銀座四丁目「和光」は自身が浄化される場所だという。

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Tokyo, 7 p.m.

2019.9.5

都会の深夜に現れる噂の屋台バー「TWILLO」が
銀座に灯りをともす時

銀座四丁目「和光」は自身が浄化される場所だという。

初秋の涼風が心地よい夕刻。銀座四丁目の交差点に、謎めいた白い屋台が現れた。引いているのは神条昭太郎さん。長髪に痩身、武士のような風貌で銀座の中央通りをゆったりと行くその人は、異次元から来たかのようなオーラを発していた。

1年365日、ほぼ無休で14年目
今夜もどこかに
白い屋台が開店する

夜の東京を愛する人には知られた存在の、謎めいた白い屋台。モバイルサロンと称するバー「TWILLO」(トワイロゥ)は、都内を気ままに移動し、一夜の場所を定める。22時過ぎにツイッターでその日の居場所をつぶやけば、静かに人がやって来る。数寄屋橋公園で開店したこの夜、神条さんは有楽町駅ガード下の「まんぷく食堂」で、仕事前の腹ごしらえをしていた。

数寄屋橋交差点を渡り「まんぷく食堂」へ向かう神条さん。「銀座メゾンエルメス」の光の偉容が美しい。人力のみで動かすため、一日に移動できる距離はそう長くない。 数寄屋橋交差点を渡り「まんぷく食堂」へ向かう神条さん。「銀座メゾンエルメス」の光の偉容が美しい。人力のみで動かすため、一日に移動できる距離はそう長くない。

数寄屋橋交差点を渡り「まんぷく食堂」へ向かう神条さん。「銀座メゾンエルメス」の光の偉容が美しい。人力のみで動かすため、一日に移動できる距離はそう長くない。

夜7時、会社帰りの人が行き交う路上のテーブルでまず一杯。 夜7時、会社帰りの人が行き交う路上のテーブルでまず一杯。

夜7時、会社帰りの人が行き交う路上のテーブルでまず一杯。

「まんぷく食堂」のオーナー、みっしぇるさんと。現在の有楽町駅ガードは昭和41年(1966年)施工。当時の雰囲気が今も残る。 「まんぷく食堂」のオーナー、みっしぇるさんと。現在の有楽町駅ガードは昭和41年(1966年)施工。当時の雰囲気が今も残る。

「まんぷく食堂」のオーナー、みっしぇるさんと。現在の有楽町駅ガードは昭和41年(1966年)施工。当時の雰囲気が今も残る。


一夜のおとぎ話の
最初と最後をつかさどる
二人が交差する

「夜7時は勤め人が一杯飲んでくつろぎ、観光客は夕食を楽しむ時刻。夜を物語とすると、「まんぷく食堂」は夜の始まりを担う店です。私のバーは深夜から明け方まで、夜の終わりの部を担当している。そんな感覚です」。仙人のような神条さんと、「まんぷく食堂」のキュートな女主人みっしぇるさんは、さまざまな人の都会の夜に寄り添う天使のようでもある。

まんぷく食堂の名物料理「丸ごとチキン蜂蜜がけ」(限定5食)。 まんぷく食堂の名物料理「丸ごとチキン蜂蜜がけ」(限定5食)。

まんぷく食堂の名物料理「丸ごとチキン蜂蜜がけ」(限定5食)。

なつかしい昭和の味を再現した「ナポリタン+目玉焼き」。 なつかしい昭和の味を再現した「ナポリタン+目玉焼き」。

なつかしい昭和の味を再現した「ナポリタン+目玉焼き」。


毎晩が冒険の日々に
白い屋台が銀座を目指すとき
心は浄化を求めている

国立大学を卒業後、銀行員という人生から一転、会社員を辞め目指したのは、自由で、自立でき、自分の世界観を表現できる生き方だった。「長野県ののどかな地で育ち、子供の頃は授業中にボーと窓の外を眺めている子でした。卒業文集に書いた好きな言葉は、冒険。思えば今、毎晩が冒険です。完璧に夢を叶え、満足しています」。しかし自由には犠牲も伴い、心が澱んでくることもある。そんな時は銀座へ足が向かう。「銀座の中央通り、とりわけ和光の時計台の前は自分が浄化される場所です」。

故郷の山を見たときの心が洗われるような感覚が「和光」を見たときにあるという神条さん。 故郷の山を見たときの心が洗われるような感覚が「和光」を見たときにあるという神条さん。

故郷の山を見たときの心が洗われるような感覚が「和光」を見たときにあるという神条さん。


消えては現れる
一夜の幻想的な神殿
おとぎ話の世界がここに

長年、屋台バーを続けるうちに内容はそぎ落とされ、酒はハードリカー1種のみ、この夜はカルヴァドスを出す。当初からグラスもデカンタもバカラのクリスタル。ストレートで供すため、水のボトルを持参しチェイサーとする常連もいる。「この屋台でのひと時、忘れていた世界を思い出して欲しいのです。東京タワーが毎晩明け方まで光を輝かせているように、この店も都内のどこかで必ず灯りをともしています」。心に灯る光のように、誰かの励みになっている。

数寄屋橋公園内に建つ岡本太郎の作品「若い時計台」に見守られてバーを開く。 数寄屋橋公園内に建つ岡本太郎の作品「若い時計台」に見守られてバーを開く。

数寄屋橋公園内に建つ岡本太郎の作品「若い時計台」に見守られてバーを開く。

グラスはバカラ製。その人にふさわしいものを選んで出してくれる。 グラスはバカラ製。その人にふさわしいものを選んで出してくれる。

グラスはバカラ製。その人にふさわしいものを選んで出してくれる。

今宵の題目は「ざっそう」。華やかな銀座四丁目にもたくましく咲く雑草を見て、決めた。 今宵の題目は「ざっそう」。華やかな銀座四丁目にもたくましく咲く雑草を見て、決めた。

今宵の題目は「ざっそう」。華やかな銀座四丁目にもたくましく咲く雑草を見て、決めた。

「TWILLO」は存在自体が現代美術だとも評され、また、肩書も経歴も関係なく誰もがフラットでいられる茶室のようだともいわれる。月の輝く夜、白の簡潔な屋台に蝋燭が灯り、クリスタルが輝き、人の多くは無言で、静かに満たされていく場所。ここは神殿のようでもある。神条さんが影響を受けたものは一言、自然だという。都会を漂うクールな人の内面には、故郷長野の自然や山々の雄大で清々しい風景があり、それゆえ、ここ銀座でも揺るぎなくいられるのかもしれない。

神条昭太郎 Shotaro Kamijo
「TWILLO」オーナー。1972年長野県生まれ。横浜国立大学経済学部国際経済学科卒後、銀行に就職し2年で退職。アルバイトや衆議院議員公設秘書などを経て、2006年8月にモバイルサロン「TWILLO」を青山・外苑前付近で開始する。夜10時過ぎにツイッターで居場所を告知し、明け方まで営業。夜毎「にじ」「つぼ」など心に浮かんだ題目を決め、それをテーマに語り合うことも。一人静かに過ごすゲストも多い。店名は響きが好きで決めたという。料金は客が決めて払う方式だ。2019年9月初日は冒険3117日目、鍜冶橋通り沿い、京橋と八丁堀の境目にいた。
Twitter:神条昭太郎 @twillo0
Facebook:https://www.facebook.com/shotaro.kamijo

まんぷく食堂 Tokyo Bar & Restaurant
明け方まで、おいしい料理を提供する居酒屋。店内はポップな壁画、外壁には昔の看板や映画のポスターが貼られ、昭和気分も味わえる。有楽町駅ガード下という独特のロケーションも魅力。ラーメン(深夜のみ)からナポリタンまで料理も豊富で、世界中からゲストが来店、メニューにはドル表記もある。
丸ごとチキン蜂蜜がけ(ハーフサイズ)1,186円、マグロのカルパッチョ・サラダ仕立て826円など。15時からランチが食べられる貴重な店。
東京都千代田区有楽町2-4-1/有楽町ガード下
03-3211-6001
月 15:00~24:00
火~金 15:00~翌4:00
土 12:00~翌4:00
日曜・祝日 12:00~24:00

Text by Misuzu Yamagishi
Photography by Ahlum Kim

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