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三つ星&世界NO.1シェフ、マウロ in TOKYO(後編)

2020.1.3

三つ星レストラン「ミラズール」のシェフ、マウロ・コラグレコが日本の食材で創った料理とは?


日本の魚介を地中海タッチで仕上げる、日本だから創れた会心のひと皿

レストラン「Mirazur(ミラズール)」シェフ、Mauro Colagreco(マウロ・コラグレコ)が「世界一」の称号を携えて7年ぶりに来日したのは、「COOK JAPAN PROJECT(クック・ジャパン・プロジェクト)」で、6夜限定のディナーを披露するためだった。「クック・ジャパン・プロジェクト」とは、レストラン運営やプロデュースを行う企業「グラナダ」が手掛ける、期間限定のガストロノミーイベント。2019年4月〜2020年1月の10ヵ月間、世界各国から30名以上のシェフを代わる代わる招致し、日本の食材を使うことを課題として、イベント限定のオリジナルコースメニューを創り上げてもらうのがコンセプトだ。三つ星シェフをはじめ錚々たる顔ぶれの中でも「ハイライト」と言えるのがマウロだ。彼はどんな食材を選び、どんな作品を創り上げたのか。その料理を味わった。

 

地中海に面した「ミラズール」ではシーフードをよく使う。マウロが「ファミリー」と呼び信頼をおく地元の漁師が、“ミラズールクオリティ”のシーフードを届けている。「フランスの中でも地中海沿岸は、シーフードの多様性も品質も最高だと思う。小魚から深海魚までいろいろな魚、エビ、それからウニも揚がるんだよ」。



マウロの後ろの壁には、クック・ジャパン・プロジェクトに参加したシェフたちのサインが並ぶ。 マウロの後ろの壁には、クック・ジャパン・プロジェクトに参加したシェフたちのサインが並ぶ。

「クック・ジャパン・プロジェクト」の広々としたキッチンで中央に立ち、料理を仕上げるマウロ。背後の青い壁には、これまで来日したスターシェフたちのサインが書かれている。



そんな世界トップレベルのシーフードを使い慣れたマウロでも、いくつかの日本の魚介には、フランスにはないアドバンテージを発見した。とりわけ白身魚や貝類の新鮮な味わいは、フランスのそれとは異なるものだ。



クック・ジャパン・プロジェクトのメニューのひとつ。「薔薇の花、柑橘風味のブイヨン」。 クック・ジャパン・プロジェクトのメニューのひとつ。「薔薇の花、柑橘風味のブイヨン」。

「クック・ジャパン・プロジェクト」より「ヒラスズキでかたどった薔薇の花、柑橘と野菜のブイヨン」。刺し身状にカットしたヒラスズキと3色の大根とオレンジやグレープフルーツをバラの花びらのように重ねて、プランクトンのゼリーを滴のように散らした美しいプレゼンテーションも印象的。



今回のメニューには、マグロ、牡蠣、キンキ、ウナギなど、多くの日本の魚介が使われた。コースの中でもっとも日本らしさを感じさせたのが「ヒラスズキでかたどった薔薇の花、柑橘と野菜のブイヨン」だ。日本の魚介類、特に白身魚は、プリプリと弾力があって鮮度がよく、ミネラルの香りがあまり強くない。つまり日本人が好む生食や、素材の味を引き出すシンプルな調理法に向く。その白身魚を素材に、フランス料理らしくオイルでマリネして、カフィアライムでアジアのフレーバーを加えた。レモンの産地であるマントンでは、料理にレモンをよく使う。そこで日本の柑橘類をブレンドして、ミラズールらしさも演出した。「どの料理が一番好きだった?」と覗き込むシェフに「これ!」と答える。「やった。だってこれは、僕なりに日本人の好みを考えて創り上げた、日本でしかできないひと皿だからね」。そう言って相好を崩した。



日本のゲストにも届けたい、ミラズールらしい定番の味

こういった“シェフがやって来る方式”のポップアップレストランは、客が求めるものに合わせてメニューを構築する。マントンの「ミラズール」では、完璧なチームワークのもと、徒歩1分のオーガニックガーデンから収穫した素材を使い、料理を出す温度やタイミングまで完璧にコントロールした、繊細で完成度の高い料理が提供された。また、マカオで開かれたポップアップイベントに参加した時は、フランスのファインダイニングにあまり慣れていない地元のゲストに向けて、地中海料理や「ミラズール」を紹介することを目的に、再現できる限り「ミラズール」に忠実な料理が登場した。つまり食べ手の力量も問われるわけだ。



「兵庫県赤穂産牡蠣、ぶどう、そばの実」クック・ジャパン・プロジェクトより。  「兵庫県赤穂産牡蠣、ぶどう、そばの実」クック・ジャパン・プロジェクトより。 

「クック・ジャパン・プロジェクト」より「兵庫県赤穂産牡蠣、ぶどう、そばの実」。紫蘇の葉でくるんで軽く火を入れたクリーミーな牡蠣と、同じくクリーミーなブールブランソースが調和。フルーティなシャインマスカットは、アップルビネガーとグラッパでマリネして酸味を際立たせた。



「キンキ、すだちソース、イクラ」クック・ジャパン・プロジェクトより 「キンキ、すだちソース、イクラ」クック・ジャパン・プロジェクトより

「クック・ジャパン・プロジェクト」より「キンキ、すだちソース、イクラ」。マウロの得意技のひとつ、低温調理でじっくり火を入れたジューシーなキンキはミラズールでも人気のひと皿。ソースにはレモンの代わりにすだちを活用した。イクラとタピオカのぷちぷちした食感が楽しい。


今回、クック・ジャパン・プロジェクトのゲストたちは、国内のみならずアジア各国から駆けつけた。マウロの料理を初めて口にする人も多い。そこで、日本らしいオリジナルメニューをベースに組み立てながらも、「ミラズール」らしさを体験できる皿を織り込んだのだ。



ミラズールのシグニチャー料理である「塩釜で焼いたビーツ 生クリームとクリスタルキャビアのソース」(前編のトップ画像はマントン・ミラズールで提供されている料理)。こちらは日本のビーツを使っている。クック・ジャパン・プロジェクトより。 ミラズールのシグニチャー料理である「塩釜で焼いたビーツ 生クリームとクリスタルキャビアのソース」(前編のトップ画像はマントン・ミラズールで提供されている料理)。こちらは日本のビーツを使っている。クック・ジャパン・プロジェクトより。

「クック・ジャパン・プロジェクト」より「塩釜で焼いたビーツ 生クリームとクリスタルキャビアのソース」。ミラズールのシグニチャー料理のひとつ。前編のトップ画像はマントン・ミラズールで提供されている料理だが、今回は日本のビーツを使った。
Photography by ©COOK JAPAN PROJECT



そのひとつが「塩釜で焼いたビーツ 生クリームとクリスタルキャビアのソース」だ。日本のビーツはみずみずしく、サラダでも食べられるほどクセがないが、「ミラズール」のビーツは地中で時間をかけて育てるため、大きくて実が詰まっていて、土の香りがする。そのため調整が必要だったが、「ミラズール」らしさは伝わった。


「ナランホ・エン・フローㇽ」 「ナランホ・エン・フローㇽ」

ミラズールでも提供しているデザート「ナランホ・エン・フロール」。サフランのクリームとオレンジのソルベをメインに、アーモンドの香りのエスプーマやオレンジのパウダー、クリスタル状に仕上げたオレンジなど、オレンジのさまざまな表情を織り込んでいる。
Photography by ©COOK JAPAN PROJECT

 


世界一を達成した今もなお、グローバルに旅を続ける理由

それにしても、今回の来日を含めマウロはいつでもアクティブだ。世界各国で開催される料理学会やシンポジウムに登壇して、培った技術や経験を惜しげもなくオーディエンスにシェアする。

 

世界のシェフとのコラボレーションにも積極的だ。来日直前には、米国マイアミで開催されたガストロノミーイベントで、イタリア「Osteria Francescana(オステリア・フランチェスカーナ)」のMassimo Bottura(マッシモ・ボットゥーラ)やブラジル「D.O.M.(ドム)」のAlex Atala(アレックス・アタラ)といった世界的スターシェフたちとのコラボレーションを行い、その足で日本に駆けつけた。

 

青山を歩けば、日本らしい器の組み合わせや木工細工、金箔などが展示されたショーウィンドウに目を配る。「五感で感じたこれらすべてが、自分だけのオリジナルな経験となる」とマウロは考えている。

 

いま、関心があるという日本産ウィスキーをロックで味わいながら、マウロはこう言った。「僕に限らず、料理人なら誰だって、知らないローカルフードがあれば食べてみたいし、いつだって未知の食材に出合いたい。料理は伝統の上に成り立っているけれど、パーソナルな表現も兼ね備えていて、そこにはそれぞれの経験が反映される。僕はこれからも進化し続けたいんだよ」

 

今回の来日は、マウロの今後の創造活動に、どう影響するのだろう。常に高みを目指すシェフのゴールは、どこにあるのだろう。それを確かめに、いつかまた「ミラズール」を訪れたい。


COOK JAPAN PROJECT

2020年1月30日まで開催予定。
開催場所:東京都中央区日本橋1-6-1 コレド日本橋 ANNEX COOK JAPAN PROJECT
TEL 03-6821-5689
2020年1月に来日予定のシェフ
1月9~12日:ロシア「White Rabbit」ウラジミール・ムーヒンシェフ
https://cookjapanproject.com/category/select/cid/178
1月16~20日:バルセロナ「Suculent」アントニオ・ロメロシェフ
https://cookjapanproject.com/category/select/cid/87
1月24~27日:ペルー「Central」ヴィルヒリオ・マルティネスシェフ
https://cookjapanproject.com/category/select/cid/211
1月30日:カタルーニャ・東京「サンパウ」&バルセロナ「モメンツ」カルメ・ルスカイェーダシェフ
https://cookjapanproject.com/category/select/cid/206

予約は下記サイトから。サイトでの予約はオンライン割引あり。
https://cookjapanproject.com/

マウロ・コラグレコ Mauro Colagreco
1976年生まれ、アルゼンチン・ラプラタ出身。イタリアにルーツを持つ家族のもとで育ち2001年に渡仏。フランス南西部ラ・ロシェルの料理学校を経て、故ベルナール・ロワゾー、アラン・パッサール、アラン・デュカス、ギィ・マルタンといったフランスを代表するシェフのもとで研鑽を積む。2006年、ミラズールをオープン。開店6ヶ月後、フランスのレストランガイド「ゴ・エ・ミヨ」から「レヴェレーション・オブ・ザ・イヤー」を受賞。2007年、ミシュラン一つ星を獲得。2008年、「世界のベストレストラン50」にランクイン。2012年、ミシュラン二つ星、2019年、ミシュラン三つ星を獲得。
https://www.mirazur.fr

Mirazur
30 avenue Aristide Briand 06500 Menton
ランチ12:15〜14:00、ディナー19:15〜22:00
冬季休業・不定休
予約に関する問い合わせ先:
TEL:+33(0)4 92 41 86 86 (受付時間 9:00〜11:30、15:00〜18:30)
MAIL:reservation@mirazur.fr

 

Mirazur 公式アカウント
Instagram:restaurantmirazur

 

Mauro Colagreco 個人アカウント
Instagram:maurocolagreco
Twitter:@maurocolagreco
Facebook:https://www.facebook.com/maurocolagreco/

Text by Shifumi Eto
Photography by Yuji Hori

 

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