伝統工芸を体感できる染織文化の発信地。烏丸御池の「細尾」新旗艦店

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12代目細尾真孝が拓く西陣織の未来(後編)

2019.11.22

伝統工芸を体感する染織文化の発信地。烏丸御池の「細尾」新旗艦店

工芸建築と染織文化を融合した旗艦店の誕生

2019年9月、京都の中心にある烏丸御池に「細尾」の新たな拠点「HOSOO FLAGSHIP STORE」が誕生した。12代目細尾真孝は、「西陣織を世界へ展開する事業もちょうど10年が経ち、少しずつ形になってきたと思っています。ただ、これまでは建築家やインテリアデザイナー、ファッションデザイナーなどのプロフェッショナルとのB to B展開でした。次なるステップはそれを継続しつつ、一般の消費者の方々にも西陣織の新しい展開を披露して、クラフトをライフスタイルの中で楽しんでもらうことだと思っています」と語る。「HOSOO FLAGSHIP STORE」の建物は本社ビルとしての機能も持つ。この建物の特徴は伝統的な左官技術をはじめ、多岐にわたる職人の手技が随所に感じられる「工芸建築」であることだ。「この辺りは元々室町の問屋街で、染織や和装を支えてきたエリアです。着物のマーケットが小さくなってしまった今こそ、染織の文化を発信する場にしたいという思いを設計にも反映しています」。

店舗1階のフラッグシップストア兼ショールームの様子。 店舗1階のフラッグシップストア兼ショールームの様子。

店舗1階のフラッグシップストア兼ショールームの様子。

「染織文化を発信する空間を考えた時、工芸が体感できる工芸建築であるべきだと思いました」。建物を囲う塀は、土が描く自然のグラデーションが美しい版築塀が取り入れられている。京都の4箇所で採取された土を使い、一層ごとに突き固めた塀は、左官職人が1年かけて築いた技術の結集という。また黒漆喰で塗られた外壁も、よく見れば職人の手のストロークが残る味わい深いものだ。「ミニマリスティックでありながら、細かなディテールや質感が多彩な表情をもたらすために、人の手業が残るような仕上げを選びました」。

着色しない、自然の色の層が生み出すストライプが印象的な版築塀。外壁からの連続性を感じられるように、室内にも一部が取り入れられている。 着色しない、自然の色の層が生み出すストライプが印象的な版築塀。外壁からの連続性を感じられるように、室内にも一部が取り入れられている。

着色しない、自然の色の層が生み出すストライプが印象的な版築塀。外壁からの連続性を感じられるように、室内にも一部が取り入れられている。


建物へのこだわりはそれだけではない。外壁を走るゴールドのラインは、金箔職人が金箔を貼って仕上げたもの。「金箔を使ったのは、箔と西陣織との関係性が非常に深いことからです。本金は光が当たるとその輝きが際立ちます。経年変化をする黒漆喰や版築と、タイムレスな金を組み合わせることで、今まで受け継いできた時間と未来を象徴することを意識しました」。店舗に足を踏み入れれば、大理石を埋め込み研ぎ出した床にもまた、職人の手技が余すことなく発揮されている。

外壁の黒漆喰に走る金のラインは、外を行き交う人々を内部へと誘うことを意識しているという。 外壁の黒漆喰に走る金のラインは、外を行き交う人々を内部へと誘うことを意識しているという。

外壁の黒漆喰に走る金のラインは、外を行き交う人々を内部へと誘うことを意識しているという。

1階はフラッグシップのストア兼ショールーム。約100種類のテキスタイルを取り揃え、オリジナルファニチャーやカーテン、壁紙のオーダーを受け付ける。クッションやルームシューズといった、インテリアのアクセントになるプロダクトも購入可能。 1階はフラッグシップのストア兼ショールーム。約100種類のテキスタイルを取り揃え、オリジナルファニチャーやカーテン、壁紙のオーダーを受け付ける。クッションやルームシューズといった、インテリアのアクセントになるプロダクトも購入可能。

1階はフラッグシップのストア兼ショールーム。約100種類のテキスタイルを取り揃え、オリジナルファニチャーやカーテン、壁紙のオーダーを受け付ける。クッションやルームシューズといった、インテリアのアクセントになるプロダクトも購入可能。

ラウンジもまた伝統工芸が体感できる空間になっている。「椅子には一脚ずつ異なる細尾のテキスタイルが張られていて、実際に座って感触を確かめていただくことができます。また、朝日焼・十六世松林豊斎の茶碗で抹茶を提供。版築壁のストーリーのように、100年前と70年前の土を使って積層化した朝日焼のコーヒーカップも使用しています。店内で使用するトレイは中川木工芸に別注しました」。

 

つまりは、すべてが伝統工芸品といっても過言ではない。供されるマカロンは平安時代の公家文化から生まれた、かさねの色目を取り入れている。「着物の表地と裏地の色の組み合わせで色を表現することを『かさね色』と言い、十二単衣のようなかさね着の色は『襲色目(かさねのいろめ)』と呼ばれます。後に両方を合わせて『かさねの色目』と呼ばれるようになりました。マカロンの上と下でかさねの色目を表現したいというストーリーをパティシエに伝え、完成したものです」。

ラウンジでは抹茶+ショコラ(プレーン・ごま)1,800円など、上質なドリンクとストーリー性のあるスイーツが用意されている。 ラウンジでは抹茶+ショコラ(プレーン・ごま)1,800円など、上質なドリンクとストーリー性のあるスイーツが用意されている。

ラウンジでは抹茶+ショコラ(プレーン・ごま)1,800円など、上質なドリンクとストーリー性のあるスイーツが用意されている。


2階にある「HOSOO GALLERY」では織物をメディアとして、年に3〜4本の展覧会を予定しているという。オープニングは『THE STORY OF JAPANESE TEXTILESー日本の美しい布ー』として、日本の染織文化に焦点をあてた展覧会が12月14日まで開催されている。12代目細尾真孝が自らの足で訪ねた全国33の染織産地の布が、そのストーリーを伝える道具や素材などと共に展示されている。「各地の布はその土地ごとの風土や歴史、それによって培われた人々のキャラクターなどが密接に絡み合う中で生まれてきたもの。北海道から沖縄まで多様な染色文化があり、それが今も受け継がれている国は日本だけでしょうね」。

2階ギャラリーで開催されている「THE STORY OF JAPANESE TEXTILES―日本の美しい布―」の様子。12月14日まで開催。 2階ギャラリーで開催されている「THE STORY OF JAPANESE TEXTILES―日本の美しい布―」の様子。12月14日まで開催。

2階ギャラリーで開催されている「THE STORY OF JAPANESE TEXTILES―日本の美しい布―」の様子。12月14日まで開催。

3階には一般公開されていない7,000点ものコレクションを揃えた着物サロン、5階は世界初の「NISHIJIN REFLECTED」という完全ウォータープルーフの西陣織の外壁材で彩られた多目的のホールとなっている。

壁面収納とデジタル管理で膨大な着物コレクションが収納されている3階。 壁面収納とデジタル管理で膨大な着物コレクションが収納されている3階。

壁面収納とデジタル管理で膨大な着物コレクションが収納されている3階。

西陣織をテキスタイルとして再構築して世界へと発信し、その手応えと共に日本各地に受け継がれる染織へと目を向けた細尾真孝。新たなステージとなる拠点は整った。次に見せてくれる染織の世界を、期待せずにはいられない。

 

(敬称略)

 

12代目細尾真孝が拓く西陣織の未来(前編)

細尾真孝 Masataka Hosoo
細尾常務取締役 マサチューセッツ工科大学(MIT)メディアラボ・ディレクターズフェロー
1978年、西陣織老舗の細尾家に生まれる。大学卒業後、音楽活動を経て、大手ジュエリーメーカーに入社。退社後フィレンツェに留学し、2008年に細尾に入社。2009年より新規事業を担当。帯の技術、素材をベースにしたファブリックを海外に向けて展開し、建築家、ピーター・マリノ氏のディオール、シャネルの店舗に使用される。2012年、「GO ON」の一員として国内外へ伝統工芸を広める活動をスタートさせる。2014年、日経ビジネス誌「日本の主役 100人」に選出。2016年よりMITのディレクターズフェローに就任。
http://www.hosoo.co.jp/

HOSOO FLAGSHIP STORE
京都市中京区柿本町412
075-221-8888
営業時間10:30〜18:00
日曜、祝日、年末年始休

Text by Mako Yamato
Photography by © HOSOO .Ltd.,
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