吉川康雄吉川康雄

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美の定義に革命を起こす吉川康雄(前編)

2021.9.4

「自分の美に気づき、人生に愛と力を」 メイクアップアーティスト吉川康雄が考える真の美しさの本質

美しくあらねば、というストレスから女性を解放したい

 

1985年にメイクアップアーティストとしてキャリアをスタート。35歳で渡米し、NYをベースに、各国『VOGUE』の表紙、ヒラリー・クリントンやカトリーヌ・ドヌーブといったセレブリティのポートレイトなども担当する吉川康雄。彼のメイク理論を一言でいうならば、「自分のことがもっと好きになるメイク」。決して化粧で〝化ける〟のではなく、やみくもに若さを追いかけるのでもなく、誰もがもっているその人ならではの美しさを見つけ際立たせていく――その背景にあるのは、国籍や年齢、職種を超え、多くの人が容姿へのコンプレックスやエイジングへの不安を抱いている現状にあるという。

 

「メイクをしているときって、距離感が近いでしょう。相手の気持ちがダイレクトに伝わってくるんです。決して本人は口にしないけれど、ひそかに悩んでいる。そんな隠している気持ちすら、感じ取ってしまうことがあります」

 

トップモデルならば自信満々でメイクルームで過ごしているかといえば、決してそんなことはない、と。


吉川康雄がメイクアップしている様子 吉川康雄がメイクアップしている様子

吉川康雄のメイクアップ道具 吉川康雄のメイクアップ道具

「トップに立ったら立ったで、台頭してくる若いライバルを意識するようになる。今の自分の見た目が評価されればされるほど、これから年齢を重ねてエイジングしていくことに不安がつきまとう……どんなポジションを得ようとも、不安や悩みというものは消えて無くなることはない。絶対的な自信をもてる人なんて、誰もいないというのが現実です」

 

アイデンティティに悩むのは、男も女も同じ。ただ、女性は「美しくあるべき」というプレッシャーが強い分、傷つくことも多いし悩みも深くなりやすい。

 

「人間は老いて死ぬ生き物。美しいまま生まれて美しいまま死ぬということはあり得ない。生きている限り変化していきます。でも、そのことを否定して頭に思い描いた〝美〟を追いかけようと思うと、美はプレッシャーとなって悩みに変わっていくんです」


欠点は長所。言葉ひとつでコンプレックスは自信に変わる

 

美しくなるための情報や手段は、世の中にあふれている。近年では、見た目を若返らせる美容医療も身近なものとなりつつある。けれど、〝悩みの根〟を理解しない限り、根本解決にはいたらない。むしろ、美容に熱心になればなる程、理想とは違う自分の姿に落ち込んでしまうこともある。

 

「肌にハリも明るさもなくなってきて、化粧のノリが悪くなった、目の印象がぼんやりしてきた……。それをカバーする手段は確かにたくさんあります。けれど、僕は問うんです。『その肌に厚塗りをして素の肌を隠せば綺麗になれるの? そもそも目をパッチリと大きく見せる必要があるの? それって美しいの?』って」


インタビューを受ける吉川康雄 インタビューを受ける吉川康雄

お化粧は〝肌のアラを完璧に隠すもの〟〝目鼻立ちはクッキリと立体的なほうが美人〟、そんな思い込みが、鏡を見るたびに自分を落ち込ませる元凶となっている、と。

 

「人の顔は、みんな違う。目が大きい・小さい・切れ長だ・垂れ目…、大きさも形も、いろいろあるわけです。世界の80億人が異なる姿形で生まれてくるのに、ひとつの価値観を当てはめてしまうのは矛盾している。そんなの変だし、誰も幸せになれない」

 

そこで彼が提唱するのが、「自分の特徴を良い言葉で表現してみる」こと。

 

「たとえば『目が細くてキツイ』というのは、『目が涼やかでシャープな強さをもっている』と同義です。同じ造形でも、ネガティブな表現とポジティブな表現がある。エイジングによる変化についてもそう。肌のハリが失われて柔らかい印象になることを『たるんだ』と捉えるか、『まろやかで優しい雰囲気になった』と感じられるか。ポジティブに表現することは、自分らしさを受け入れることにつながるんです」

 

自分の顔は、一生付き合っていくもの。ならば、変化していく過程も含めて前向きに捉えたい。自分を肯定する。それは自信となり、生きる力となっていく。

 

 


写真左からモイスチャーリップスティック グロウ 01 レッドローズ 3,960円、 モイスチチャーリップベース3,630円、モイスチャーリップスティック ステイン 01 レッドローズ 3,960円  写真左からモイスチャーリップスティック グロウ 01 レッドローズ 3,960円、 モイスチチャーリップベース3,630円、モイスチャーリップスティック ステイン 01 レッドローズ 3,960円 

写真左からモイスチャーリップスティック グロウ 01 レッドローズ 3,960円、モイスチチャーリップベース3,630円、モイスチャーリップスティック ステイン 01 レッドローズ 3,960円


「自分の顔を受け入れて楽しむときに、メイクアップが役に立ちます。たとえば年齢を重ねて柔らかな女性らしさが増したと感じるなら、それを際立たせるように唇を血色良く彩ったり、肌を艶やかに整えたり…。具体的な方法論まで考えるのが僕の専門分野です。その方法をプロダクトにまで落とし込んで、一般の誰もが実践できるようなメイクを世に伝えたい。そんな想いで立ち上げたのが、新ブランド『UNMIX<アンミックス>』です」

 

吉川の立ち上げた『UNMIX<アンミックス>』のこと、そしてこれからについて紡いでくれた言葉はまだ続く。

 

 

→美の定義に革命を起こす吉川康雄(後編)へ続く

吉川康雄 Yasuo Yoshikawa

1983年にメイクアップアーティストとして本格的に活動を開始。1995年に渡米。2008年から2019年3月までCHICCA ブランドクリエイターに就任。現在は、ニューヨークを拠点にファッション撮影はもちろん、広告、コレクション、セレブリティのポートレイトなど、世界のトップメイクアップアーティストとして活躍中。2019年、Webメディア「unmixlove」をスタート。2021年春、自身のメイクアップブランド「UNMIX」を立ち上げる。UNMIXとは、「混じり気のない」という意味。

 

Text by Junko Morita
Photography by Hyemi Cho(amana)

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