特別でオリジナルな体験を目的とした旅を求めている、現代の旅行者たち。今、彼らが注目するのは、 斬新なアイディアや高いホスピタリティでもてなす独立系ラグジュアリーホテルだ。その新たな試みは、世界中のホテルチェーンや旅行業界に強いインパクトを与え、最新のトラベルトレンドの源流となっている。
520以上の独立系のラグジュアリーホテルが加盟するSLH（スモール・ラグジュアリー・ホテルズ・オブ・ザ・ワールド）による、2020年の旅のトレンドを分析とレポートが先頃発表された。このレポートをもとに、2020年最旬の旅の姿をPremium Japanの視点でピックアップする。
今、もっとも贅沢な旅について紐解いた前編に続き、この後編では、人気が高まる分散型ホテル、地元の食材や伝統食に注目が集まる食のトレンド、未知なる文化への好奇心を満たす知られざるディスティネーションというの３つの視点から、ゲストに特別な体験を提供するホテル６軒を紹介する。
「ザジェネラルキョウト 高辻麩屋町（旧名 Enso Ango FUYAⅡ 麩屋町通Ⅱ）」（日本・京都）は2018年に開業した日本初の分散型ホテル。京都市内でも人気のエリア四条通と五条通、鴨川の東側の５カ所に５つの特徴あるホテルが分散して立地する。棟によってデザインのコンセプトが異なり、５つを回遊しながら愉しめる。
１. 滞在する都市や町を回遊する楽しみ。旅の上級者のニーズに応える「分散型ホテル」という選択
旅にオリジナリティを求めるホテル＆トラベル上級者たちの興味や関心は、ホテル内でいかに寛ぐかということだけでなく、周辺の自然環境やコミュニティへと変化している。彼らが求めるものを形にしたのが、「分散型ホテル」と呼ばれる新しいタイプのホテル。 施設をいくつかに分散し、エリアを回遊して滞在を楽しむ、というのがコンセプトだ。
「ザジェネラルキョウト」は、「高辻麩屋町」や「高辻富小路」など京都市内５カ所に点在する分散型のホテルだ。レストランやバー、ジムなどのホテル内の施設、内装デザインを手掛けたアーティストもそれぞれ異なり、京都の町を散策しながら５つのホテルを自由に往来し、それぞれの施設を利用することができるというもの。各ホテルでは京都の職人や伝統の担い手によるオリジナルのワークショップを開催。ガイドブックでは知り得ない古都の暮らしを体感する、貴重な経験を提供している。
「Le Refuge de la Traye ルレフュージデラトレイ」（フランス・メリベル） クラシックなサヴォアのデザインからインスピレーションを得たシャレー(山小屋風の建物）がアルプスの村に点在する。
メリベルという、フランスでも有数のスキーリゾートエリアの中に建つ「ルレフュージデラトレイ」は、点在する山小屋風の客室棟、農場、教会、羊飼いの小屋、スパなどから成る、ひとつの集落を形成しているかのようなホテルだ。シャトルバスでスキー場から戻ってきたら、その後の楽しみ方は自由自在。趣のある梁と優雅な家具を備えた心地良い客室で過ごすのもいい。壮観な景色を眺めながら、サヴォア地方の美食やサボヤードワインを楽しむのもよし。その土地独自のコミュニティやカルチャーと一体化する分散型ホテルは、今後ますます注目を集めそうだ。
「Arima Hotel アリマホテル」（スペイン・サンセバスチャン）ビートルーツ、トマト、グレープのガスパチョ。館内にあるレストラン 「Misura ミズーラ」では、ベジタリアンメニューをオーダーできる。
2. その土地で生産された食材から癒しとパワーを。身体が喜ぶ「食体験」との邂逅
その土地ならではの食材を、伝統的な調理法や味付けでいただくことは、旅をする喜びであり目的のひとつだ。近年はヴィーガンやベジタリアンなど植物性食品を中心とした食事が世界中でトレンド。地元で生産された野菜やハーブなどの自然素材を駆使した美しい料理でゲストをもてなし、目も舌も満足させるホテルが高い支持を得ている。ハーブや野菜の活用は食だけに留まらず、スパでのトリートメントにも用いられているという。
スペイン・バスク地方の「アリマホテル」は、世界中から食通が集まる美食の街、サンセバスチャンの海岸沿いにある。ミラモンの森に囲まれ、自然と調和したホテルのダイニングでは、地元産の新鮮な野菜やハーブを多彩に盛り合わせた、「ベジタリアン・テイスティング・コース」を提供している。
「Elite Spring Villas エリートスプリングヴィラズ」（中国・安渓）お茶を使用したスパ
福建省南部の安渓は、鉄観音茶の発祥の地として知られる茶所。「エリートスプリングヴィラズ」は、歴史に育まれた中国文化に敬意を払う高級リゾートだ。豊かな自然に囲まれたホテル内は、外の喧騒を忘れさせる穏やかな気配に満ちている。このホテルでは名産のお茶を舌で味わうだけではなく、入浴して肌で体感することもできる。好みのお茶の湯船にゆっくりと浸かることは、ストレスの緩和や血圧のコントロールにも効果的という。この地でしか体験できない特別なメニューを堪能したい。
３. 知られざるディスティネーションに求めるのは、未知なる文化への好奇心
多くの旅行者が訪れる有名観光地以外にも、魅力的な文化や自然を持つ未知のディスティネーションは世界中に存在する。2020年に注目をしたい新たな旅先を紹介しよう。
「Gangtey Lodge ガンティーロッジ」(ブータン・ガンテ) 渓谷の上にあり、雄大な自然や牧歌的な生活を眺望できる。
“世界一幸せな国”と称されるブータンは渡航者の制限が行われているため、この国独自の文化や風習が守られている。ここで紹介する「ガンティーロッジ」のように、民族スタイルを取り入れながらも近代的な設備を持つラグジュアリーホテルがあり、優雅なステイと稀有な文化に触れる機会を共に得ることができる。例えば、シェドラと呼ばれる朝の祈り、17世紀に建築された修道院でのラマ（僧侶の敬称）との瞑想レッスン。または近くの農場でブータンの国民的スポーツである木製の矢を使うダーツに参加するといった未知の体験が待っている。
「Villa Geba ヴィラゲバ」（モンテネグロ・スヴェティステファン）スヴェティステファン半島を望むハーモニアスイートテラスから。
広大な景色を前に、クラシックホテルで優雅に過ごしたければ、バルカン半島の小国モンテネグロにある瀟洒な隠れ家「ヴィラゲバ」はいかがだろう。青い海、緑の山々、そして中世で時が止まったかのような赤い屋根の街並みのコントラストが美しいこの街は、優雅な滞在と歴史と文化の探索を共に楽しみたい、という旅人の贅沢なリクエストに余すことなく応えるだろう。コトルにある中世の要塞都市まで足を運べば、アドリア海の秘宝と呼ばれるコトル湾と旧市街とを一望できる。その絶景は旅人の心を満たしてくれるはずだ。
手つかずの自然や知られざる秘境の地を訪ね、その土地の魅力を堪能できるラグジュアリーホテルに滞在する旅。地元の文化に触れ、自然を尊重し、心が震える経験をするプレミアムな旅は、あなたの人生を変える旅になるかもしれない。
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