佐藤可士和さん

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Portraits

佐藤可士和の仕事、その軌跡を辿る(後編)

2020.3.13

佐藤可士和が自身をブランディングする、国立新美術館「佐藤可士和展」

展覧会では「ロゴという実態のない“データ”をポップアートのように見せる」と語る佐藤可士和は、他にも観客をあっと驚かせるような仕掛けを色々用意しているという。

 

「今回の展覧会は、まだ世に出ていない、いくつかの新しいプロジェクトの発表の場にもなります。現在進行中のプロジェクトの最新状況をこのタイミングに合わせて発表する、という計画もあります。だから、美術館に行って初めて目にするもの、行かないと見られないものがたくさんあるんです。過去の仕事を並べるだけではなく、まさに今、動いているプロジェクトを体験してもらえるというのが、現役デザイナーの展覧会の醍醐味じゃないかなと思います」。

 

会場内に、あるブランドのショップをそのまま作り、そこで買い物できるようにするという企画もあるそう。またこれまで全く仕事をしたことのないクライアントとタッグを組んだ新プロジェクトの発表も予定しているというから驚く。

経済産業省による「JAPANブランド育成支援事業」の一環として2006年にスタートした「今治タオル」のブランディングプロジェクト。ロゴマークの3色は今治タオルの品質を支えている太陽、海、空、水などの豊かな自然をイメージしている。 経済産業省による「JAPANブランド育成支援事業」の一環として2006年にスタートした「今治タオル」のブランディングプロジェクト。ロゴマークの3色は今治タオルの品質を支えている太陽、海、空、水などの豊かな自然をイメージしている。

経済産業省による「JAPANブランド育成支援事業」の一環として2006年にスタートした「今治タオル」のブランディングプロジェクト。ロゴマークの3色は今治タオルの品質を支えている太陽、海、空、水などの豊かな自然をイメージしている。

「ショップを作るということも、ブランディングの重要な仕事のひとつ。僕はブランドのネーミングやロゴデザインからストアデザインまで、つまり人々がブランドを見て認知してから商品を買うところまでデザインしています。そういったすべてのエクスペリエンスを通して、そのブランドの本質を感じてもらうというトータルプロデュースが僕の仕事。だから、今回、『佐藤可士和展』での“買って帰えるという仕組み”も作品だと言えます。ミュージアムショップには今治タオルをはじめとした、これまで協働してきたクライアントや初めてコラボレーションするクライアントと、この展覧会に合わせて作るグッズが並びます。ステイショナリーやお酒、食品、アパレルなど、“買って帰れるアート”をたくさん用意する予定です」。

ミケランジェロやダ・ヴィンチの仕事にブランディングの源流を見る

もちろん、現在進行形のプロジェクトだけでなく、子供時代に描いた絵や、大学を卒業してすぐに手がけたものなど、活動の原点となるような作品も展示する予定ということだ。「展示全体を通して、佐藤可士和はこういうこともやっているんだ、というのがわかるようなものになればと。今はまだキーワードが確立できていませんが、今回の展覧会で伝えたいのは“現実美術”みたいなことです。現代美術というのはアートにおいて一番先端的なことに挑戦しているカテゴリーですが、僕がやっている仕事はアート界においてではなくて、まさに現実社会において行われていることだから」と語る。

 

そんな彼が、自らの仕事の源流として挙げたのが、かつての総合芸術家たちの名前だった。「ミケランジェロとかレオナルド・ダ・ヴィンチのようなルネサンス期の芸術家は、言わばメディチ家やローマ教皇などの依頼に応じて作品を制作していたクリエイティブディレクターだとも捉えられるのではないかと思います。彼らに限らず、当時美術は権威と強く結びついていたので、芸術家たちは王家や宗教など時の権力者のブランディングにかなり近い仕事をしていました。たとえば肖像画もイメージを訴求するためのブランディングとも言えますよね。アートが権威と切り離されて独立し、民主化されたのは印象派以降のこと。それ以降も依頼されて作るものももちろんあって、それが工芸とかデザインなどに細分化されていったという印象です。僕はアートもデザインもコミュニケーション活動だから、そんなに細かく分けなくてもクリエイティブという意味では同じではないかな、と思っています」。


「まずはブランドの佇まいをイメージし、そこから因数分解をしていく」と佐藤は語る。一見シンプルだがそこには明確な主張がある、佐藤の仕事スタイルはその思考から生まれる。 「まずはブランドの佇まいをイメージし、そこから因数分解をしていく」と佐藤は語る。一見シンプルだがそこには明確な主張がある、佐藤の仕事スタイルはその思考から生まれる。

「まずはブランドの佇まいをイメージし、そこから因数分解をしていく」と佐藤は語る。一見シンプルだがそこには明確な主張がある、佐藤の仕事スタイルはその思考から生まれる。

「もしかしたら“美術”という日本語はそんなにいい言葉じゃないのかも」と言葉を継いだ彼は、「自然が作り出す“サイエンス”に対して、“アート”というのは人の美意識や感覚をもとに作り出されるもの。だから、それ自体は“術”じゃないと思うのです。大事なのはやっぱり、0から1を生み出すとか、1を10にするようなコンセプトやイメージですね。今までにないものを構想できるかどうか。ただ、それを形にしていく上で“術”は必要になってくると思います」とも。

 

「以前対談した時に、安藤忠雄さんが『建築は構想だから、図面を引いた人ではなく、構想した人が建築家だ』って仰っていましたが、それと同じようなことかもしれません。イメージを持てて、それを何らかの方法で作り上げることができる人がクリエイターだと思います。自分で全部やらなくてもいいけれど、協業する時に誰にやってもらうか、どのようにやってもらうかのイメージまで持てる人ですね」。

ブランディングとは経営的な視点とクリエイティブをブリッジさせること

ブランディングという仕事自体を世の中に知らしめ、定着させる役割を果たしてきた佐藤。ただ、「こんなにもビジネスのことにコミットするとは思っていなかったし、もっと自分がやるのは“表現”だと思っていました」と言う。

米国、台湾に続き、2020年に中国へ進出するくら寿司。浅草ROX店は佐藤可士和がデザインを担当した、グローバル旗艦店。日本の伝統文化を内装に取り入れ、射的や輪投げなども楽しめるスペースを設けてある。海外店でも同様な内装となる。 米国、台湾に続き、2020年に中国へ進出するくら寿司。浅草ROX店は佐藤可士和がデザインを担当した、グローバル旗艦店。日本の伝統文化を内装に取り入れ、射的や輪投げなども楽しめるスペースを設けてある。海外店でも同様な内装となる。

米国、台湾に続き、2020年に中国へ進出するくら寿司。浅草ROX店は佐藤可士和がデザインを担当した、グローバル旗艦店。日本の伝統文化を内装に取り入れ、射的や輪投げなども楽しめるスペースを設けてある。海外店でも同様な内装となる。

「ブランディングというのは経営的な視点とクリエイティブをブリッジさせる仕事であって、最後の“表現”の部分の割合は実は少ないと思うんです。少ないけれども、それまで考えてきたことをブレずに社会に伝える役割を担う、非常に大切な部分が“表現”。小さいながらもSAMURAIという会社を経営することで、経営者としての視点、例えば、『この1円は節約すべきだけど、この1億円は意義があることにつながる』という考え方を持てるようになり、企業からも信用していただけるようになったと思います。だから、デザインを学ぶ学生たちにも経済や経営の勉強をするべきだと言いたいですね。デザイナーは“発注される”という感覚でいてはダメ。すべての仕事は協業ですから、全体で何が行われているのかを理解できないと」。

 

今では今治タオルのプロジェクトから派生した今治市全体のブランディングをはじめ、パブリックなプロジェクトも多く手がけるようになった。今後も、今までにない価値や事業を生み出す大規模物流施設の新ブランド「ALFALINK」をはじめ、大きな仕組みやコミュニティを作っていくような、新たな挑戦が続く。

神奈川県相模原市に先進的な物流施設5棟を「GLP ALFALINK 相模原」として開発。ブランドコンセプト、ネーミング、ロゴデザインおよび建築・空間デザインディレクションを佐藤可士和が手掛けた。今までの物流施設の枠を超え、ビジネスの機会を創造するプロフィットセンターとなる。 神奈川県相模原市に先進的な物流施設5棟を「GLP ALFALINK 相模原」として開発。ブランドコンセプト、ネーミング、ロゴデザインおよび建築・空間デザインディレクションを佐藤可士和が手掛けた。今までの物流施設の枠を超え、ビジネスの機会を創造するプロフィットセンターとなる。

神奈川県相模原市に先進的な物流施設を「GLP ALFALINK 相模原」として開発。ブランドコンセプト、ネーミング、ロゴデザインおよび建築・空間デザインディレクションを佐藤可士和が手掛けた。今までの物流施設の枠を超え、ビジネスの機会を創造するプロフィットセンターとなる。写真はイメージビジュアル。

「日本GLPによる『ALFALINK』は、2021年秋に竣工する相模原を皮切りに、今後も増えていく予定です。僕は『創造連鎖する物流プラットフォーム』というコンセプト考案から、ロゴ、建築・空間のデザイン、ディレクションまで手がけました。GLP ALFALINK 相模原は東京ドーム14個分の総延床面積で、まるでひとつの街をつくるようなイメージのプロジェクトです。従来の物流倉庫だけではなく、工場やオフィスなど、人々がつながり、新たな価値、ビジネスが生まれるきっかけとしての空間開発を目指し、託児所やカフェテリア、各種セミナーの実施なども予定しています。このような『半分パブリック空間で、地域と密接につながっている』といった取り組みには、今後もさらに挑戦していきたいと思っています」。

 

→佐藤可士和の仕事、その軌跡を辿る(前編)へ

 

(敬称略)

佐藤可士和 Kashiwa Sato

クリエイティブディレクター

1965年東京生まれ。多摩美術大学グラフィックデザイン科卒。株式会社博報堂を経て、2000年にクリエイティブスタジオ「SAMURAI」を設立し、ブランド戦略のトータルプロデューサーとして活躍。主な仕事には、ユニクロや楽天グループのグローバルブランド戦略のほか、セブン-イレブンジャパン、ヤンマーなどのブランディングプロジェクト。UR都市機構との「団地の未来プロジェクト」や、今治タオルのブランディングなど幅広い。また大規模な建築プロジェクトなども多数従事。2016年度文化庁文化交流使。

「佐藤可士和展」 国立新美術館 東京都港区六本木7-22-2 2020年9月16日(水)~2020年12月14日(月) 10:00-18:00(毎週金・土曜日は、9月は21:00まで。10~12月は20:00まで) ※入場は閉館の30分前まで。 毎週火曜日休館 ※ただし、9月22日(火)、11月3日(火)は開館、9月23日(水)、11月4日(水)は休館。 「佐藤可士和展」 国立新美術館 東京都港区六本木7-22-2 2020年9月16日(水)~2020年12月14日(月) 10:00-18:00(毎週金・土曜日は、9月は21:00まで。10~12月は20:00まで) ※入場は閉館の30分前まで。 毎週火曜日休館 ※ただし、9月22日(火)、11月3日(火)は開館、9月23日(水)、11月4日(水)は休館。

「佐藤可士和展」

国立新美術館/企画展示室1E

東京都港区六本木7-22-2

2020年9月16日(水)~2020年12月14日(月)

10:00-18:00(毎週金・土曜日は、9月は21:00まで。10~12月は20:00まで)

※入場は閉館の30分前まで。

毎週火曜日休館

※ただし、9月22日(火・祝)、11月3日(火・祝)は開館、9月23日(水)、11月4日(水)は休館。

Text by shiyo Yamashita
Photography by Yoshiaki Tsutsui

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