「ミラズール」で提供されマウロ・コラグレコのシグネチャーディッシュのひとつ「ビーツ、オシェトラキャビアのソース」。調味料は使用せず、生クリームの風味とキャビアの塩味だけで味わう。「ミラズール」で提供されマウロ・コラグレコのシグネチャーディッシュのひとつ「ビーツ、オシェトラキャビアのソース」。調味料は使用せず、生クリームの風味とキャビアの塩味だけで味わう。

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三つ星&世界NO.1シェフ、マウロ in TOKYO(前編)

2019.12.26

三つ星にして世界1位。「ミラズール」マウロ・コラグレコ シェフを日本でキャッチ

「ミラズール」で提供されるマウロ・コラグレコのシグネチャーディッシュのひとつ「ビーツ、オシェトラキャビアのソース」。調味料は使用せず、生クリームの風味とキャビアの塩味だけで味わう。
Photography by ©lopezdezubiria



ガストロノミー界の三冠を獲得した、世界1位のスターシェフの来日

南フランスのコート・ダジュール空港から車で約50分。イタリアとの国境に位置する、レモンが名産の小さな街マントンに、レストラン「Mirazur(ミラズール)」がある。世界各国をグローバルに食べ歩くガストロノミストたちが「世界最高峰」と賞賛する三つ星レストランだ。チームを率いるシェフは、アルゼンチン出身のMauro Colagreco(マウロ・コラグレコ)。12月上旬、7年ぶりに来日した彼に話を聞いた。



2019年1月、フランス版「ミシュラン2019」で、非フランス人シェフの店では非常にめずらしいとされる三つ星を獲得したレストラン、それが「ミラズール」だ。6月には、2019年版「世界のベストレストラン50」で、フランスから初めて首位に立った。さらに11月、2020年版「世界のベストシェフ100」では、マウロ自身が世界一の料理人に選ばれた。



2019年6月、シンガポールで開催された2019年版「世界のベストレストラン50」で1位になった「ミラズール」のチーム。アルゼンチン・ブラジル・フランス・イタリアの4ヵ国の国旗を縫い合わせた旗を持って登壇した。右はスーシェフで、今回の来日にもコラグレコに帯同したLuca Mattioli(ルカ・マッティオリ)。 2019年6月、シンガポールで開催された2019年版「世界のベストレストラン50」で1位になった「ミラズール」のチーム。アルゼンチン・ブラジル・フランス・イタリアの4ヵ国の国旗を縫い合わせた旗を持って登壇した。右はスーシェフで、今回の来日にもコラグレコに帯同したLuca Mattioli(ルカ・マッティオリ)。

2019年6月、シンガポールで開催された2019年版「世界のベストレストラン50」で1位になった「ミラズール」のチーム。アルゼンチン・ブラジル・フランス・イタリアの4ヵ国の国旗を縫い合わせた旗を持って登壇した。右はスーシェフで、今回の来日でもマウロに帯同したLuca Mattioli(ルカ・マッティオリ)。Photography by The World’s 50 Best Restaurants



2019年12月、今をときめくスターシェフが来日して、東京で料理を披露するというニュースは、瞬く間に世界を駆け巡り、国内のみならずアジア各国からも注目を集めた。いわばタイトルを総ナメしての来日となったわけだが、約半年ぶりに再会したマウロからは、気負いや高揚はまったく感じられない。素朴な雰囲気もそのままで、いつもの穏やかな微笑みを浮かべている。「やっと日本に来られて嬉しい」。



食材を慈しむ料理人が見つけた、マントンと日本の共通点

一般的に、世界のシェフが来日する動機となるのは、世界最高品質と評される日本の食材を調理してみたいという欲望だ。けれどもマウロの場合、自身のレストランですでに達成している。彼はホームグラウンドのマントンを「小さな日本」と表現した。「どちらの土地も海、大地、山や森で構成されていて、海からは新鮮なシーフード、大地からは肉や野菜、穀物、山や森からはジビエやきのこといった森の恵みがもたらされるため、食材が豊かでしょう」。マントンと日本。それぞれの共通点と違いを探り、それをレシピに落とし込んでいく作業は、とても楽しいものだったと語る。


2019年4月~2020年1月まで10ヶ月間開催される「COOK JAPAN」。その言葉通り「日本の食材」を使って、世界のスターシェフが新しい料理を創り出すプロジェクトで来日して腕をふるったミラズールのシェフ、マウロ・コラグレコ。 2019年4月~2020年1月まで10ヶ月間開催される「COOK JAPAN」。その言葉通り「日本の食材」を使って、世界のスターシェフが新しい料理を創り出すプロジェクトで来日して腕をふるったミラズールのシェフ、マウロ・コラグレコ。

2019年4月~2020年1月まで10ヶ月間開催される「COOK JAPAN PROJECT」。その言葉通り「日本の食材」を使って、世界のスターシェフが新しい料理を創り出すプロジェクトで来日して腕をふるったマウロ。



9日間という限られた時間のなか、1泊2日で京都まで足を伸ばし、精力的に活動した。漬け物の加工場などいくつかの生産の現場やレストランも訪れた。慌ただしいスケジュールの中、東京・南青山「NARISAWA(ナリサワ)」の成澤由浩、東京・外苑前「Florilege(フロリレージュ)」川手寛康など、旧知のシェフ仲間との再会を楽しんだ。これらの経験を通じて、ファインダイニングにおける日本の進化と伝統の両立に感銘を受けたそうだ。



東京・外苑前「Florilege(フロリレージュ)」で川手寛康と再会。 東京・外苑前「Florilege(フロリレージュ)」で川手寛康と再会。

東京・外苑前「Florilege(フロリレージュ)」で川手寛康と再会。



「川手の料理をいつか味わいたい」。そんなコラグレコの願いに応えて川手が調理したのは、国産の蟹、牛モツ、ナスなどを使った日本らしいフランス料理。日本の食材や調味料についてなど、コラグレコの問いに快く答えてくれた。 「川手の料理をいつか味わいたい」。そんなコラグレコの願いに応えて川手が調理したのは、国産の蟹、牛モツ、ナスなどを使った日本らしいフランス料理。日本の食材や調味料についてなど、コラグレコの問いに快く答えてくれた。

「川手の料理をいつか味わいたい」。そんなマウロの願いに応えて川手が調理したのは、国産の蟹、牛モツ、ナスなどを使った日本らしいフランス料理。日本の食材や調味料についてなど、マウロの問いに快く答えてくれた。



南仏マントンで地域と融合した、美しい三つ星レストラン

ここで、彼のホームグランドであるマントンとそのレストランについても紹介しよう。

 

私が食事を楽しみにミラズールを訪れた際、南仏の強い陽射しが刻んだ皺が美しい農夫は、土に染まった両手をこすりながら言った。「彼はレストランが成功しても、自宅を立派に建て替えることも、ブランドの服や腕時計を身につけることも、高級車を乗り回すこともしない。オーガニック農園を造り、鶏を放し飼いにして、ひたすらよりよい食材を求めている。そういう人です」。毎日、新鮮かつ見た目も美しいハーブや野菜を届けなきゃいけないから大変だよ、と笑う。

 

国境を超えてすぐイタリア側にあるオーガニック市場で、マウロは人気者だ。季節の花ごとに、何種類もの風味の異なる蜂蜜を採集している養蜂家は言った。「この市場に集まる品は上質なものばかり。ところが彼は週に何度もふらっとやって来ては、とりわけ最高品質なものだけを選んでいくのです。世界中からやって来るゲストに、彼がこの地域の食材の魅力を伝えてくれるから、みんなやる気がわき、市場全体のレベルが上がりました」。



南仏・マントンのレストラン「ミラズール」。2018年の世界のベストレストラン50で世界3位に、2019年には世界1位に選ばれた。 南仏・マントンのレストラン「ミラズール」。2018年の世界のベストレストラン50で世界3位に、2019年には世界1位に選ばれた。

南仏・マントンのレストラン「Mirazur(ミラズール)」。2018年の世界のベストレストラン50で世界3位に、2019年には世界1位に選ばれた。 Photography by ©Mirazur



「ミラズール」は、ニースの海岸線を眺め下ろす小高い丘の上に建つ、まるで絵本に描かれたような美しい一軒家だ。手入れの行き届いたハーブガーデンとレモンの樹に囲まれ、鶏がのんびりと草を食んでいる。ダイニングの大きな窓からは、イタリアとフランスの絶景が広がり、潮風がほんのりと香る。


マウロの自宅の隣には自家農園があり、いつでも新鮮な野菜やハーブを収穫できる。 マウロの自宅の隣には自家農園があり、いつでも新鮮な野菜やハーブを収穫できる。

マウロの自宅の隣には自家農園があり、いつでも新鮮な野菜やハーブを収穫できる。Photography by ©Matteo Carassale


訪問時に聞いた彼らの言葉を伝えると、マウロは照れたように鼻の頭をこすった。「腕時計は調理の邪魔だし、車は市場でたくさんの野菜を積むしね。授賞式に呼んでもらうこともあるから、いい服は1、2枚くらい持ってるよ。それから、ジュリア(妻)にはたまに贈り物をね」。愛妻家だ。

 

「日本の食だけでなく、街並みや人の佇まいも好き。マントンの自然とは違うけれど、東京の街はとてもユニークで個性的だと思うよ。変化のスピードが早い日本で、7年のブランクは大きかったから、次回またすぐに来日したい」と語る。後編では、今回の来日の目的である「COOK JAPAN PROJECT」における日本の食材を使った料理についてレポートする。


マウロ・コラグレコ Mauro Colagreco
1976年生まれ、アルゼンチン・ラ プラタ出身。イタリアにルーツを持つ家族のもとで育ち2001年に渡仏。フランス南西部ラ・ロシェルの料理学校を経て、故ベルナール・ロワゾー、アラン・パッサール、アラン・デュカス、ギィ・マルタンといったフランスを代表するシェフのもとで研鑽を積む。2006年、ミラズールをオープン。開店6ヶ月後、フランスのレストランガイド「ゴ・エ・ミヨ」から「レヴェレーション・オブ・ザ・イヤー」を受賞。2007年、ミシュラン一つ星を獲得。2008年、「世界のベストレストラン50」にランクイン。2012年、ミシュラン二つ星、2019年、ミシュラン三つ星を獲得。
https://www.mirazur.fr

Mirazur
30 avenue Aristide Briand 06500 Menton
ランチ12:15〜14:00、ディナー19:15〜22:00
冬季休業・不定休
予約に関する問い合わせ先:
TEL:+33(0)4 92 41 86 86 (受付時間 9:00〜11:30、15:00〜18:30)
MAIL:reservation@mirazur.fr

 

Mirazur 公式アカウント
Instagram:restaurantmirazur

 

Mauro Colagreco 個人アカウント
Instagram:maurocolagreco
Twitter:@maurocolagreco
Facebook:https://www.facebook.com/maurocolagreco/

 

Florilege
東京都渋谷区神宮前2-5-4 SEIZAN外苑B1
TEL:03‐6440‐0878
ランチ12:00~13:30(L.O.)、ディナー18:30~20:00(L.O.)
https://www.aoyama-florilege.jp/

COOK JAPAN PROJECT

2020年1月30日まで開催予定。
開催場所:東京都中央区日本橋1-6-1 コレド日本橋 ANNEX COOK JAPAN PROJECT
TEL 03-6821-5689
2020年1月に来日予定のシェフ
1月9~12日:ロシア「White Rabbit」ウラジミール・ムーヒンシェフ
https://cookjapanproject.com/category/select/cid/178
1月16~20日:バルセロナ「Suculent」アントニオ・ロメロシェフ
https://cookjapanproject.com/category/select/cid/87
1月24~27日:ペルー「Central」ヴィルヒリオ・マルティネスシェフ
https://cookjapanproject.com/category/select/cid/211
1月30日:カタルーニャ・東京「サンパウ」&バルセロナ「モメンツ」カルメ・ルスカイェーダシェフ
https://cookjapanproject.com/category/select/cid/206

予約は下記サイトから。サイトでの予約はオンライン割引あり。
https://cookjapanproject.com/

Photography by Yuji Hori , Yuta Fukitsuka
Text by Shifumi Eto

 

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