佐藤可士和

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Portraits

佐藤可士和の仕事、その軌跡を辿る(前編)

2020.3.9

佐藤可士和が自身の30年に渡る仕事をどうヴィジュアライズするか。「佐藤可士和展」への企み

佐藤可士和

クリエイティブディレクターという職業、またブランディングという仕事を幅広く一般の人が認識するようになったのは、間違いなく佐藤可士和の功績があってのことだろう。

 

博報堂在籍時の1996年より8年にわたって手がけたホンダのミニバン「ステップワゴン」のブランディング、2006年に始まったユニクロブランドのグローバル展開にあたっての総合ディレクション、プライベートブランドを核にしたセブン-イレブンのリブランディング。さらに2003年にVI 計画の依頼を受けたことから始まった楽天との取り組みや、ブランドの確立だけでなく地方創生まで実現させた、2006年から続く今治タオルの仕事まで、息が長いプロジェクトが多いのも彼の仕事の特徴だ。

前例のない展覧会「佐藤可士和展」に挑む

そんな佐藤の約30年にわたる活動の軌跡を多角的に紹介する、過去最大規模の個展「佐藤可士和展」が、この秋、国立新美術館にて開催される。私たちが日々の暮らしの中で親しんできた彼の仕事が「作品」として展示される空間をキュレーションするのは、他ならぬ佐藤自身だ。

2006年、ニューヨークの旗艦店のオープンからグローバル展開をスタートした衣料品ブランド「ユニクロ」。カタカナと欧文を併記したロゴマーク、国内外のクリエイターと協働した世界各地の旗艦店デザイン、商品企画、プロモーション戦略にいたるまで、経営と直結した総合的なディレクションを行う。 2006年、ニューヨークの旗艦店のオープンからグローバル展開をスタートした衣料品ブランド「ユニクロ」。カタカナと欧文を併記したロゴマーク、国内外のクリエイターと協働した世界各地の旗艦店デザイン、商品企画、プロモーション戦略にいたるまで、経営と直結した総合的なディレクションを行う。

2006年、ニューヨークの旗艦店のオープンからグローバル展開をスタートした衣料品ブランド「ユニクロ」。カタカナと欧文を併記したロゴマーク、国内外のクリエイターと協働した世界各地の旗艦店デザイン、商品企画、プロモーション戦略にいたるまで、経営と直結した総合的なディレクションを行う。

「『佐藤可士和展』の開催については、国立新美術館の方から、3年くらい前にお声掛けいただきました。国立新美術館は2007年の開館以来、デザインを重要な展示テーマのひとつと考えていましたが、建築家やデザイナーなどの大規模展覧会は開催されていませんでした。しかし、この時代にデザインというものを国立の美術館としてもきちんとやっていこう、ということで、2016年にまず『MIYAKE ISSEY展: 三宅一生の仕事』、翌2017年には10周年記念として『安藤忠雄展―挑戦―』が開催されました。僕はその第三弾ということでお話をいただきました。大変光栄です」。

 

「三宅一生さんと安藤忠雄さんに続く大規模個展なんて、畏れ多いですけれど」と笑う佐藤だが、実は「いつかはここで」という漠然とした希望は持っていたそうだ。

 

「この美術館は30年ぶりに設立された日本で5つ目の国立美術館です。僕がシンボルマーク、ロゴタイプをデザインさせていただいたので、いつかこういうところで自身の展覧会をできるように頑張れたらいいな、とは思っていました。とはいえ、やはり国立館なので企画展としてはルノワール展(2016)のような展覧会を行う場所であり、デザインミュージアムやデザインギャラリーではないので、ジャンル的になかなか難しいかな、とも思っていました。だから、お声を掛けていただいた時には本当に嬉しかったですね」。


手塚貴晴+手塚由比の設計による佐藤可士和の事務所。真っ白な壁一面には取っ手のない収納が続き、広い空間にあるのは大きな机と等間隔に並ぶ椅子だけ。佐藤可士和の整理術が実践された美しい事務所で話を聞いた。 手塚貴晴+手塚由比の設計による佐藤可士和の事務所。真っ白な壁一面には取っ手のない収納が続き、広い空間にあるのは大きな机と等間隔に並ぶ椅子だけ。佐藤可士和の整理術が実践された美しい事務所で話を聞いた。

手塚貴晴+手塚由比の設計による佐藤可士和の事務所。真っ白な壁一面には取っ手のない収納が続き、広い空間にあるのは大きな机と等間隔に並ぶ椅子だけ。佐藤可士和の整理術が実践された美しい事務所で話を聞いた。

これまでにも佐藤は、2002年に亀倉雄策賞受賞を受けてクリエイションギャラリーG8で開催された『佐藤可士和 The Power of Art Direction!』や、2004年にギンザ・グラフィック・ギャラリーの『佐藤可士和展 BEYOND』といった個展の経験がある。

 

「ギンザ・グラフィック・ギャラリーの時はスペースが小さかったですし、デザインギャラリーなので、オーディエンスもデザインに理解がある人ばかりでした。一方、国立新美術館の展示室は約2000㎡もあり、期間も3ヵ月、幅広くたくさんの方々が来館してくださると思うので、前回とは全然違う。デザイン関係の人だけが面白いと思うものではだめなので、今回は自分の仕事を客観的に見つめ直し再編集して、プレゼンテーションしていくという感じです」。

多岐にわたるプロジェクトを体感型の展示で紹介

確かに、現役のデザイナーに関して大規模な個展が開催されたことはほとんどない。それだけ、佐藤の30年の業績は時代を大きく変えるものだったということだろう。今回の開催にあたり、何か参考にしたり、ヒントを得たりした展覧会はあるのだろうか。

 

「昨年の夏、シカゴ現代美術館で開催されていた、ヴァージル・アブロー(オフ-ホワイトのデザイナーでルイ・ヴィトンのメンズラインも手がける)の展覧会を観に行ったんです。彼はクリエイティブディレクターであり、ファッションデザイナーであり、アーティストでもある人ですが、ある意味、今回開催する展覧会と共通点があると。プロジェクトの性質は全く違いますが、非常にインスパイアされるものがありました。様々な領域を横断する仕事をうまく見せていて興味深かったですね。今はそういう時代なんだな、とつくづく思いました」。

2007年、六本木に誕生した国立新美術館のロゴを手掛けた。「コレクションを持たない」「アートの情報センターとしての役割」など、従来の美術館にはない新規性に着目したことから「新」という漢字をシンボルマークに据えた。 2007年、六本木に誕生した国立新美術館のロゴを手掛けた。「コレクションを持たない」「アートの情報センターとしての役割」など、従来の美術館にはない新規性に着目したことから「新」という漢字をシンボルマークに据えた。

2007年、六本木に誕生した国立新美術館のロゴを手掛けた。「コレクションを持たない」「アートの情報センターとしての役割」など、従来の美術館にはない新規性に着目したことから「新」という漢字をシンボルマークに据えた。


ヴァージルはその人自身がコマーシャルな存在だが、誰もが彼のデザインしたアイテムを手にしているわけではないし、認知されている年齢層も限定的だ。一方、佐藤の場合はその仕事が圧倒的にマスに浸透している。老若男女の誰もが無意識のうちにその仕事を知っているというデザイナーなど、そうはいないものだ。赤字にカタカナと英字でブランド名を白抜きにしたユニクロのロゴや、従来の「7&i」の意匠を踏まえて展開したセブンプレミアムの各ロゴに加え、T-POINTの青地に黄色の「T」マーク、「R」が印象的な楽天のロゴも、毎日どこかで目にしている。

 

「そうなんです。だからこそ、見せ方が難しいと思っています。ユニクロやセブンプレミアムのロゴなんて、みなさん毎日のように街中で目にしている。それを展覧会の会場でもう一回見せても、あれ、さっき見たけど?みたいな感じになってしまって、何も面白くないですよね(笑)。どうやって僕がいつも携わっているような多岐にわたる仕事をヴィジュアライズしていくか。開催が決まってからの2年間、考え続けてきました。ロゴはたくさんデザインしているので、それが一堂に会するコーナーはメインの展示のひとつになります。もちろん、A4の紙にプリントして見せるようなものではなく、巨大なドローイングになったり、彫刻になったり、ポップアートのようなものになったり。最終的には、空間もプロダクトも映像もインタラクティブなことも、それが全部体感してもらえるような展示にしたい。プロジェクトごとに見せ方も変えたいですね」

佐藤可士和 Kashiwa Sato
クリエイティブディレクター
1965年東京生まれ。多摩美術大学グラフィックデザイン科卒。株式会社博報堂を経て、2000年にクリエイティブスタジオ「SAMURAI」を設立し、ブランド戦略のトータルプロデューサーとして活躍。主な仕事には、ユニクロや楽天グループのグローバルブランド戦略のほか、セブン-イレブンジャパン、ヤンマーなどのブランディングプロジェクト。UR都市機構との「団地の未来プロジェクト」や、今治タオルのブランディングなど幅広い。また大規模な建築プロジェクトなども多数従事。2016年度文化庁文化交流使。

佐藤可士和展 佐藤可士和展

◆「佐藤可士和展」
国立新美術館/企画展示室1E
東京都港区六本木7-22-2
2020年9月16日(水)~2020年12月14日(月)
10:00-18:00(毎週金・土曜日は、9月は21:00まで。10~12月は20:00まで)
※入場は閉館の30分前まで。
毎週火曜日休館※ただし、9月22日(火・祝)、11月3日(火・祝)は開館、9月23日(水)、11月4日(水)は休館。

Text by shiyo Yamashita
Photography by Yoshiaki Tsutsui

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