45周年記念「立体彫金懐中時計」GXBE998  クレドールが誇る極薄機械式ムーブメントを搭載し、裏面には現代の名工・照井清が渾身の力を込めて制作した立体彫金が見事。限定数量10本。

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SEIKO〜世界の頂点へ(前編)

2019.9.26

CREDOR(クレドール)
〜彫金師・照井清の世界とブランド45年の足跡

45周年記念「立体彫金懐中時計」GXBE998
クレドールが誇る極薄機械式ムーブメントを搭載し、裏面には現代の名工・照井清が渾身の力を込めて制作した立体彫金が見事。限定数量10本。 手巻き キャリバー6898 ケース:18Kイエローゴールド、サファイアガラス チェーン:18Kイエローゴールド 径39.0 mm 10,000,000円(税抜)

日本の美意識と精緻な技術から、世界的な評価が高まるセイコーウオッチ。そのモノづくりの真髄に迫りながら、2つのプレミアムブランドを紹介。前編ではクレドールの素晴らしき彫金技術に注目する。セイコーウオッチにおける高級ドレスウォッチのカテゴリーを担ってきたクレドールが誕生45周年を迎え、独立ブランドとして新たなスタートを切った。これを記念し、限定モデルが登場。そこに込められた立体彫金の技を通して、ブランドの真価を探る。

クレドールの美学と精神性が宿る
日本最高峰のドレスウォッチ

世界に誇り得る最高峰の高級ドレスウォッチを目指し、1979年に誕生したブランド、クレドール。その5年前に誕生した「特選腕時計」のコレクションを前身に、“黄金の頂き”を意味するコンセプトを受け継ぎ、ブランドとして進化を遂げた。シンボルであるクレストマークは、黄金の頂きに3つの星を掲げ、デザイン、テクノロジー、クラフトマンシップを象徴する。そして45周年を迎えた今年、独自の美意識と匠の技を注ぎ、五感と好奇心をくすぐるラグジュアリーブランドとして世界に発信するため、ブランドを独立化したという。

 

これを記念し、その世界観を具現化して発表されたのはなんと懐中時計だった。和紙挽きした白文字盤に、洗練されたアラビック数字インデックスと繊細なシェイプの針が映える。チェーンにつながれた懐中時計の伝統的なスタイルは、腕時計が主流となった今、あらためて時計本来の美しさや存在感をアピールする。その佇まいはもちろんのこと、胸ポケットからこれを取り出し、目を落とす所作も美しく映ることだろう。だが魅力はそれだけではない。ケースを裏返せばそこに豊饒の美が現れる。力強い大樹にざくろの実や宝相華(ほうそうげ)が咲き、フクロウが留まる。「生命の樹」と名づけられ、わずか4cmにも満たない直径に、貝と立体彫金を組み合わせた技法で神秘的な世界を表現している。それは手の中で時を慈しみ、美を愛でるという、懐中時計ならではの魅力が味わえる風雅な趣向を持ち、クレドールの美学や精神性が伝わってくる。日本最高峰の高級ドレスウォッチを追求するブランドにこれほどふさわしい時計はない。

彫金師・照井清には、信じられないことに彫金の師匠はいなかった。そのため独自の研究と経験、そして感性でその技術を磨いていったと言う。今や世界的にもその技術を持ち合わせる人はいないという照井の技術を絶やさないために、照井の横には後継者となる人が付き、日々技術を鍛錬している。 彫金師・照井清には、信じられないことに彫金の師匠はいなかった。そのため独自の研究と経験、そして感性でその技術を磨いていったと言う。今や世界的にもその技術を持ち合わせる人はいないという照井の技術を絶やさないために、照井の横には後継者となる人が付き、日々技術を鍛錬している。

彫金師・照井清には、信じられないことに彫金の師匠はいなかった。そのため、独自の研究と経験、そして感性でその技術を磨いていったと言う。今や世界的にもその技術を持ち合わせる人はいないといわれている。その技術を絶やさないために、照井の横には後継者となる人が付き、日々技術を鍛錬している。

立体彫金はレリーフ状に彫る独創的な技法であり、平面彫りや透かし彫りとは異なり、時計で使われることは海外でもまれである。これを手がけたのは、セイコーが世界に誇る雫石高級時計工房に所属する彫金師の照井清だ。現代の名工のひとりに数えられ、黄綬褒章を受章する。だがその技術をもってしても今回は大きな挑戦だったと言う。作業は、デザイナーの作画をもとに、それをまず頭の中で立体化することから始まる。今回ならばわずか1.85mmの高低差で遠近感や全体のバランスを構成し、実際に試作しながら、思い描いた理想へと近づけていく。この間、必要となる技法や演出表現などを見極め、試行錯誤を繰り返す中、必要となれば新たに道具さえも作る。実際に照井が愛用する、バイトと呼ばれる彫刻刀はすべて自作だ。

45周年記念モデルの彫金では、バイトと呼ばれる彫刻刀が6本以上使用されている。これらの道具はグリップや刃の形状は、作り上げる作品に合わせて、その都度、照井が自作をしていく。 45周年記念モデルの彫金では、バイトと呼ばれる彫刻刀が6本以上使用されている。これらの道具はグリップや刃の形状は、作り上げる作品に合わせて、その都度、照井が自作をしていく。

45周年記念モデルの彫金では、バイトと呼ばれる彫刻刀が6本以上使用されている。これらの道具はグリップや刃の形状は、作り上げる作品に合わせて、その都度、照井が自作をしていく。

「木製グリップは、自分の掌に合うように棒材を削り、先端部に旋盤用の超硬材を取りつけ、その先を刃に仕上げます。この時、刃を徹底的に鏡面に磨き上げることが重要で、こうすることで彫った面も美しく輝きます」。


日本刀の形状を応用した独自の彫刻刀で、
美しい立体感を生み出す

通常のバイトの刃では彫った跡も粗く、これを補うために全体を磨き上げるという。だが刃自体が丹念に磨かれていれば、削った面もシャープで美しい鏡面になり、より豊かな表情が生まれるのだ。さらにその刃の形状にも独自の工夫が施され、先端を日本刀のように反らすことで、たとえ曲線を彫ってもラインはつねに左右均等の角度になる。「結果、どの方向から見ても輝きと美しさが変わりません。これは腕につけ、さまざまな位置から見る時計にこそ必要な技法です。ただ刃先がカーブを描いているため、接点が小さい中で安定させて彫るには高い技術が必要ですね」。

 

今回とくに難しかったのは、複雑なモチーフの表現だったという。「中心にある生命の樹の立体感を出しつつ、フクロウや花などさまざまな要素を包み込む包容力をいかに表現するか。この力強さと優しさをどのように両立させるかを悩みました。最初は木肌を粗くしたところ、無骨さが強調されてしまいました。そこで今度は絹目をつけて仕上げてみたところ、柔らかさに加え、ねじれた樹にも方向性が生まれて生命力を感じさせるようになったのです」。この絹目とは、ダイヤモンドバーをつけたグラインダーで形状を出し、削り跡で陰影をつけて立体感を演出する。まるでデッサンのような効果が得られる独自の技法だ。

照井が100時間を超える時間をかけて制作した立体彫金懐中時計の制作の様子。 照井が100時間を超える時間をかけて制作した立体彫金懐中時計の制作の様子。

照井が100時間を超える時間をかけて制作した立体彫金懐中時計の制作の様子。

さらにもうひとつハードルになったのが、ざくろの実、宝相華、フクロウの羽に用いた約4mmの貝の造形だった。「金属に比べ、貝は硬くてもろいので衝撃で割れてしまいます。そのため、力をかけずゆっくり回数をかけて彫らなければなりません。そして形状を出した後は、グラインダーの先をゴム砥石に替えて磨きます」。実はこの工程は当初、貝の加工職人に依頼する予定だったそうだ。「ところがこのレベルはできないと断られてしまったんです。それでも妥協できず、急遽、私がやることになったのです。たとえ一般的にはそこまでのクオリティを求められなくても、クレドールではその先を目指さなくては。お客様にも納得していただけませんからね」と照井。でも作る本人が一番納得できないんですよと笑う。完璧を求めて自らの技術も進化を続け、そこには限界はない。照井は語る。「よく伝統を守って今までの形を変えないといわれますが、そんなことは絶対にないと僕は思います。むしろどんどん新しいものを作っていく、それが伝統だと思っていますし、それがクレドールではないでしょうか」。

クレドール45周年記念限定モデル「立体彫金懐中時計」を製作する照井の技術を垣間見る。©SEIKO

クレドール CREDOR
クレドールは、厳選した素材と卓越した技術により、日本人の感性と豊かな個性を表現するセイコーの高級ドレスウォッチのブランドとして1974年に誕生。今年45周年を迎えた。クレドールとはフランス語で「黄金の頂き」を意味するように、高度な技術によって生まれた世界有数の薄さを誇るメカニカルムーブメントをはじめ、彫金やダイヤモンドセッティングなど、見事なまでの匠の技によって生み出されている。定番シリーズとしてはリネアルクスシリーズ、シグノシリーズ、ジュリシリーズなどがある。

https://www.credor.com/
https://www.seikowatches.com/

 

(敬称略)

 

SEIKO〜世界の頂点へ(後編)へつづく

Text by Mitsuru Shibata
Photography by Takashi Sekiguchi
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