葉山 加地邸 巨匠・ライトの弟子、遠藤新の名作住宅に滞在する
葉山の小高い丘にある登録有形文化財「葉山 加地邸」が宿泊施設になった。
ここ加地邸は、近代建築の三大巨匠として知られるフランク・ロイド・ライトの高弟である、遠藤新が設計した貴重な建築物である。フランク・ロイド・ライトといえば、現在は愛知県に移築された東京帝国ホテルの設計を手掛けたことはよく知られている。この東京帝国ホテルの建設スタッフとして関わったのが建築家・遠藤新である。その後も「自由学園明日館」「旧山邑家住宅(現淀川製鋼所迎賓館)」など、ライトが日本において設計にかかわった建築のすべてにおいて、設計から竣工までを実質的に支えてきた人物である。
歴史的な建築の美と自然の融和が生み出す心地よさ
庭も当時のままの趣を残しており、葉山の街を見下ろす。
「葉山 加地邸」は三井物産のロンドン支局長を務めた加地利夫の別邸であり、1928年(昭和3年)に建築された。のちに東京・白金三光町にも遠藤新設計の「加地本邸」が建築されたが、現在は取り壊されている。
玄関側から庭を見る。
左手の庭に開かれたラウンジ。家具は当時のもの。
2階のメインベッドルーム。
加地邸は自然と融合したプレーリースタイル建築として知られている。住宅の柱には、東京帝国ホテルを彷彿とさせる大谷石が使われており、内と外が緩やかにつながる設計になっている。建物内の家具も遠藤新が設計し、室内のどこに立ってもその空間が美しく広がって見え、緑豊かな庭を常に感じられるように窓が設けられている。
室内はその細部までにこだわりを感じ、職人たちの見事な仕事ぶりがうかがえる。ここに莫大な時間と費用が掛けられていることが伺え、その素晴らしい建築は必見に値するものだ。
地下に作られたスパ。
かつてはビリヤード室だった空間。
加地邸は約90年もの間、加地一族が別荘として使用しており、ほぼ改修されることなく、遠藤新の建築哲学がそのまま息づいて残されていた。しかしその反面、屋根の修繕や水道整備、躯体の防水などの必要性も迫られている状況であった。そこで加地邸の現オーナーは、歴史的遺産はそのままに、安全や快適性を求めるための修繕や復元を行ったと言う。
使用人部屋となっていた地下には新たにスパをつくり、静謐な雰囲気の空間が追加された。復元修復は新築よりも容易くはなく、費用もさらに掛かる。しかし敢えてそれを選択したのは、この建築物をできる限りそのまま残したいと言うオーナーの強い思いからである。そしてそのおかげで、私たちはその美しい空間を感じることができる。
Photography by🄫kachitei
葉山 加地邸
神奈川県三浦郡葉山町一色1706
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