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小慢(シャオマン)新たなる茶藝の世界

2019.10.17

4. 彫刻家・沓沢佐知子の作品には森が持つ神秘と慈愛が宿っている

彫刻家・沓沢佐知子は三重県美杉町の里山で家族と暮らしている。敷地内には畑があり、その中には茶畑もある。自宅横には川が流れ、裏山にすむ動物たちの気配を感じる日々からインスピレーションを磨いているという。「モノをつくることは水の中に深く潜ったり、山を黙々と歩くこととも少し似ている」と語る沓沢。気負うことなく自然体に生きる彼女の美意識を、その作品から見て取ることができる。


文・沓沢佐知子

「生」が息づく作品には強さと優しさが共存する

「美しい水が流れている」
「ヤギのシロがたくさん草を食べられる」
「茶畑や田んぼを育てたい」
「野焼きが気兼ねなくできる」

彫刻家・沓沢佐知子の住まいの敷地内にある茶畑。5月の新茶の刈り取り前の様子。 彫刻家・沓沢佐知子の住まいの敷地内にある茶畑。5月の新茶の刈り取り前の様子。

彫刻家・沓沢佐知子の住まいの敷地内にある茶畑。5月の新茶の刈り取り前の様子。

これは8年前、三重の美杉町に引っ越す前に家族で話し合った理想の場所の条件である。なんとも無計画な条件の気もするが、縁があるそれに近い場所が見つかった。それはしばらく放置され、建物も土地も全てが木や植物に飲み込まれそうになっていた山奥の古民家だった。ただ、そばを流れる谷川の水はキラキラと流れていたこと、石と木を御神体としたこの集落の山の神様が、素朴ながらどっしりと存在していて、ここで大丈夫だと思った。


敷地横にある谷川、トリガウエガワで泳ぐことは家族の夏の楽しみ。 敷地横にある谷川、トリガウエガワで泳ぐことは家族の夏の楽しみ。

敷地横にある谷川、トリガウエガワで泳ぐことは家族の夏の楽しみ。

春には田んぼの泥の感触を素足で感じ、夏には谷川で子供を泳がせながら次の製作のアイディアをぼんやり考えたりしている。秋には柿やアケビ、栗、きのこといった美味しい味覚を鹿と取り合う。その姿は彫刻の良いモデルでもある。冬には山の倒木をもらってきては暖をとったり、土を焼く。そんな自然とともにある生活の中で物作りができることに、今では深い喜びを感じる。

 

さて、そのなんでもかんでも食べてしまう鹿だが、茶の葉はどうやら苦手らしく、おかげであちこちに野生化した茶の木がわさわさと茂っている。

2019年2月、京都小慢のお茶会の様子。蓋碗、茶板の茶器を製作。 2019年2月、京都小慢のお茶会の様子。蓋碗、茶板の茶器を製作。

2019年2月、京都小慢のお茶会の様子。蓋碗、茶板の茶器を製作。

いつかこの地の石で基礎を据え、
山の木で柱を作り、
土で壁を塗り、
山土で作った器を倒木で焼く。
茶の木からお茶を作り、
谷川の水を汲み、
お茶を淹れる。
そんな場を作りたい。
それが私が密かにあたためている彫刻の形である。

 

1.謝小慢(京都小慢オーナー)
2.ハタノワタル(和紙漉き師)
3.河合和美(陶芸家)

 

(敬称略)


沓沢佐知子 Sachiko Kutsuzawa 沓沢佐知子 Sachiko Kutsuzawa

Profile

沓沢佐知子 Sachiko Kutsuzawa
彫刻家
1976年三重県生まれ、京都教育大学美術学科彫刻科修了。主に土や紙を使い、立体を作っている。今後の個展予定は、10月トライギャラリー(東京)、2020年1月 tonoto(京都)、 3月 DE CARNERO CASTA (大阪)。また、三重県美杉町にて日本料理「朔」を料理人のご主人と営んでいる。作品はそこで使用、常設もしている。http://www.saku.jp.net

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