合餐2021 Gohsan 7chefs in Fukuoka合餐2021 Gohsan 7chefs in Fukuoka

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日本のガストロノミーを分かち合う7人のシェフ

2021.12.8

星付きシェフ7人の料理人による一夜限りの晩餐会「合餐2021 Gohsan 7chefs in Fukuoka」

「Florilege(フロリレージュ)」川手寛康、「傳」長谷川在、「La Cime(ラシーム)」高田裕介、「villa aida(ヴィラ・アイーダ)」小林寛司、「Ode(オード)」生井祐介、「デンクシフロリ」清水将、「La Maison de la Nature Goh(ラ・メゾン・ドゥ・ラ・ナチュール・ゴウ)」福山剛。


11月1日、日本のガストロノミー界では約2年ぶりとなる大規模なイベント「合餐2021 Gohsan 7chefs in Fukuoka」が福岡で開催された。集まったのは日本を代表する7人の料理人たち。この日彼らが創り上げたのは、苦しい日々のなか、もっとも打撃を受けた飲食業界の希望となり、若い世代に未来へと進む勇気を与える、温かい光に満ちた一夜であった。


後で振り返ったとき、おそらく日本のガストロノミー史に刻まれる一夜。前代未聞の豪華メンバーが発表されると、この大ニュースはたちまちソーシャルメディアにのって世界中に拡散された。「Florilege(フロリレージュ)」川手寛康、「傳」長谷川在佑、「La Cime(ラシーム)」高田裕介「villa aida(ヴィラ・アイーダ)」小林寛司、「Ode(オード)」生井祐介、「デンクシフロリ」清水将、そして地元福岡の「La Maison de la Nature Goh(ラ・メゾン・ドゥ・ラ・ナチュール・ゴウ)」福山剛。日本のガストロノミー界をときめく7人が一同に会し、腕を振るうのである。


ラ・メゾン・ドゥ・ラ・ナチュール・ゴウ 福山剛 ラ・メゾン・ドゥ・ラ・ナチュール・ゴウ 福山剛

La Maison de la Nature Goh(ラ・メゾン・ドゥ・ラ・ナチュール・ゴウ)」福山剛は、2021年「アジアのベストレストラン5030位、「ミシュランガイド福岡2019年」一つ星を獲得。地元福岡の雄である。


イベントの発起人は「ラ・メゾン・ドゥ・ラ・ナチュール・ゴウ」福山だ。西中洲の太陽の愛称で九州の人たちから敬愛される福山は、九州を中心に、地方の生産者や飲食店をサポートし、日本のローカルガストロノミーの活性化に貢献してきた。また、福岡と地理的に距離が近くてアクセスがよいこともあって、人々の行き来が盛んな韓国や台湾ではとりわけ抜群の人気と知名度を誇る。ガストロノミーをテーマにアジアの国際交流にも力を尽くしている。

 

「これまでずっと料理や食文化の発信をライフワークとしてきました。料理人として自分にできることといえば、まずはこんな状況でも応援してくださったお客様に楽しんでいただきたい。そして僕らも楽しみたい。楽しい時間をシェアしながら、若手料理人や地方の料理人など、飲食業界に元気をお届けできないか。そう考えて気心の知れた仲間たちに声をかけました」福山は、イベントを開催した理由をこう話す。

 

7人それぞれが自分らしさを表現しながら、この夜のためだけに心をひとつにして考案したメニューは全8皿の構成である。


魚介 へべす 島唐辛子 ココナッツ さつまいも 魚介 へべす 島唐辛子 ココナッツ さつまいも

「魚介 へべす 島唐辛子 ココナッツ さつまいも」

五島産のイシガキダイを「タイガースミルク」と呼ばれるマリネ液に軽く漬けたセビーチェに、黄色と黒の縞模様のクラッカーを添えた、大阪を拠点とする「ラシーム」高田のひと皿。「La Cime(ラシーム)」高田裕介は、2021年「アジアのベストレストラン508位、2021年「世界のベストレストラン5076位、「ミシュランガイド京都・大阪+和歌山2022」にて二つ星を獲得している。


トマト チーズ 牛 スグキ トマト チーズ 牛 スグキ

「トマト チーズ スグキ」

「発酵」をテーマにフレンチのチーズと和のすぐきを合わせ、経産牛のしゃぶしゃぶに添えた一品。「フロリレージュ」川手と「傳」長谷川の合作である。Florilegeフロリレージュ)」川手寛康は、2021年「アジアのベストレストラン507位、2021年「世界のベストレストラン」39位、「ミシュランガイド東京2022」二つ星。「傳」長谷川在佑は、2021年「アジアのベストレストラン503位、2021年「世界のベストレストラン」11位、「ミシュランガイド東京2022」二つ星を獲得している。


黒大豆 肝 黒無花果 黒大豆 肝 黒無花果

「黒大豆 黒無花果」

自身の出身地である福岡県朝倉郡の黒大豆「筑前クロダマル」を使った軽やかなケークサレに黒イチジクのチャツネとフォアグラ、エスプレッソ風味のチュイルを重ねた「ラ・メゾン・ドゥ・ラ・ナチュール・ゴウ」福山の作品。


かぼちゃ みりん粕漬 ほうずき 柑橘ピール 卵黄 かぼちゃ みりん粕漬 ほうずき 柑橘ピール 卵黄

「かぼちゃ みりん粕漬 ほうずき 柑橘ピール 卵黄」

レモンチェッロとみりんに漬けた栗かぼちゃのローストに、みりんをベースに卵黄を隠し味に加えたソースを添えた。繊細ではかない甘さが「ヴィラ・アイーダ」小林らしい味わいとなっている。「villa aida(ヴィラ・アイーダ)」小林寛司は、2021年「アジアのベストレストラン5064位、「ミシュランガイド京都・大阪+和歌山2022」二つ星及び「グリーンスター」を獲得。


ノドグロ 菊 ターメリック ノドグロ 菊 ターメリック

「ノドグロ ターメリック」

旬の魚と野菜をデニッシュ生地で巻き込んで焼き上げ、焼き立てをソースと共に味わう「オード」生井のクリエイティビティが光るひと品。90名のゲスト全員に焼き立てを提供するのは困難だったが、7人のシェフの協力を得て達成した。


和牛シンシン 和牛シンシン

「和牛シンシン」

6時間半つきっきりになって石板の上で焼き上げた「デンクシフロリ」清水の渾身の肉。付け合わせの野菜「カブと柿のサワークリームマスタード」を「ヴィラ・アイーダ」小林が、「赤ワインソース」を「ラ・メゾン・ドゥ・ラ・ナチュール・ゴウ」福山が担当した。「デンクシフロリ」清水将は、「ミシュランガイド東京2022」一つ星を獲得。

桜海老ご飯 ビスクがけ 桜海老ご飯 ビスクがけ

「桜海老ご飯 ビスクがけ」

「傳」長谷川の名物である土鍋の炊き込みご飯(桜海老たっぷり)に、「フロリレージュ」川手のフレンチの技術を生かした濃厚なビスクを合わせたふたりのコラボメニュー。刻んだミントのトッピングがエキゾチックな香りを添えている。


島の塩ロールケーキ 秋王のソルベ コンブチャのサバイヨン 島の塩ロールケーキ 秋王のソルベ コンブチャのサバイヨン

「島の塩ロールケーキ 秋王のソルベ コンブチャのサバイヨン」

出身地である奄美大島の塩を使ったロールケーキを「ラシーム」高田が、福岡のブランド柿「秋王」のソルベを「ラ・メゾン・ドゥ・ラ・ナチュール・ゴウ」福山が、コンブチャ(紅茶きのこ)のソースを「オード」生井が手がけた3人の合作だ。

料理のサービスと共に、会場では花人・赤井勝によるライブパフォーマンスが行われた。各テーブルを回り、8品の料理と共に8つの花材をその場で生ける演出で、デザートが提供されると同時にフラワーアートも完成するというものだ。


赤井勝 フラワーアート 赤井勝 フラワーアート

花人・赤井勝によるフラワーアートも会場を沸かせた。


ガストロノミーファンをおおいに喜ばせたこのイベントの裏で、実は7人のシェフによる粋なはからいがあった。九州を中心に、若手料理人約40名を1日アシスタントとして厨房に招き、これまで培った世界トップクラスの技術を目の前で披露したのだ。

 

たとえば、石と火と人間の五感という原始時代から使われていた最低限の道具だけを使い、プリミティブな調理法で衝撃的なガストロノミーの牛肉を創り上げた「デンクシフロリ」清水からは、最先端の器材を備えた厨房を持たなくても世界で戦える技術力を。

 

柿と大根やカブといった根菜を和えた、柿の産地ではごくありふれた惣菜にすぎない「柿なます」をモチーフに、基本の食材を踏襲しながら、誰もが驚くほど洗練されたガストロノミーへと昇華した「ヴィラ・アイーダ」小林からは、古典の再構築という世界のトレンドの本質を。

 

志願して駆けつけた熱意ある若手が、世界で戦う憧れのスターシェフの最先端の料理に、どれだけ刺激を受けたのか、それは計り知れない効果をもたらしただろう。


中村孝則 中村孝則

この晩餐会のナビゲーターとして活躍した中村孝則のスピーチ。


晩餐会のナビゲーターとして登壇した、世界のレストランランキング「世界のベストレストラン50」日本評議委員長 中村孝則は語る。

 

「日本のレストラン文化は、世界でもトップクラスです。こういったイベントを開催することで、飲食業界が活気づき、文化を守り、若手に受け継ぐことができる。今回集まった彼らのレストランは、日本の国境が開けば、インバウンドにおける重要なコンテンツです。日本の存在を海外に発信したという意味でも、このイベントの意義は大きいですね」

 

新しい時代の幕開けを宣言するような「合餐2021 Gohsan 7chefs in Fukuoka」。覚悟をもって大規模なイベントを実施した彼らの今後の活躍を見守り、応援していきたい。

 

 

(敬称略)

 

 

Text by Shifumi Eto
Photography by Koji Maeda

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