奄美大島での一夜限りのディナー

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イベントレポート by Premium Japan

2023.5.4

「Fly to the Table ~ A Journey of Flavors~」Ode 生井シェフが贈る一夜限りのディナー@奄美大島レポート










2023年2月、ローカルガストロノミーを奄美大島で味わうためのツアー 「Fly to the Table ~ A Journey of Flavors~」が開催された。日本航空とJAL PAK(ジャルパック)が、Premium Japanを運営するルッソとタッグを組んだツアー企画の第一弾である。

 

 

今回、この企画に招かれ、腕を振るったシェフは生井祐介氏。東京・広尾にある「Ode(オード)」のオーナーシェフで、イノベーティブなフレンチで広く知られている。アジアのベストレストラン50にも常にランクインし、その自由な発想から生まれた料理は世界的に評価が高い。






ヴィラリゾートホテル「伝泊 The Beachfront MIJORA」 ヴィラリゾートホテル「伝泊 The Beachfront MIJORA」

ヴィラリゾートホテル「伝泊 The Beachfront MIJORA」。ここでは、圧倒的な自然と対話し、日常の喧騒を忘れる至福の時間を過ごすことができる。





ディナーの場所となったのは、ツアーの滞在ホテル「伝泊 The Beachfront MIJORA」の「2 waters」。奄美大島の限りなく澄んだ美しい海が目の前に広がる最高のロケーションのレストランだ。

 

 

生井シェフを中心に、奄美大島へと乗り込んだ「Ode」の、そして「2 waters」のスタッフたちが、厨房を所狭しと動きまわる。時に立ち止まり、意見を述べあったり。ディナータイムが刻々と近づくと、厨房のボルテージもさらに上がってくるようだった。

 

 








Ode生井シェフとスタッフ Ode生井シェフとスタッフ

「これまで扱ったことのなかった、初めて触れる奄美大島の食材の魅力を引き出すことができたのは『Ode』のスタッフの献身的な努力のおかげです」と生井シェフがねぎらいの言葉をかける。

 





odeスタッフ odeスタッフ

生井シェフと「Ode」スタッフたちの作業は続く。





写真左 :奄美大島で採れるハーブもふんだんに使われた。写真右:ずらりと並んだスターター。手でつまめる料理でリラックスした気分に。 写真左 :奄美大島で採れるハーブもふんだんに使われた。写真右:ずらりと並んだスターター。手でつまめる料理でリラックスした気分に。

写真左 :奄美大島で採れるハーブもふんだんに使われた。写真右:ずらりと並んだスターター。手でつまめる料理でリラックスした気分に。





18時、生井シェフのスピーチで注目のディナーがスタートした。生井シェフは事前に奄美大島の食に関する文献の数々を紐解き、食材や食文化を学ぶために生産者のもとを訪れるなど、時間をたっぷりかけて準備をしたという。

 

 

「歴史的にも、地理的にも恵まれない土地だからこそ、食材への創意工夫があると思いました。生き抜くために食材を何とかして食べよう、保存しようと工夫した奄美大島の方々に敬意を表して、メニューを考案しました。食材とめちゃくちゃ向き合い、めちゃくちゃ考えましたね。地豆を持ち帰り、数ヶ月熟成させて豆板醤にしたり、新しい食材との出会いがとても楽しかったです」

 

 

いよいよ、この場所でしか出会えない絶景のサンセットが唯一無二のガストロノミー体験の始まりを演出する。「Ode」のコースはリラックスして楽しんで欲しいという理由から手でつまめる料理で始まるが、今回もその趣向は同じだ。

 

 

シェフが仕込んだ地豆の豆板醤が香るトビンニャ(奄美大島の珍味、マガキ貝)のタコス風、島バナナとニンジンのタルト、ひじきとコーヒーの香りを感じるアオサ海苔のパータスフレ、地魚「アカマツ」の鮭とば風など、スタートから凝りに凝った料理が並ぶ。それらをつまみながら、ゲスト達は生井シェフの創った世界にどんどん引き込まれていった。





スピーチする生井シェフ スピーチする生井シェフ

生井祐介シェフは、1975年東京生まれ。25歳で料理の道へ。東京・表参道の「レストランJ」、軽井沢の「ウルー」でシェフを務めた後、2012年に東京・八丁堀の「シック・プテートル」でシェフ。2017年に「Ode」をオープン。2019年版ミシュランガイドで一つ星を獲得、2020年「アジアのベストレストラン50」で35位、2023年は20位にランクインしている。

 






ディナーに使われる食器も大きな巻き貝の夜光貝を器にするなど、可能な限り、奄美大島の素材を使うように工夫。浜辺のきれいな砂も盛り付けを彩った。そこには、普通のお皿では演出できない、ローカルイベントならではのライブ感を楽しんでもらいたいという生井シェフの意図があった。

 

 

さらに、コースが進むと、ダイナミックな盛り付けの料理も登場。美しい夜光貝の器に盛り付けられた、夜光貝の身とヒカゲヘゴ(奄美大島に群生する巨大なシダ)を肝マヨネーズで食する酢の物風、ハンダマ(金時草)のペーストで食するハーブで2日間マリネした島ヤギのロワイヤル、2週間発酵させたドラゴンフルーツのソースで頂く豚足と紅芯大根のパイ、黒糖焼酎で煮込んだリュウキュウイノシシなどが供される。どの料理もただ奄美大島の素材を使っただけではなく、素材の組み合わせに驚きがあり、歴史へのオマージュも感じさせる。生井シェフの熱い思いがこもった絶賛に値するローカルガストロノミーである。




豚足と紅芯大根のパイ 豚足と紅芯大根のパイ

豚足と紅芯大根のパイがサーブされると歓声があがった。





夜行貝を器に見立てて使用するアイデアなど、生井シェフだからこそのセンスが凝縮された料理の数々。 夜行貝を器に見立てて使用するアイデアなど、生井シェフだからこそのセンスが凝縮された料理の数々。

夜行貝を器に見立てて使用するアイデアなど、生井シェフだからこそのセンスが凝縮された料理の数々。





奄美大島の様々な植物が使われ、野性味溢れるテーブルに。 奄美大島の様々な植物が使われ、野性味溢れるテーブルに。

奄美大島の様々な植物が使われ、野性味溢れるテーブルに。





コースのメニューを手に一夜限りのディナーを記憶に刻む コースのメニューを手に一夜限りのディナーを記憶に刻む

コースのメニューを手に一夜限りのディナーを記憶に刻む





今回、一緒に厨房に入った伝泊のシェフは「生井シェフは固定観念に囚われない方法で奄美大島の食材をガストロノミーに昇華して下さった。奄美大島の人間には思いつかない素晴らしい料理の数々に大きな刺激をもらいました。生井シェフの食材の扱い方や調理方法を奄美大島の他の料理人にも広めていきたいです」と語っている。

 

 

 

食の世界は突き詰めれば突き詰めるほど奥が深いもの。特に、ローカルガストロノミーの世界に足を踏み入れると、食の領域をはるかに超えた幅広い知識が要求されることになる。なぜなら、ローカルガストロノミーとは地域の歴史や文化を学び、その知識を生かしながら地域の食材で創作される料理で、作る側にも、食する側にも、学びがなければ成り立たないからだ。

 





第一回目の「Fly to the Table ~ A Journey of Flavors~」は、こうして大成功に終わり、ゲスト達にも料理人にも忘れられない思い出を残した。すでに次の候補地での実施を予定しているというが、次回はどこで、どんなローカルガストロノミーに出会えるのだろうか。

 

 

日本には地域ごとに豊かな自然と文化があり、そこに育まれて来た独自の食文化がある。これはまさに日本の宝と言えるもの。ローカルガストロノミー・ツーリズムで地方にスポットライトを当てていくこのプロジェクトは、そんな宝に気づく機会を与えてくれる。さらに、日本の食文化の発展や「食」を軸とした美食都市作りにも貢献できるに違いない。この画期的なプロジェクトに今後も大いに期待したい。

 

text by Yoshiko Takahashi


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