「おむすび権米衛」の「鳴子の米」おむすび:「お米が主役」 vol.40 柏木智帆

2016.08.09

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もっちり食感 雪深い山里でつくられた「ゆきむすび」

首都圏を中心に44店舗を展開するおむすび専門店「おむすび権米衛」。実は、店舗によって使っているお米が違うということはあまり知られていません。

多くの店舗では、「コシヒカリ」か「あきたこまち」。「つや姫」や「ゆめぴりか」を使っている店舗も数軒あります。

いずれも減農薬の特別栽培米ですが、3店舗は、農薬も化学肥料も使わないお米を使っています。お米が違えば、味わいも違うため、店舗によってはもっちりとしたおむすびだったり、あっさりとしたおむすびだったり。食べ比べてみると、その違いに気づくかもしれません。

東京都千代田区にある「おむすび権米衛 アパホテル神田神保町駅東店」では、「鳴子の米」を使っています。品種は「ゆきむすび」。もっちりとした食感が特徴のお米です。

鳴子の米でむすんだおむすびは、ごはん粒がきらきら。崩れそうで崩れない加減でふうわりとむすばれ、口の中で粒がほろほろとほどけていきます。甘みと旨みが強く、食べた瞬間のインパクトは抜群。大きめのおむすびですが、具がたっぷりで米肌にまとった塩気がちょうど良いため、するりとお腹におさまります。

天日干しで手間ひまをかけてつくられた鳴子の米。奥羽山脈に抱かれた雪深い山里で「地域の農業を地域の力で守る」を合言葉に始まったプロジェクトから生まれました。

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生産者を支える「鳴子の米プロジェクト」を応援

お米農家の高齢化、米価の下落が進む中、宮城県・鳴子地区の人たちは、冷害が多い鳴子の農業の未来を案じていました。そんな中、民俗研究家の結城登美雄さんの発案から2005年に始まったのが、「鳴子の米プロジェクト」。寒さの厳しい中山間地の鳴子でも育つおいしいお米「東北181号(ゆきむすび)」を「鳴子の米」として栽培し、生産者と消費者がつながり、消費者が生産者を支える仕組みづくりを始めました。

このお米を「おむすび権米衛」が使い始めたきっかけは、1人の女性社員。学生時代から鳴子に通って農作業を手伝い、入社後もその活動を継続していました。そのことを知った岩井健次社長が鳴子を訪問。中山間地で苦労しておいしいお米づくりをしている農家の人たちに心を動かされ、取引を始めたのです。

「お米の消費拡大を通じて日本の農業に貢献したい」という強い信念がある同社では、すべての店舗でお米を1俵24,000円という価格で仕入れています。平成26年産米の相対取引価格は、最も高いお米が19,480円で、最も安いお米が8,809円。全銘柄平均が11,967円(出典:農林水産省)。平成14年にはほとんどのお米が1万円をきるなど、年によって米価は変動。お米農家は翻弄されてきました。こうした現状を打開しようと、おむすび権米衛は、米農家が農業を続けていける価格でお米を買い取っています。さらに、全社員が契約農家で田植えや稲刈りなどの作業に出向くことで、社員1人1人が、自然の恵みへの感謝の気持ちと、米農家の仕事への尊敬の念を抱きながら、おむすびを販売しているのだそうです。

そんな同社が「おにぎり」ではなく「おむすび」と呼ぶのは、理由があります。同社・商品本部長の木村優子さんによると、「三角形のおむすびの角と角の3点をふんわりと手でむすんであげて、お米1粒1粒がちゃんと呼吸できるようにという思いがあります」。「おむすび権米衛」という名前にも、日本のお米や米農業への思いの強さが詰まっているのです。

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