箏アーティストLEO箏アーティストLEO

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Portraits

若き箏アーティスト LEOの現在地(前編)

2021.1.5

箏アーティスト LEO 人生の始まりを告げた箏の音色に導かれて

邦楽界の登竜門である「くまもと全国邦楽コンクール」最優秀賞・文部科学大臣賞を16歳で受賞したのち、3枚のアルバム発表。古典から現代音楽まで、縦横無尽に演奏し注目を集める箏アーティストLEO。箏との偶然の出合いからデビュー、そして東京藝術大学の学生として、またプロのアーティストとして活躍している彼の言葉に耳を傾けた。

 

 

箏を弾くLEOの手元 箏を弾くLEOの手元

箏が教えてくれた
アイデンティティの在りか

 

180㎝ほどもある箏を担いで、スタジオに現れたのは箏アーティストのLEOである。てきぱきとセッティングをし、弦の調子を整えると、スタジオ中に箏の音が響き渡る。ダイナミックに、繊細に、LEOが奏でる箏に一同ただ聞き入る。一息ついた彼をテーブルに招き、お茶とお菓子を勧めると、破顔一笑、屈託なくお菓子をほおばる22歳の青年がそこにいた。しかしインタビューがはじまると一転、アーティストの面差しに変わり、真摯な言葉で箏との出合いを話してくれた。

箏との出合いは9歳のとき、横浜のインターナショナルスクールの音楽の授業でのこと。音楽の必修カリキュラムとして箏が組み込まれ、スクールの音楽教師でもあり、アメリカ人箏奏者としても活躍するカーティス・パターソン氏の手ほどきを受けた。

 

LEOは箏に触れてすぐ魅了され、夢中になる。「多くの楽器は、音を出せるようになるまで練習が必要だけれど、箏はすぐに音を出すことができるから楽しかったですね。1学年50人ほどの小さな学校の中で、僕が一番上手に弾けるようになりたい、という負けん気がそもそもあって」。

 

箏の授業が始まってすぐ、自分の箏を買ってもらった。「学校から帰宅するのが夕方4時。それから6時まで弾いて、夕食を摂って、また8時から12時まで弾いて寝る、という毎日でした。週末は本当に一日中弾いていました」というからその熱中ぶりはすさまじい。しかしそこまで箏に魅せられたのは、音がすぐ出せて楽しかったということや、学校で一番上手になりたいという、幼い競争心からだけではなかった。


LEO9歳のとき LEO9歳のとき

箏を習いはじめたころ、9歳のLEO。


LEO 15歳のころ LEO 15歳のころ

日々の練習だけでなく、コンクールや合宿など、箏に熱中していた15歳のころ。

アメリカ人の父と日本人の母の間に生まれた彼の心は、当時波立っていたのだという。「父と母が離婚し、その後、母が再婚して日本人の父との生活が始まりました。そのころの僕はまだ子どもで、自分の心のモヤモヤを言葉にすることはできなかったけれど、今ならわかる。自分のアイデンティティや根っこってなんだろう?という疑問があって、心が揺らいでいたのだと思うんです。でも箏に出合って、自分の中の何かが腑に落ちたというか、アイデンティティが確かなものになった。だからのめりこんでいったんです」。少年だったLEOの心の問いに答えをもたらしたのは、伝統的な楽器、箏だったのだ。


プロになりたい
夢を実現するための静かな決意

 

箏曲といえば「春の海」など古典的な楽曲を思い浮かべがちだが、LEOが所属する沢井箏曲院を主催する沢井一恵氏や沢井比河流氏の現代箏曲は前衛的だ。比河流氏はヘビーメタルバンドを組んでいることもあり、従来の箏曲の表現とは大きく異なる自由さが魅力となっている。「古典的な作品ももちろん演奏します。でも沢井先生のロックっぽい曲も箏を習い始めたときから親しみました」。演奏すれば、みんなからカッコイイと称賛される、インターナショナルスクールのノリのよさもあり、LEOはさらにのめり込んでいく。


デイブレイク /沢井比河流 作曲- Koto (LEO)

この曲は、LEOが師事する沢井比河流氏が作曲。箏とロックテイストが思いのほかマッチする。YouTubeの自身のチャンネルでは、古典から現代音楽、ジャズなど、様々なタイプの曲を演奏するLEOを見ることができる。

 


14歳で「全国小中学生箏曲コンクール」グランプリ受賞し、16歳で「くまもと全国邦楽コンクール」最優秀賞・文部科学大臣賞を受賞。史上最年少での受賞は話題となった。「中学生のころには、プロになりたいと本気で考え始めていました。でも自分の気持ちを家族に話すと、全員から大反対されました」。なかでも母方の祖父は「音楽で食べていけるほど世の中は甘くない」とLEOを強く諭した。祖父は一代でブライダル事業を展開し成功した人物。事業の将来をいつかLEOに手渡したい、と考えていたこともあり、プロになることには異を唱えた。

 

 

 

箏を前にほほえむLEO 箏を前にほほえむLEO

でも彼は負けん気の強い人である。大反対をくつがえすには正面から行ってもだめ。だから作戦を変える。プロになりたいと口にするのをやめ、もともと目標にしていた、東京藝術大学への進学を目指すということにした。この作戦は功を奏し、藝大進学であれば反対の声は上らなかった。進学のためという口実のもと、さらに箏にフォーカスした。しかし心の中では、箏のアーティストとして生きていくという夢は揺らぐことはなかった。後編は、LEOに訪れる飛躍する機会、そして彼がここから目指すところを聞いていく。

 


LEO 

箏アーティスト。1998年横浜に生まれる。本名は今野玲央。筝曲家カーティス・パターソン氏の指導のもと、横浜インターナショナルスクールの音楽の授業内で9歳にして箏を始める。のちに筝曲家沢井一恵氏に師事。14歳で全国小中学生箏曲コンクールのグランプリ受賞。「くまもと全国邦楽コンクール」コンクール史上最年少の16歳で最優秀賞・文部科学大臣賞受賞。2017年3月、1stアルバム『玲央1st』でメジャーデビュー。2018年MBSドキュメンタリー番組「情熱大陸」、テレビ朝日「題名のない音楽会」に出演。8月に2ndアルバム『玲央 Encounters:邂逅』をリリース。2019年サントリーホール「成人の日コンサート」出演。「第29回出光音楽賞」受賞。現在、沢井箏曲院講師。

 

◆2021年コンサート情報
詳細はLEOの公式サイトをご覧ください。

1月10日(日) 京都市交響楽団 特別演奏会「ニューイヤーコンサート」(京都コンサートホール・大ホール)

1月30日(土) やまなみファミリーコンサート(クアーズテック秦野カルチャーホール)

2月25日(木) Hakuju Hall リクライニング・コンサート 第156回 LEO筝リサイタル

 

Photography by Tatsuya Ozawa (Studio Mug)

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