタリア産のフレッシュポルチーニの天麩羅 トリュフ塩添え。
イタリアンと和がよく調和している。

左から、相模湾の真鯛のグリル彩大根と大根のポレンタ淡雪塩。写真右は、国産黒毛和牛サーロイン 北海道産生雲丹 地野菜添え。洗練が過ぎると素材の野性味を減じてしまいがちだが、その難しい境界をよく制した料理が魅力的。 左から、相模湾の真鯛のグリル彩大根と大根のポレンタ淡雪塩。写真右は、国産黒毛和牛サーロイン 北海道産生雲丹 地野菜添え。洗練が過ぎると素材の野性味を減じてしまいがちだが、その難しい境界をよく制した料理が魅力的。

左:相模湾の真鯛のグリル彩大根と大根のポレンタ淡雪塩。右:国産黒毛和牛サーロイン 北海道産生雲丹 地野菜添え。
洗練が過ぎると素材の野性味を減じてしまいがちだが、その難しい境界をよく制した料理が魅力的。

光の中、やわらかな発色を見せるシルクのしつらえと流木のインスタレーション。湯河原の自然の温かさを感じさせる作品は、熱海在住のファッションデザイナー 新居幸治によるもの。 光の中、やわらかな発色を見せるシルクのしつらえと流木のインスタレーション。湯河原の自然の温かさを感じさせる作品は、熱海在住のファッションデザイナー 新居幸治によるもの。

光の中、やわらかな発色を見せるシルクのしつらえと流木のインスタレーション。湯河原の自然の温かさを感じさせる作品は、熱海在住のファッションデザイナー 新居幸治によるもの。


ひとつとして同じものはない
湯河原の魅力を高めるアートワーク

客室やレストランのしつらえは、気鋭のアーティストたちに託された。客室を飾る水墨画を思わせるアートワークを手がけたのは、グラフィックデザイナーの小菅謙三だ。作品は、客室内に小菅が入り、1点ずつ書かれたもの。ひとつとして同じものはない。それぞれ異なる部屋、窓からの風景からインスパイアされたものが描かれている。熱海在住のファッションデザイナー 新居幸治は、レストランの天井にさざ波のように広がるシルクのしつらえを制作した。時間によって刻刻と変わる外光や室内のライトによって、見える色の濃淡の違いが温かみのある時間を作る。

左:実際に客室に入り、ひとつずつ作品を制作していったグラフィックデザイナーの小菅謙三。右:アントワープ王立芸術アカデミーファッション科を卒業後、熱海にアトリエを持ち、「エタブルオブメニーオーダーズ」を立ち上げた新居幸治。 左:実際に客室に入り、ひとつずつ作品を制作していったグラフィックデザイナーの小菅謙三。右:アントワープ王立芸術アカデミーファッション科を卒業後、熱海にアトリエを持ち、「エタブルオブメニーオーダーズ」を立ち上げた新居幸治。

左:実際に客室に入り、ひとつずつ作品を制作していったグラフィックデザイナーの小菅謙三。
右:アントワープ王立芸術アカデミーファッション科を卒業後、熱海にアトリエを持ち、「エタブルオブメニーオーダーズ」を立ち上げた新居幸治。

インディヴィジュアルな温泉と
ソーシャルなバーで
体を休ませ、心を遊ばせる

「三輪湯河原」は、当初から内田デザイン研究所に設計を依頼すると決めていたという。その際の注文はただひとつ。バーを作ることだったという。旅にはバーが必要なのだ。グラスをかたむけながら、隣り合った人と交わす短い会話や視線の交錯に、旅の醍醐味があるという。「三輪湯河原」のアイコニックなバーは、日中は山のなだらかな稜線が目を楽しませ、木々の彩りは季節を知らせる。夜には闇の中にキャンドルライトの揺らめきが心を鎮める。なるほど、夜のひとときに、旅の語らいが始まる楽しさを教えてくれた。

夜の闇にキャンドルやダウンライトがやさしく光り、静かな夜にくつろぐバー。 夜の闇にキャンドルやダウンライトがやさしく光り、静かな夜にくつろぐバー。

夜の闇にキャンドルやダウンライトがやさしく光り、静かな夜にくつろぐバー。

客室の独立性を高め、ゲストの思うままに自由な時間を提供するスタイルを大切にしつつ、レストランやバーでは語らいを楽しむ旅のソーシャルシーンも演出する「三輪湯河原」。都会を離れて心に静けさを取り戻したいとき、やわらかなコクーン(繭)の中で安らぐような宿、「三輪湯河原」が待っていてくれる。

 

(敬称略)

三輪湯河原
神奈川県足柄下郡湯河原町宮上206
0465-46-6111
http://miwayugawara.jp/

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