石本藤雄を囲むアーティストたち

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石本藤雄を囲むアーティストたち

2019.7.9

4. ヘルシンキのランドスケープを中心に撮影をする、ヘルシンキ在住のフォトグラファー原田智香子。石本藤雄の光と色の魔術に触れて、原田の感性はさらに磨かれる。

本企画において、石本藤雄、鈴木マサルの写真の大半を撮影してくれた原田智香子は、ヘルシンキでランドスケープを中心に撮影をするフォトグラファーであり、石本作品も多く撮影している。自然の静寂と光を独自の視点で写し出す、その感性や世界観を披露。息をのむほど美しく、そして私たちの心に大きく響く写真とともに、二人の出会いや交流、そして石本から学んだことについて綴る。

 

文・原田智香子

1995年、2度目の留学で古典プリント技術を学んでいた私は、特別にデザインに 興味があったわけではなかったのですが、なにげなく ヘルシンキの街中のデザインフォーラムに足を運びました。 ガラス、セラミックと、たくさんのフィンランドデザインが並ぶ中、とりわけ私の目を引いた 器がありました。それはとても日本的な形でありながら、フィンランドの光を感じさせる暖か な黄色の器。「誰の作品だろう?」。そこにはFUJIWO ISHIMOTOと書かれていました。「やはり日本人だったんだ」。これが私の石本さんの作品との初めての出合いでした。

原田が初めて触れた、石本藤雄の作品。Pro Arte 1994 原田が初めて触れた、石本藤雄の作品。Pro Arte 1994

原田が初めて触れた、石本藤雄の作品。Pro Arte 1994


石本との出会い。初めての仕事

石本さんの仕事場であるアラビアのアトリエと、私が通っていた大学は隣同士でしたが、長らく出会う機会はありませんでした。月日を経て2011年、アラビア・アートデパートメント が監修・出版をする『Arabia 9.kerros(アラビア9F)』の制作に際し、石本さんのポートレートと石本さんのアトリエを撮影する依頼を受けて、初めて一緒に仕事をさせていただく機会を得たのです。

 

撮影前、ドアの前に立つとまるで歯科医の部屋をノックするような緊張感に包まれました。ドアが開き、「どうぞ」と招かれたアトリエに足を踏み入れると、色鮮やかな大皿やボウルが大きなテーブルにずらっと並べられていました。「 ポートレートですが、僕がこの中にいるような感じで上から撮るのはどうですかね」と提案されて、石本さんの頭の中ですでに自分が想像するフレームができていることがわかりました。

 

ポートレート撮影で、自分の意思をはっきりと伝えるアーティストは稀です。机の上に登ってファインダーをのぞくと、お皿が並ぶダイナミックな構図がすでにでき上がっていて、「さすが元グラフィックデザイナー、すごい!」と感じました。あとは石本さんを入れて、作品の色やバランス、余白を構成して、最後は表情を狙うのみと。初めてのセッションでしたが、あうんの呼吸で撮影を終了できたことを覚えています。それ以来、作品撮影などの機会が多く、毎回、どこかで石本さんの構図感覚を学べる私は、本当に恵まれています。

原田が初めて撮影した石本のポートレート。原田が撮影すると石本の表情が和らぐといわれている。 原田が初めて撮影した石本のポートレート。原田が撮影すると石本の表情が和らぐといわれている。

原田が初めて撮影した石本のポートレート。原田が撮影すると石本の表情が和らぐといわれている。


石本さんから学んだ、光、そして「四季感」

石本さんの作品をじっくり撮影していると、構図だけではなくさまざまなことを学ぶことができます。中でも 光。特にシンプルでモノトーンな作品は、光の当て方やその反射で表情がどんどんと変わります。光が生み出すその風景は、私自身がランドスケープ写真の中で追い求めている、自然の中の静粛な時間そのもののように感じることがあります。

原田の作品。ヘルシンキの風景。Suomenlinna, Helsinki, Finland, 1999 原田の作品。ヘルシンキの風景。Suomenlinna, Helsinki, Finland, 1999

原田の作品。ヘルシンキの風景。Suomenlinna, Helsinki, Finland, 1999

自然が生み出す、美しい光と色を原田が撮影した1カット。Meri 2019 自然が生み出す、美しい光と色を原田が撮影した1カット。Meri 2019

自然が生み出す、美しい光と色を原田が撮影した1カット。Meri 2019

また石本さんは、土と釉薬で作品の質感を自由に操り、色によって四季や光を表現してそれを感じさせてくれます。太陽がポカポカと当たったみかんのレリーフ、キラキラ光るターコイズブルーの大皿、春の日差しや雪解けを感じさせる数々の作品があります。これらは長年モノクロランドスケープ写真を撮ってきた私に、新たな色の世界観を呼び起こしてくれたように感じます。そしてこの新たな感覚を学んだことが、私をさらに自然へと足を運ばせ、一層自然に触れる楽しみを増やしてくれたように思います。

 

 

→次回は、川上典李子(デザインジャーナリスト)です。
(敬称略)


原田智香子 原田智香子

Profile

原田智香子 Chikako Harada
フォトグラファー
京都芸術短期大学(現・京都造形芸術大学)映像学科卒業後、京都のコマーシャルフォトスタジオで勤務。その後、ヘルシンキ芸術デザイン大学(現・アアールト大学)で4年間写真を学ぶ。2002年独立。ヘルシンキを拠点に主にデザインスチール写真、インテリア写真で多くのデザイナーたちの信頼を受け 活躍する。また日本の雑誌の仕事も勢力的にこなす一方、 自作のアート作品で象徴的なインスタレーション作品も手がける。現在はランドスケープフォトグラフィーを中心に制作を続けている。

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