鎌倉にある1日2組だけの高級宿泊施設として2019年に誕生した「鎌倉古今」。そのオーナーである松宮大輔が、2024年2月2日に次なる富裕層向けホテルを箱根・仙石原にオープンすると聞き、どんなホテルになるのか興味が湧いた。仙石原に誕生する「仙石原古今」の全貌を探るため、「鎌倉古今」にいる松宮を訪ねた。
鎌倉のラグジュアリーホテルといえば
「鎌倉古今」と言われることを目指して
新型コロナウイルスのパンデミックが落ち着き、世界は大きく動き出し、日本の観光業界も賑わいが増している。インバウンドの回復、円安による国内旅行の拡大など、国内には相次いで外資系ホテルが誕生し、世界マネーが日本に投資されているが、同時に不安が湧いてくる。果たして日本の文化や伝統、日本的サービスの真髄はきちんと世界へ伝わっているのだろうか、日本の魅力を世界は理解しているのだろうか。
「古今」ブランドオーナーの松宮大輔。鎌倉古今庭園にて。Photography by Natsuko Okada
日本で長くホテルマンとして働き、富裕層向けホテルやレストランでサービスを学び、富裕層ホテルの立ち上げや経営に携わってきた松宮。日本のサービスは世界一であると語るが、昨今の日本のサービスはどうだろうかと首を傾げる。日本の富裕層向けホテルはやはりサービスも一流でなくてはならない。松宮が目指す最高のホテルとなる「古今」ブランドについて話しを聞いた。
富裕層向けホテルに求められるものとは?
「大学を卒業して就職したのが、富裕層向けホテルでした。そして当時から、いつか富裕層向けの自分のホテルを持ちたいと考えていました」と松宮は語る。「シャトーレストラン タイユヴァン・ロブション」「ザ・リッツ・カールトン大阪」をはじめ、福島県猪苗代湖にある「ホテル プルミエール箕輪」、栃木県那須高原の「二期倶楽部」料飲支配人、静岡県熱海「熱海ふふ」、富山県富山 「リバーリトリート雅樂倶」の総支配人などを経験し、約10のホテルや旅館のオープンを手がけた。その松宮が目指す富裕層ホテルは、最高の空間と環境を擁し、真のサービスやお客様が心からくつろげる環境づくりできてこそ最高級ホテルであると語る。そして誕生したのが、2019年に誕生した「鎌倉古今」である。
庭園から見た「鎌倉古今」。Photography by Natsuko Okada
「鎌倉古今」は、安政2年(1855年)に建てられた古民家をフルリノベーションした、一日2組だけお迎えしている宿泊施設である。それは鎌倉の邸宅地の一角にあり、敷地内には美しい日本庭園には錦鯉が泳ぐ池、風に揺らぐ木々、時にはリスが庭に遊びくる。かつての日本の裕福な暮らしぶりを予感させる空間に包まれている。築160年以上の日本建築はやはり美しく、そこに快適性を高めるための最先端技術を取り入れてある。
施設内には松宮が宿泊施設と共に、こだわり抜いたカウンターレストラン「Restaurant COCON」がある。モダンスタイルのイタリアンで、鎌倉を訪れる際に立ち寄りたいスポットにもなっている。
「鎌倉古今」の客室入り口。Photography by Natsuko Okada
昨今、古民家再生は注目されてはいるが、かつての趣を残しつつ手を加えることは、実のところ新築よりも気遣いやお金が必要である。しかし松宮は、日本の美意識を重んじ、時間が紡いできた古き良き日本の文化をお客様に体感してもらいたいという気持ちから敢えて古民家を選んだ。
世界的に旅のスタイルが変化し、世界を見据えたサービスが求められる
そして「鎌倉古今」開業から、次なるホテルの候補地をずっと探していたと言う松宮。「自分の目や手が届く規模で立地と考えていましたが、なかなか思い描いた建物に巡り会えず、やっと見つけたのが仙石原の某銀行の保養所でした。静かな環境に豊かな自然、1000坪の庭、温泉があり、都心からの利便性も良いなど、ディストネーションとしてはバッチリです。そして、この環境は鎌倉との親和性が高いと感じました」。
「仙石原古今」外観。
仙石原は企業の保養所が多くある場所で、「仙石原古今」となる建物も保養所だったところ。当時は16部屋あったのをオールスイートの5部屋にリニューアルし、温泉ビューバスやサウナ、水風呂を各部屋に設置。他にも、竹林の箱庭を眺める半露天風呂のパブリックバス。温泉の他に独自で12種類の薬草を調合したオリジナルの薬草湯を用意している。
「鎌倉は純和風の空間にモダンなインテリアとなっていますが、仙石原はドイツやイタリアの家具を配し、現代アートやパラアートを飾り、オールモダンに仕上げています」。松宮の熱心な説明を聞くだけで興味が湧いてくる。さらに敷地内には山羊を飼い、ハーブ園を作るなどの小さな循環型社会を実現する実験も行うと語る。
「仙石原古今」301号室のリビングルームのイメージ。
「仙石原古今」客室ベッドルームのイメージ。
NOと言わないサービスをすることが「古今」ブランドの目指すところ
松宮はその土地を代表する最高級ホテルを目指すために、「古今」ブランドの譲れない基準があると言う。
「富裕層向けに限ったことではありませんが、ホテルに求められることは、非日常です。それはホテル滞在によって享受される空間であり、時間であり、サービスです。「古今」ブランドでは、特に環境を重視しています。富裕層の方であれば、東京のタワーマンションに暮らしているかもしれません。毎日、美しい東京の美しい夜景を見ているわけですから、それを超える感動の景色がなければなりませんし、広い家に住んでいる方ならゆったりとした客室も必要です。
1日中見ていても飽きないほどの美しい景色や源泉掛け流しの温泉などがあればよりいいですし、80㎡以上のオールスイートルームは譲れません。お客様が1泊であってもストレスから解放される、笑顔になっていただく。そんな空間や時間を提供したいと思っています。そして、それを支えるのは我々の感動サービスです」。感動サービスこそが、日本のサービスであり、心遣いであるという。
「仙石原古今」レストランイメージ。
「ホテルマン時代はサービス面でたくさんの失敗をしましたし、怒られることもありました」と、苦笑いをするが、そこから学び身につけたサービスの真髄は今スタッフたちに継承し、松宮流のおもてなしを実践されている。
「そのお客様もいかに大切に思っているのか、その方のことをどれだけ理解しようとしているのか、サービスはそういった思いから生まれるものです。ですから私たちはNO!と言わないように、常に挑戦し続けています」。さらにはお客様のことはどんな細かいことでもLINEを通じてスタッフと共有している。例えば送迎やチェックイン時でどんな会話をしたかを即座にLINEで共有していると語る。
「ホテルでスタッフの方に同じ質問を何度もされるのは不愉快ですよね。お客様との会話や情報をスタッフ同士が即座に共有すれば、そのような初歩的なミスは起きません。お客様は自分のことを理解してくれている、きちんと覚えてくれていると感じていただけることで安心していただけます」。
「鎌倉古今」の書家のお客様が松宮に捧げた軸、「松無古今色」。物事の道理や原理は、いつの世でも変わることがない普遍的なものであり、そうでなければならない意の禅語。
Photography by Natsuko Okada
世界的にも評価が高い日本のサービス、おもてなしの心とは何か、松宮と語ることで改めて考えさせられる。松宮流のおもてなしの素晴らしさは、「鎌倉古今」にリピーターが多いことが全てを物語っているのだろう。きっと最高のホテルとは豊かな自然や環境であり、人の温もりがあることなのだろう。松宮の作り出す、最高のホテルを体感したい人はぜひ新オープンの「仙石原古今」に出掛けてはいかがだろうか。きっと忘れられない体験、時間があるはずだ。
(敬称略)
鎌倉古今
神奈川県鎌倉市二階堂836
0467-81-4435
仙石原古今
神奈川県足柄下郡箱根町仙石原1256-280
0460-83-9585
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