篝火の中で見る幽玄な能の世界

2015.09.30

能を知らない人にこそ、体験してほしい薪能の世界

 メイン提灯

能を知らない人にこそ、体験してほしい薪能の世界

秋の夜長、薪の篝火に照らされた静寂なる能舞台で、演者が謡や囃子とともに優雅に舞う。漆黒の闇の中、うすぼんやりと薪の火に照らし出される鬼神や怨霊、無表情な女の顔を表現した能面や演者の様は、妖しくも神秘的である。

これは、夜の神社仏閣や城跡などの野外で行われる「薪能」と呼ばれるもの。薪能は、現在でも年間を通して全国で行われているが、なかでも江戸幕府の初代将軍、徳川家康の帰依によって誕生した増上寺で毎年秋(今年は10月3日)に開催される薪能は圧巻。夜の広い境内に大きな能舞台が設置され演者が舞う様は、まるで江戸時代にタイムトリップしたかのようである。演者は、観世流を継承する重要無形文化財総合指定保持者、梅若万三郎氏ら。

日本の伝統と歴史が生んだ“幽玄の美”

現代において、お能をちゃんと鑑賞したことのある人は意外に少ないようである。謡や演者の言葉が難しかったり、演目の内容をきちんと理解していないとなかなか展開についていけないこともあるだろう。しかし、まずは難しいことを考えずに、能の神秘性が際立つ薪能で、能の世界を無条件に体験してほしい。能の楽曲に登場する人物は、男女のほか鬼神や亡霊・精霊・妖怪といった超自然的存在が多く、人間の怒りや悲哀、怨念などのさまざまな情念を表現したストーリーも独特である。そうした不思議な世界観が長い間、多くの人々を惹きつけてきたのである。これこそ日本が生んだ“幽玄の美”。薪能で、日本の歴史と伝統が生んだ芸能の真髄を堪能してほしい。

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詳しくは、増上寺のHPを参照。

http://www.zojoji.or.jp/index.html

 

Text/Makiko Inoue

写真提供/増上寺