スマートな装いに、シャープな身のこなし。マリンビスト(マリンバ奏者)の小森邦彦さんは、アスリートのような雰囲気をもつ音楽家だ。マリンバに人生を捧げるアーティストは情熱的にこの楽器を語り、銀座にある“音楽の殿堂”へと誘ってくれた。
マニアックな性格ゆえに選んだ楽器、マリンバ
国内外で精力的に独奏会やコンサートを行い、大学でも教え、気鋭のマリンビストとして活躍する小森邦彦さん。マリンバは、巨大な木琴に共鳴パイプを備えた鍵盤打楽器だ。大きなものは5オクターブ、長さにして3m近くあり、軽やかで優美、澄んだ音色を特色とするが、力強さ、幽玄さなども幅広く表現できる。
マリンバを試奏する小森さん。店内に心地よい音が広がる。
母親が声楽家だったこともあり、幼少から声楽を学ぶ。小学生の頃にはドラムを叩き、YMOのコピーバンドをしていたという。高校生になると、カシオペアやチック・コリアなどのコピーをするフュージョンバンドを結成。物心ついてからずっと、音楽に浸って過ごしてきた小森さんは、音楽大学でクラシックの道へと進む。その後渡米、イーストマン音楽大学に入学。チームプレーよりソロに向く性格を自認し、この頃からマリンバ奏者を目指すことになる。
故郷は東京・表参道。日本を背景に独自の音楽活動を
大学卒業後は、ジョンズ・ホプキンズ大学大学院でさらに学識を深め、米国でプロ活動を開始する。通算11年を米国で過ごし、オランダの楽器メーカーと連携したことで、欧州各地でも演奏活動を行ってきた。「ずっと海外で暮らしてもよかったのですが、帰巣本能が強く、東京に戻りました」。
「現代音楽のCDも豊富で、いつも発見があるんです」と熱心にお目当てを探す。
東京・表参道で生まれ育った小森さんにとって、銀座は子供の頃から日常的な街のひとつだ。今宵、銀座に来たのは「ヤマハ銀座ビル」で楽譜やCDなどを探すため。国内最大級の総合楽器店で、「あらゆる音楽の譜面や書籍を横断的にチェックできるのがいいですね」。上階にはコンサートホールとして名高いヤマハホールもある。「ヤマハホールのキャパシティがマリンバには最適なサイズで演奏しやすく、好きです」。
小森さんは、能や現代美術ともコラボレーションし、独自の活動でマリンバの世界を更新し可能性を広げている。アフリカをルーツとし、南米にわたり20世紀からクラシック音楽として生まれたとされるマリンバ。「歴史が浅く発展途上ゆえ、やりがいに満ちている」という。世界中の演奏家や作曲家とともに連帯し、誰もやっていないことを先駆けながら、魅力を広く知ってもらうために活動する日々だ。現在も日本、アルゼンチン、フィンランド、フランスの音楽家たちとの作業が続いている。
銀座通りに面するヤマハ銀座ビル。音楽を愛する人のための贅沢な空間だ。
心と舌を満たす、銀座の穴場まで
アーティストとして、コンサートを開催する会場選びとともに、街選びも重要だという小森さん。「コンサートに足を運んでくれる方は、その後、どこで食事をするかも考えていると思います。その点、銀座は飲食店も多く、コンサートの後まで楽しめる街ですね」。
最後に、多忙な小森さんが日常的に楽しむ銀座の美味を教えてくれた。東京交通会館の地下1階の「交通飯店」の炒飯(チャーハン)だ。「昼には行列ができるほど有名です」。同じビルの1階にある「秋田ふるさと館」にも足を運ぶ。「ソフトクリームが絶品です。妻も僕も必ずお代わりして食べるほどハマっています」。最先端のクラシック音楽創生への意欲に輝く人は、気さくな一面も見せてくれた。
小森邦彦 Kunihiko Komori
マリンビスト
1969年、東京都生まれ。米国に留学後、東京を拠点に米国、欧州、アジア各国で演奏活動を行う。同時に世界各地で教育活動も熱心に行い、現在は愛知県立芸術大学で後進の指導にあたる。
http://blog.livedoor.jp/komori_marimba/
◆2019年5月25日に小森邦彦の新作CD「Masters, Masterworks」(ナミ・レコード WWCC-7896)が発売。マリンバの難曲「ナイトラプソディ」も収録する、渾身の作品。ヤマハ銀座店2階CD売場でも販売中。
◆名古屋公演「小森邦彦 マリンバ・リサイタル」
日時:2019年8月31日(土)開演:18:00
会場:宗次ホール(名古屋市中区栄4-15-4 )
問い合わせ:052-265-1715
ヤマハ銀座ビル
2010年に新装オープンした、ヤマハの旗艦店やホールなどを備えた音楽複合施設。地下1F~5Fが店舗フロアでピアノ、ギターをはじめ楽器が豊富にそろう。また、楽譜やCD,音楽をモチーフにした雑貨なども取りそろえている。地下2Fはスタジオ、6Fはコンサートサロン、7~9Fはヤマハホール、10〜12Fには大人の音楽教室を併設。照明や店舗のしつらえも美しく、音楽の魅力を多方面から感じさせてくれる。
東京都中央区銀座7-9-14
11:00~19:30
定休日:第2火曜日
https://www.yamahaginza.com/
東京交通会館
JR有楽町駅の駅前、都民にはパスポートセンターでもおなじみの建物。
http://www.kotsukaikan.co.jp/
【交通飯店】(中華料理)B1F
11:00~、17:00~ どちらも材料なくなり次第終了
定休日:土・日・祝
http://www.kotsukaikan.co.jp/food_shopping/food_tea/183/
【秋田ふるさと館】(秋田県物産店)1F
10:00~19:00
定休日:年末年始
http://www.a-bussan.jp/shop/tokyo/
Photography by Ahlum Kim
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