パレスホテル 越前産本まぐろ・紫野菜・オシェトラキャビア・東浦みかんのヴィネグレットパレスホテル 越前産本まぐろ・紫野菜・オシェトラキャビア・東浦みかんのヴィネグレット

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グルメ最前線 トップレストランを探訪する

2023.11.25

「パレスホテル東京」×福井「ル・ジャルダン」 フレンチのコラボで出現する極上の美味

越前産本まぐろ・紫野菜・オシェトラキャビア・東浦みかんのヴィネグレット







東京・千代田区の「パレスホテル東京」は、2022年より「最上質の日本」の提供を目指し展開する「Essence of Japan」というイベントを実施している。
昨年は、山梨県とのコラボという形で実現した。そして今回、北陸3県の先頭を切って、福井県のレストラン「Le jardin(ル・ジャルダン)」のシェフ・堀内亮氏、同県を代表する日本酒を醸造する「黒龍酒造」の8代目蔵元・水野直人氏とのコラボとなり、来春開催が決まったばかりだ。彼らを迎える「パレスホテル東京」側は、フランス「農事功労賞」のシュバリエを受賞した総料理長・齋藤正敏氏である。
福井県は海鮮と野菜の宝庫にして、あまり知られていないが、梅、ナシ、ミカンなどの果樹が豊かな土地でもある。イベントに先んじて、実際のメニューを試食する席が設けられたので、その様子を報告しておきたい。

 

福井の豊かな食材が皿上に爆ぜる

 

最初にサーブされたのは、齋藤正敏氏によるアミューズ・ブーシュで、「越前海老とズワイ蟹のタルトレット・クリュスタッセのコンソメ」である。






越前海老とズワイ蟹のタルトレット・クリュスタッセのコンソメ 越前海老とズワイ蟹のタルトレット・クリュスタッセのコンソメ

越前海老とズワイ蟹のタルトレット・クリュスタッセのコンソメ






まず、写真左のタルトレットは直径4.5センチほどだ。その中に込められたメインの食材は海老とズワイ蟹なのだが、あおさ海苔、ライムのジュレ、レモン風味のオリーブオイル、シソなどが細密に組み込まれ、あたかも小宇宙のようだ。ガブリと噛んで咀嚼すると、海老とズワイ蟹が中心にありながら、様々な味が散弾のように口中を射抜いた。軽く衝撃を受けるほどの美味である。コンソメはビーフコンソメをベースにして、同じく越前海老とズワイ蟹のエッセンスがほとばしり、豊饒きわまりない。一杯ではとても足りません。

 

ペアリングされたアルコールについても触れておかねばならない。ペアリングの多くは「黒龍酒造」の酒であるが、最初に出てきたのは「ESHIKOTO AWA Etra Dry 2020」というスパークリング日本酒である。爽やかな酸味と苦味が混じり合うドライな代物だ。海鮮ものには特に合う。






(左から)ESHIKOTO AWA Extra Dry 2020 ESHIKOTO 永 純吟、ESHIKOTO 水仙 (左から)ESHIKOTO AWA Extra Dry 2020 ESHIKOTO 永 純吟、ESHIKOTO 水仙

(左から)ESHIKOTO AWA Extra Dry 2020、 ESHIKOTO 永 純吟、ESHIKOTO 水仙。

 






続く冷前菜は、同じく齋藤氏による「越前産本まぐろ・紫野菜・オシェトラキャビア・東浦みかんのヴィネグレット」。昆布で締めて炙った越前産のまぐろに、ビーツ、紫人参、アンティーブ、紫キャベツ、菊など、福井県産の紫色の野菜をぎゅっと一つにまとめた。キャビアを載せた赤紫色のまぐろと、紫色の種々の野菜が混然一体を成す。敦賀産東浦みかんを使用したヴィネグレットと煮詰めたバルサミコで味付けしてあり、食材それぞれが持つ味の変化を楽しませてくれる。合わせたのは純米大吟醸「ESHIKOTO・水仙・純米大吟醸」で、まろやかながらも実にフルーティな味わいだ。

 

<ル・テタンジェ賞>世界1の料理に驚嘆

 

最も驚かされた一品がこの日メインとしてサーブされた「牛肉のブリオッシュ包み焼き 20年熟成ポルトルージュのソース」である。






牛肉のブリオッシュ包み焼 20年熟成ポルトルージュのソース 牛肉のブリオッシュ包み焼 20年熟成ポルトルージュのソース

牛肉のブリオッシュ包み焼 20年熟成ポルトルージュのソース





国産牛フィレ肉の間に柚子胡椒を塗った牛タンが真一文字に挟み込まれている。その周囲を鶏と春菊のムースが薄く包み、ブリオッシュ生地でくるんだあとにオーブンで焼いた、とても凝った一品だ。火入れが難しそうなのだが、フィレもタンもジャストに焼き上げられた素晴らしい出来映えである。トリュフをまぶした濃厚なポルトルージュのソースは、見事に肉の味を引き上げていた。さらに、柚子胡椒と聞いて、うまくマッチするのだろうかという心配は杞憂にすぎなかった。ピリリと舌を刺激する柚子胡椒は、味に重層性を与えていた。結果、もの凄く美味しい。

 

写真右奥から、中をくり抜いた小玉ねぎに細かくした牛タンを詰め込み、トップに玉ねぎと紫蘇のピュレを添えたこだわりのガルニチュール、ジャガイモのポムスフレ、トリュフと菊イモのフランといった3種の付け合わせも、それぞれに見事な出来映えで、その一つ一つが脇役とは思えないほどの存在感を示した。

 

実はこの一品は、堀内シェフが2022年の<ル・テタンジェ賞>国際シグネチャーキュイジーヌコンクールの世界大会で第1位を獲得したときの料理である、と聞けばなるほど納得の完成度を感じさせた。






工藤 隆浩氏(前列左端)、堀内 亮氏(前列左から2番目)、齋藤 正敏氏(前列右から2番目) 工藤 隆浩氏(前列左端)、堀内 亮氏(前列左から2番目)、齋藤 正敏氏(前列右から2番目)

工藤 隆浩氏(前列左端)、堀内 亮氏(前列左から2番目)、齋藤 正敏(前列右から2番目)






ペアリングは、「ジュヴレ・シャンベルタン2017シャンソン」とさすがのもので、ひと口ごとにため息しか出なかった。パレスホテル東京シェフソムリエの佐藤隆正氏によるチョイスである。

 





デザート「福井梅」、端的に言ってとても美しい。 デザート「福井梅」、端的に言ってとても美しい。

デザート「福井梅」





デザートがまた見事だった。「ル・ジャルダン」のシェフパティシエ・工藤隆浩氏による「福井梅」である。命名こそシンプルだが、中身は複雑だ。写真右の球体は、黒龍酒造の梅酒に漬けた梅の角切りと、福井梅をシロップで煮込んだコンポートが、梅風味のクリームで包まれ、さらに外周をホワイトチョコレートでコーティングするという凝りようだ。中の梅だけを掬(すく)えばさすがに酸味が優ったが、アイスとチョコとともに食べれば、まさに絶妙の塩梅(あんばい)を醸し出した。写真左のローズマリーと梅のシャーベットは、口中を一新してくれる爽やかさだ。
この度のコース料理は、パレスホテル東京がもともと持っているシェフとソムリエとサービスの底力に、「ル・ジャルダン」の新しい息吹が加わり、相互に高まり合う波動を十二分に感じさせるものだった。来年の本番では、以上のメニューに温前菜と魚料理が加わり、アルコールも全部で5種となるというから楽しみでしかない。

 

コラボレーションイベントの概要

日時:2024年2月6日(火)18:30~
場所:パレスホテル東京 4F 宴会場「山吹」
料金:42,000円(お食事・お飲み物、サービス料・消費税込み)

東京都千代田区丸の内1-1-1
連絡先:03-3211-5326(パレスホテル東京 イベント受付)







文:石橋俊澄
Toshizumi Ishibashi

慶應義塾大学大学院文学部フランス文学科修士課程修了後、文藝春秋入社。「週刊文春」、「マルコポーロ」、「文藝春秋」、「ノンフィクション出版部」などを経て、「クレア・トラベラー」、「クレア」、「増刊ムック編集部」で編集長を歴任、最終は編集委員。私財での海外グルメ旅行は数知れず、また、5年間に及ぶ「クレア・トラベラー」時代には、30カ国余で最上の食巡りをする。公私にわたる食体験で衝撃を受けた店を7つ挙げれば、フランス・マントン「ミラズール」、パリ「エピキュール」、スペイン・ジローナ「エル・セジェール・デ・カンロカ」、イタリア・ソレント「トッレ・デル・サラチーノ」、香港「大斑樓」と「アンバー」、東京「セザン」。現在、食・ホテル・旅館から歴史・医療・ビジネスもののエディター兼ライター。

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